ステイホームで若者の骨にも少なからず影響が出ている!?
今までには考えられなかったような運動強度で疲労骨折が起きている。日常生活での生活強度も重要なのかもしれません。新型コロナウイルスの第2波が囁かれる中、万が一、「もう一度ステイホーム」となったら、どう対応するのが良いのか? 整形外科医 岡野先生と「女性と骨」の対談5回目です。
◆ステイホーム骨折の予防は可能なのか?
増富:ステイホーム骨折の原因となるような、骨に対する悪影響は、子どもから若い世代にいたるまで、起こっているかもしれない。その原因は例えば、自粛生活による、「家への閉じこもり」などの生活強度の低下によるものかも、という話でした。簡単におさらいしてください。
岡野:ステイホーム解除後の数週間で、明らかな外傷のない、子供たちの怪我がすごく増えています。従来であれば画像上は疲労骨折と診断していました。しかし、みんな骨が負けるほどの強い運動をしていません。それ以外の原因を考えた場合、骨側の問題としか考えられないわけです。ステイホーム中の「閉じこもり」による骨への悪影響が考えられます。
つまり骨の強さを維持するのに重要な「1. 運動の強度、2. 運動の頻度や時間、3. 太陽に当たること」等がステイホームにより損なわれたことが関係しているのではないかと考えるようになりました。
増富:ステイホーム骨折の予防は可能ですか?
岡野:可能だと思います。ただ、初めての事態ですから、予防といっても根拠はなく手探りになります。みなさんが、運動や太陽に当たることを意識して行動すれば可能だと思います。
◆特に若い女性は、ステイホーム中に“骨の貯蓄”を意識して!
増富:新型コロナウイルスに関連したステイホームが、今後もしも、繰り返されるような事態になれば、女性の骨にも影響が出てきますか?
岡野:骨粗しょう症の予防には、若い頃の「骨の貯蓄」が大切と、第1回で話をしました。そして、今回のステイホームでは若年者で骨への悪影響が示唆されました。このコロナ禍が長期化してしまった場合、自粛明けの急な運動には注意が必要です。また、特に若い女性は、ステイホーム中に骨の貯蓄を意識した生活をしておかないと、中高年以降に骨粗しょう症になりやすくなるのではないかと思います。
◆ランニングや縄跳び、日光浴で「骨の貯蓄」を!
増富:新型コロナウイルスの第2波が囁かれていますが、今後に向けての、対策などについて教えてください。
岡野:今回のコロナ禍では様々な分野からのステイホームによる心身への悪影響が多数報告されています。骨粗しょう症に対する影響はいくつも報告されていますが、若年者の骨の問題に言及した報告はないようです。
増富:岡野先生は、いち早く、若い世代での骨への影響に気がついたわけですよね。
岡野:今回、経験した事態で、私は若い世代でも、骨が弱くなっている可能性があることを感じました。今後、ウィズコロナ時代が到来し、ステイホームが長期化したり、繰り返されるような事態になれば、「骨の貯蓄」が十分にできずに、将来の骨粗しょう症も心配です。
増富:具体的には、どうすればよいと思いますか? Oggi.jpの読者層の年齢の若い女性に照準を合わせて説明してもらえますか。
岡野:感染拡大が少し落ち着いている時期に、骨の貯蓄を意識してください。これを期に例えば、運動を始めたり、天気の良い日には日光浴を行ったりしてください。今から開始して、習慣化しておくだけでもずいぶんと予防できると思います。
増富:具体的に、どのような運動がいいか提案はありますか?
岡野:「骨の貯蓄」には強度のある運動が大切です(参考)。若年者であれば、荷重(かじゅう)がかかり、骨にある程度の衝撃を与えられる強度の運動が良いとされています。骨に衝撃を与えられるというのは、ジャンプで着地した時のイメージです。筋トレも良いと思いますが、普段、運動をされていなかった人が手軽に始められ、効果的なものとしてはランニングや、縄跳びなんかもいいと思います。
岡野先生と5回にわたり、「女性と骨」についてお伝えしてきました。今回の新型コロナウイルスの感染拡大による「ステイホーム」で見えてきた意外な事実から、今後にむけての提言ができたと思います。ステイホーム期間が再び到来しても、ぜひ将来のご自身の「骨」を考えたライフスタイルを送ってくださいね。
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話し手:特定医療法人博俊会 春江病院 副院長 岡野 智
1995年3月 金沢大学医学部卒業
特定医療法人博俊会 春江病院 副院長
整形外科 関節温存・スポーツ整形外科センター
整形外科医の視点から、関節温存に重点を置いたリウマチ診療と、スポーツに関わる子供たちの問題に取り組んでいる。これらの疾患に対する多職種協働アプローチも模索中。
専門分野は、関節外科、スポーツ障害・外傷、関節リウマチ、骨粗鬆症、リハビリテーション。
資格:医学博士、日本整形外科専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本リウマチ学会リウマチ専門医
所属学会:日本整形外科学会、日本リウマチ学会、日本整形外科スポーツ医学会、日本人工関節学会、日本リハビリテーション学会、日本骨粗鬆症学会
聞き手:国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ