骨粗しょう症予防のための運動・食事って?
Oggi読者層の皆さんは、「まだ、若いし、骨折なんて関係ありませーんっ!」と思っていませんか? いえいえ、そんなに安心していてはだめかもしれませんよ。新型コロナウイルス対策の自粛生活で意外な影響が! 今日から、数回にわたり、「骨」のお話をしようと思います。少し、骨の折れる話になるので、まずは、骨折の話から。
◆新型コロナウイルスと骨折?
いつもは一人でお話ししてきましたが、友人で整形外科医の岡野先生にも登場してもらいます。
「3月以降の新型コロナウイルス騒動の影響が意外なところで出てきている」ということを、毎日患者さんを診ている岡野先生が教えてくれました。
「新型コロナウイルスによる休校明けに成長期の子ども達の疲労骨折がすごく増えた」とのこと。中高生くらいの成長期の子供がひどいときには10分程度走るだけで疲労骨折して来院するという、今までに考えられなかったような事態が起きているというのです。
彼はこの事を「ステイホーム骨折」と命名し、これは単に、成長期の子供だけの一時的な問題ではなく、広く、世代を超えた重要な意味があると感じています。
Oggi.jp読者にも、いち早く情報提供しようと思い、岡野先生と対談形式で女性の骨について解説していきます。
◆「骨」を考えたときに、40歳を迎えるまでに女性がやっておくべきこと!:「骨の貯蓄」を増やそう!
増富:骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、女性にとってとりわけ、中年期以降の「病気」として認識されますが、どうでしょうか?
岡野:「病気」としての骨粗鬆症は、確かに、閉経後の女性の病気というイメージがあります。でも、実は、予防には、若い時の対策がすごく重要なんです。もっと言えば、初経から20歳代、30歳代くらいまでの間がすごく重要なんです。
増富:もう少し、詳しく説明してください。
岡野:女性の骨の量は、20歳までにそのほとんどが獲得され40歳くらいで一生のピークを迎えます。この時期までに、できるだけ多くの「骨の貯蓄」ができていることが、骨粗鬆症予防の重要なポイントになります。女性ホルモンの分泌が骨の量をコントロールすることと関係がありますので、閉経後は、「骨の貯蓄」がどんどん減っていくことになります。
増富:具体的には、「骨の貯蓄」を20歳代あるいは30歳代にできるだけ多くするにはどうすれば良いのですか?
岡野:できるだけ早い時期から積極的にやるべきことは、適度な体重の維持、積極的なカルシウムの摂取、そして、強度のある運動、といわれています。
増富:いくつか質問させてください。「適度な体重」というと、重い方が良いんですか? あるいは、軽い方が良いんですか?
岡野:若年期に獲得する最大骨量は、体重の影響が最も大きいといわれています。太り過ぎは避けておきたいですが、骨量維持の観点から言えば、太っていて悪いことはなく、むしろ、若年者の「やせ」が問題となっている中、過度のダイエットは骨量の観点からはよくありません。
増富:あと、「強度のある運動」というと少し意外ですが。どれくらいの強度がいいんですか? 僕は、筋トレが好きですが、どんな運動が良いんですか?
岡野:骨量の獲得には荷重(かじゅう)のかかる運動が有効とされており、中高年ではウォーキングでも十分かとは思いますが、若年者であればジョギングやスクワットなどの荷重のかかる筋トレもお勧めです。ただし、続けないと意味がありませんので、楽しめるスポーツなら何でもよいと思います。
増富:日本の今の食糧事情で、摂取不足が原因で何らかの病気になることはあまりないように思うのですが、健康な骨をつくる・維持するために必要なカルシウムやビタミンDの摂取量はどうですか?
岡野:現代においてカルシウムもビタミンDの摂取も決して十分なわけではありません。国民健康栄養調査でも、若い年齢層でのカルシウムやビタミンDの平均摂取量は推奨量を下回っています。カルシウムの吸収効率でいえば乳製品や大豆製品がお勧め。ビタミンDは、鮭や干しシイタケなどに豊富に含まれています。ビタミンDは食品からの摂取も重要ですが、体内でも生産されるため日光浴もお勧めです。
増富:将来の骨粗鬆症の予防の観点から、20歳から30歳までにできるだけ、「骨の貯蓄」を増やすこと、そのためには、体重の維持、運動、カルシウムの摂取が重要ということがわかりました。もちろんその年代以外の時期も、常に「骨の貯蓄」を意識して行動し続けることは骨折予防や骨粗鬆症予防に大切です。
次回は、骨粗鬆症と新型コロナウイルスによる自粛生活で増えつつある「疲労骨折」についてさらに詳しくお届けします。
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ
特定医療法人博俊会 春江病院 副院長 岡野 智
1995年3月 金沢大学医学部卒業
特定医療法人博俊会 春江病院 副院長
整形外科 関節温存・スポーツ整形外科センター
整形外科医の視点から、関節温存に重点を置いたリウマチ診療と、スポーツに関わる子供たちの問題に取り組んでいる。これらの疾患に対する多職種協働アプローチも模索中。
専門分野は、関節外科、スポーツ障害・外傷、関節リウマチ、骨粗鬆症、リハビリテーション。
資格:医学博士、日本整形外科専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本リウマチ学会リウマチ専門医
所属学会:日本整形外科学会、日本リウマチ学会、日本整形外科スポーツ医学会、日本人工関節学会、日本リハビリテーション学会、日本骨粗鬆症学会