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2024.08.29

皇室ニュースでよく見かける言葉「下賜」の意味とは? 正しい使い方や例文、類語まで紹介

下賜は「かし」と読み、身分の高い人が身分の低い人に何かを与えることを意味する言葉です。最初はなんと読むかわからなかったり、会話や文章でどんな使い方をすればいいかわからないこともあるかもしれません。本記事では、下賜の意味や使い方、例文、類語まで解説していきます。

「下賜」とは? 意味を知ろう

(c)Shutterstock.com

「下賜」は「かし」と読みます。日常会話の中で使う機会は少ないかもしれませんが、皇室に関するニュースなどで、「下賜される」や「御下賜品」などの言い回しを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか?

「下賜」は身分の高い人が、身分の低い人に何かを与えることを意味する言葉です。日本においては天皇陛下、皇族など高貴な方が国民に勲章・記念品・褒美の品・称号を与えてくださることを「下賜」といいます。ですから、陛下からいただいたものを「御下賜品」と言うわけです。

「下賜」は「下(くだ)す」と「賜(たまわ)る」の2つの言葉から成り立っています。「下す」は、上から下への移る意味を表し、「賜る」には次の2つの意味があります。

・「もらう」の謙譲語=目上の人からいただく・頂戴する
・「与える」の尊敬語=目上の人が下の者に与える

「下賜」は、「下賜する」「下賜された」という使い方をされることが多いのですが、これは「下賜」する人が天皇陛下や皇帝などの身分の高い人に限られているからです。一般的な目上の人、自分より立場の上の人から仮に何かをいただく場合でも、「下賜された」とは言いませんので、使い方には注意しましょう。

「下賜」の使い方を例文でチェック

(c)Shutterstock.com

「博物館には、将軍から下賜された刀が展示されている」
「この公園は、昔、幕府より下賜された土地です」

明治維新前までは「下賜する」のは、平安時代後期から登場した武家の棟梁や江戸時代まで続いた将軍、公家の人たちでした。いわゆる「主君」と呼ばれる人です。「下賜」は高貴な人が、自分よりも身分が低い人に物を与えることを表しますからこのような「主君」が主語になっていました。

「皇后陛下から御下賜された日本手拭い」
「皇室の慶事の折に下賜されたボンボニエール(菓子器)は宝物です」
「文化の発展に関して、著しい功績を残した人に勲章が下賜された」

現在の日本では、「下賜」という言葉は天皇・皇族により何かが与えられる場合のみに使われます。「目上の人が目下の人に物を渡すこと」を意味するといっても、上司と部下や先生と生徒の間柄でのやり取りを「下賜」とは言わないので、気をつけましょう。

「優勝した競走馬の馬主に、天皇から下賜された賞品が授与された」
「天皇誕生日に際して、天皇陛下より御下賜金を拝受いたしました」

日本中央競馬会(JRA)が春・秋の年2回施行する重賞競走に「天皇賞(G1)」があります。日本で施行される競馬の競走GIの中でも、長い歴史と伝統を持つ競走で、賞金のほか、優勝賞品として皇室から楯が下賜されます。

「御下賜金」は毎年、天皇誕生日に際し、天皇陛下の社会福祉事業御奨励の思召により、各都道府県及び政令指定都市の優良な民間社会福祉事業施設・団体に対して下賜される金員のことです。

「下賜」の類語は?

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「恩賜(おんし)」

「恩賜」とは「下賜」と同様に「身分の高い人が低い人へ物を与える」という意味ですが、「下賜」が「与える」「贈る」という行為であるのに対し、「恩賜」は「賜る」「いただく」「贈られた品」を指します。

そのため、「御料地が公に下賜され、整備された公園を恩賜公園と呼ぶ」のように、一つの文章の中に「下賜」と「恩賜」が入っていても、重複表現にはなりません。

「恵賜(けいし)」

「恵賜」は「目上の方からたまわったもの」という、尊敬表現を含んだ表現です。目上の人からいただくこと、及びその与えられたものをさします。「恩賜」と似ていますが、「恵賜」は与える人が天皇や主君に限りません。

たとえば取引先から部署宛てにお中元などをいただいた場合、「○○社様恵賜品(けいしひん)… おひとつずつどうぞ」といった使い方ができます。

「拝領」

「拝領」は高貴な人や目上の人から物をいただくこと。主君や貴人から物をいただく、もらうことの謙譲語です。「恩賜」とほぼ同じ意味になります。

「授与」も目上の人から目下の人に金品を与えることを表しますが、「卒業証書を授与する」のように与える行為をする人は天皇や主君に限りませんので、最も一般的に使われています。

「下賜」の対義語は?

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「献上」

身分の低い者が高い者に物を差し上げること、奉ることを意味し「献上品」「~様に献上する」「幕府に献上する」などと使われています。また、スポーツなどで相手に点数を取られた時に「失策で1点を献上した」という使い方もされます。

「献呈する」

目上の人に物を差し上げる、自分の著作物などを贈る時によく使われます。「進献」「進呈」「進上」なども同様の意味です。「進上」は目上の人に出す書状の表に書き、敬意を表す言葉の1つです。

「謹呈」

「謹呈」は自分が関係したものなどを贈る場合に、「謹んで差し上げます」「お納めくださいませ」という意を込めて使います。

「下賜」と「恩賜」の違い・使い分け

(c)Shutterstock.com

「下賜」と「恩賜」のニュアンスの違いをおさらいしてみましょう。

・「下賜」は「天皇や皇帝など身分の高い人が、身分の低い人に金品を与えること」
・「恩賜」は「天皇や君主から物品を賜ること、また、その贈り物」

「賜」は「目上の人が目下の人に物を渡すこと」を意味しますので、目上から目下の人に物が与えられる行為は同じですが、「恩」は「与える、めぐむ」という意味がありますので、「恩賜」はこれまでの忠義や功労に対して、与えられたものというニュアンスになります。

「恩賜」といえば「上野恩賜公園」「井の頭恩賜公園」などと公園の名前として知られていますね。「恩賜公園」とは皇室から賜った土地を整備した公園のことです。他にも「恩賜の品」「恩賜のたばこ」「恩賜の時計」などと用います。

「陰徳恩賜」という四字熟語もあります。人知れず善行に励む人には、必ずよい報いがありますという意味で福沢諭吉の『学問のすすめ』九編・第四段落にある四字熟語です。

最後に

皇室下賜品には、ボンボニエールをはじめ、シガレットケース、花瓶、杯、懐中時計など、さまざまな種類があります。

日本の伝統技術や国内産業を保護し、育成する役割も持つ皇室下賜品は、大変貴重です。現在、最も身近な皇室下賜品は、皇居の清掃ボランティアに参加したときに賜ることができる和菓子です。

TOP画像/(c)Shutterstock.com

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