十五夜はいつ? 旧暦や2023年の該当日もチェック
秋の夜といえば「十五夜」。「十五夜」といえばきれいな満月、というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
しかしながら、「十五夜」の日=満月の日、ではありません。また、「十五夜」という言葉から、15日の夜の月だと思っている方もいるかと思いますが、必ずしもそうではないのです。
意外と知らないことの多い「十五夜」について、さまざまな豆知識をご紹介します!
◆十五夜とは
「十五夜」とは、旧暦8月15日の夜のこと。写真のように、「十五夜」イコール満月をイメージしている人は多いと思いますが、実は必ずしも満月の日、というわけではないのです。それは、お月さまが必ずしも15日かけて、新月から満月になるわけではないため。
新月から満月になる日数は、時期によって大幅に変わります。新月から満月に移行する日数が、正確には14.5日要するためです。このため、14日で満月になる月もあれば、16日で満月になる月も存在します。
◆2023年の十五夜は9月29日
現在の新暦と旧暦では1ヶ月から2ヶ月のズレがあるため、「9月7日から10月8日の間の1日」が「十五夜」にあたります。2023年は9月29日(金)が「十五夜」です。
実は、お月見をする「十五夜」には別名があり、「中秋の名月」とも呼ばれています。この「中秋の名月」は「秋の真ん中に出る月」という意味。「秋の真ん中」と聞くと、何月頃を想像しますか?
かつて日本で使われていた旧暦では、秋は7月から9月と決まっていました。「中秋の名月」という名称で呼ばれるようになったのは、旧暦が使われていた時代。
そのため、旧暦の8月は秋の真ん中であり、さらに8月の中間にあたる15日に出る月を「中秋の名月」と呼ぶようになりました。そのため、現在では「十五夜」という名称だけが残り、日にちは15日でなくても、十五夜と呼ばれているのです。
十五夜の由来
それでは「十五夜」はいつから始まったのでしょうか?
日本では、昔から月が神聖視されてきました。その歴史は古く、「十五夜」ではないものの、縄文時代にはすでに月を愛でる文化があったと言われています。
「十五夜」に月見をするようになったのは、平安時代。860年頃に中国から伝わり、貴族の間で「十五夜」が親しまれるようになりました。当時は月を見ながら酒を酌み交わし、舟に乗って詩歌や管弦を楽しむという風流な催しだったそうです。
この頃の「十五夜」は、現代の空を見上げて月を眺めるものではありませんでした。貴族たちは空に浮かぶ月ではなく、水面や盃に映った月を愛でていたそうです。
庶民に「十五夜」が広まったのは、江戸時代になってからのこと。庶民が楽しんだ「十五夜」は、貴族のように月を愛でるだけの催しではありません。
「十五夜」の時期は田んぼの稲も育ち、収穫をする頃。そのため、「十五夜」は月を眺めるというよりも、無事に収穫できたことへの喜びを分かち合い、感謝する日という意味合いが大きかったのです。
◆十三夜と十日夜
「十五夜」と似た行事である「十三夜」(じゅうさんや)や「十日夜」(とおかんや)というお月見をご存じでしょうか?
「十三夜」は旧暦の9月13日のお月見のことです。2023年の「十三夜」は10月27日(金)です。「十三夜」の月は「十五夜」に次いで美しい月だと言われており、「十五夜」と共に昔から大切にされてきました。
ちなみに、「十五夜」か「十三夜」のどちらか一夜しか月を見ないことを「片見月」や「片月見」と呼び、縁起が悪いこととされています。
「十三夜」では無事に収穫できた栗や豆を供え、収穫に感謝をしていました。このことから「十三夜」のことを別名「栗名月」「豆名月」と呼び、月見団子と一緒に栗や豆を食べる習慣があります。
もうひとつ、「十日夜」という日も存在します。
「十日夜」は旧暦10月10日に東日本を中心に行われてきた収穫祭のことを指します。2023年の「十日夜」は11月22日(水)。西日本に住んでいる方は、聞き馴染みがないかもしれませんね。収穫祭の内容は地域によって異なります。
旧暦の10月10日は稲の刈り取りが終わり、田の神様が山に帰る日とされています。そのため、稲の収穫を祝って餅をついたり、稲の茎を束ねた「わらづと」や「わら鉄砲」で地面をたたきながら唱えごとをし、作物にいたずらをするモグラを追い払う行事などが行われました。
また、地域によっては田んぼを見守ってくれたかかしにお団子や餅、収穫物をお供えする「案山子あげ」という行事や、かかしと一緒にお月見をする行事もあります。
ちなみに、西日本ではこの「十日夜」とは別に、旧暦10月亥の子の日や11月に類似した収穫の行事が行われていたそうですよ。
十五夜に行われる風習は? ススキやお月見団子などの習わし
「十五夜」は、お供え物をしてお月見をする日です。お月見では「農作物を収穫できたことへの感謝」と、月の満ち欠けから連想された、「命を繋いでくれた祖霊への感謝」や祈りを捧げます。
また、地域によって違いはあるものの、「十五夜」のお月見では飾り物とお供え物をします。飾り物は「ススキ」、お供え物は「お月見団子」、「農作物」を用意しますよ。
ススキを飾る
ススキは秋の七草の1つです。このススキは、作物や子孫の繁栄を見守るとされる月の神様の「依り代」と考えられています。本来は稲穂をお供えするべき、とされていましたが、この時期の稲穂はまだ稲刈りの前。そのため、稲穂によく似たススキが飾られるようになりました。
また、ススキの切り口が鋭く魔除けになるともいわれ、軒先にススキを吊るす習慣も。ススキに加えて萩や撫子などの秋の七草や、野の花を心を込めてお供えすることも行われます。
お月見団子を供える
お月見団子は、丸い団子を月に見立て、収穫への感謝の気持ちを表すためにお供えします。また、その団子を食べることにより幸せと健康が得られるとの言い伝えもあるんですよ。
「十五夜」にちなんで、お月見団子15個をピラミッドのように積んでお供えする習わしがあります。ピラミッドの一番上の団子は、霊界との懸け橋になると考えられているそうです。
農作物を供える
里芋や栗など、収穫されたばかりの農作物をお供えすることにより、豊作を感謝していたとされています。農作物の中でも一般的なものは里芋であり、「中秋の名月」は別名「芋名月」と呼ばれることも。
また、農作物に加え、ブドウなどのツル性のものをお供えすると、月とのつながりがより強くなると言われています。
十五夜の独特な風習
「十五夜」ではお月見以外にも地域によって独特な風習があります。最も多いのは「お月見どろぼう」です。この「お月見どろぼう」とは、「月見のときだけは、お供え物を勝手に取っていい」という風習です。
長崎県の一部では「まんだかな」と言いながら、子供がお供え物を勝手に取っていきます。また、秋田県のある地域では「片足御免」と言い、他人の家に片足を踏み込んでお供え物をとっても許されるそう。
このような「お月見どろぼう」をされた場合は「お月様がお供え物を食べた」と捉え、喜ばしいことだとされています。
最後に
「十五夜」についてはいかがでしたか? 地域によってお月見の楽しみ方の違いはあるものの、同じ日に日本のあちこちでお月見をするという習慣があるのは面白いですね。今年の「十五夜」ではお住いの地域の風習にならってお月見を楽しんでみてはいかがでしょうか?
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