「ワンオペ」ってどういう意味?
「ワンオペ」は、さまざまな現場で問題視されています。一体、どのような状態のことをワンオペと呼ぶのでしょうか?
意外に多い「ワンオペ」の現状… どう解決する?
よく耳にする「ワンオペ」というワード。ネットから広がり、ここ数年は深夜のコンビニや飲食店、育児や介護など、さまざまな現場で社会問題としても取り上げられています。
みなさんの周りにも意外と多い「ワンオペ」の現状とは? そして、解決策はあるのでしょうか?
そもそもワンオペの意味とは?
「ワンオペ」とは、「ワンオペレーション」の略。“ワン=ひとり”、“オペレーション=作業”を合わせた和製英語です。本来ならひとりでは回らないような作業を、たったひとりで担当しなければいけない過酷な状況のことをいいます。
「ワンオペ」が話題になった社会的背景について
2014年、某飲食チェーン店の大半で、ひとりでの深夜の労働体系が敷かれていたことが発覚。9時間にわたり休憩もとれないまま、ひとり勤務に就いていた、24時間以上の連続勤務を週数日間連続でこなした、という人まで。こうしたブラック企業の「ひとりですべてをこなす過酷な状況」が社会問題に。
最近ではそこから派生して、夫婦共働きにもかかわらず、子育ては母親に任せっきりの「ワンオペ育児」、結婚していないシングルの人が必然的にひとりで親の介護を担う「ワンオペ介護」も話題となっています。とくに「ワンオペ育児」は、インターネットで広がり、2017年には流行語大賞にノミネートされるほどの注目のワードとなりました。
「ワンオペ」が問題になりやすい事例とは?
誰でも直面する可能性がある「ワンオペ」問題。どのような場面で起こっているのか、経験談と共に見ていきましょう。
◆コンビニ:トラブルの対応もひとり。トイレに行く時間もない!
深夜のコンビニで、従業員が忙しそうに一人でバタバタと店内を動き回っている姿を見たことはありませんか? ワンオペとなると接客・調理・清掃・発注など、全てを一人でこなさなければなりません。
コンビニバイト経験者Y君曰く、夜の10時から朝5時まで、深夜のワンオペは普通のことだったとか。「特に大変だったのは酔っぱらったお客さんの対応。理由なくキレてくる人もいますからね。自分の場合、深夜2時くらいに来た酔っ払いが、接客が悪いと急に怒りだして1時間くらいダラダラと説教していったこともありました」。
そんなトラブルやクレームもひとりで対応しなくてはならないという現状が。多くの場合は、店舗側が人件費の削減のためにギリギリの人員でお店を回しています。とくに深夜はお客が少ないので、ワンオペとなってしまうのだとか。
しかし、店側の人件費削減というだけじゃない理由も。2年前、都内近郊にコンビニをオープンした、オーナーのSさん。オーナー自ら、深夜のワンオペはよくあること。今どきは深夜に働いてくれる人がなかなかいないそう。いくら時給を高く設定しても、深夜働くくらいなら昼間の安い時給の方がいいのだという。
結果、万年的に深夜のアルバイト不足が悩みの種。そんななか、オープンして半年も経たないうちに1週間も寝こみ、小学一年生になったばかりの子供を置いて、泣く泣く奥さんが深夜のワンオペを担うことも度々あったといいます。
最近では社会問題になっていることもあり、店舗側も最初からひとりのシフトにしていることは少なくなってきているとは思いますが、2人体制でひとりが急に休むとか…。変わらずワンオペ問題が解決されていないのが現状です。
◆育児:休日でも子育てママは朝から大忙し! 旦那はゴロゴロしてるけど…
今、いちばん世の中の関心が高いワンオペは「育児」がダントツ! インターネットのワード検索でも「ワンオペ」と入力すると、大多数が子育て世代の親の悩み。育児と家事の大半を担う状況を端的に表すこのワードが多くの親の心に刺さり、ひとりで背負うことの孤独や辛さを声にだすきっかけとなっています。
朝起きて朝食を作り、仕事に行く旦那を見送り、子供を保育園に連れて行き、洗濯、掃除、昼間は仕事、夕方は子供の世話や夕食作り、そして寝かしつけ。子供が寝てからやり残した仕事や家事を猛スピードでこなし、深夜に就寝。自分時間は全くない状態。週末も平日にはなかなかできない細々とした家事が山積みで、ここ数年365日休みなし… なんていうママさんも。
パートナーの単身赴任や残業などの理由で、夫婦のどちらかに負担が大きくかかっており、実家など頼れる人がいない状況のことを「ワンオペ育児」といいますが、男性と同じようにフルタイムで働く女性が増えてきているにもかかわらず、「育児・家事は女性の仕事」という概念が今でも残っている日本では、女性が犠牲になっていることが多いのです。
◆介護:ワンオペ介護の末、介護離職をすることに…
高齢化が進んでいる昨今、問題が深刻化しているのが「ワンオペ介護」。少子化で兄弟がいない人、一人っ子で独身ということで親の面倒を見るのが必然的にひとり、というような「ワンオペ介護」に悩まされている人が増加中です。
母親は認知症、父親は末期ガンのために入院しているという、アラフィフ独身女性Kさん。病院への付き添いや、介護サービスを利用するための手続きに加え、両親のどちらかが急に体調を崩すことも度々。昼間は介護サービスを使っていても夜間は自分だけでみなければなりません。深夜に徘徊、トイレなどで何度も起きなくてはならず、睡眠不足に。次第に残業ができなくなり、早退や休みも多くなっていきました。結局、同僚に迷惑をかけたくない、気力・体力の限界を感じた、という理由で退職せざるを得ない状況に陥ったそう。
助け合う家族がいれば、介護を協力し分担することもできますが、ひとりだけで担うとなると、介護サービスを使っていてもおのずと負担は重くなります。在宅介護者へのアンケートでは、約7割の家族介護者が、精神的・肉体的に限界を感じているという現実が。介護離職のほか、自分が体調を崩すなど、「ワンオペ介護」には様々な問題が潜んでいるのです。
「ワンオペ」における解決策は?
「ワンオペ」を解決するためには、一体どのような方法があるのでしょうか? 場面ごとに見ていきましょう。
◆コンビニのケース
人員を確保する
アルバイトがほどんどだという職種柄、2人体制でシフトを組んでも、欠勤などが出る可能性も多い。経営者側に季節や天候、インフルエンザの流行など、状況に応じた人員配置を改めて考えてもらう。
営業時間を短くする
そもそもコンビニは24時間営業しなければいけないのか? 本社にあらかじめ決められた営業時間を短くするよう、オーナーたちが直談判しているというケースも。場所やケースによって臨機応変に営業時間を決めることができるよう、少しずつではあるが改善されつつあるという傾向。
システムを機械化する
昨今のAI化に伴い、コンビニなどではセルフレジなどの導入が進んでいます。実際、深夜時間帯の無人化を試験的に導入している店舗もで始めています。
◆育児のケース
具体的に何が大変かを紙に書き出し、可視化しパートナーと話し合う
まずは家事や育児がどのように大変なのか、それぞれの作業にどれくらい時間がかかるのかを書き出す。状況を可視化することで、パートナーに何を手伝ってもらいたいのかが、明確に見えてくるはずです。
次のステップはそれをシェアすること。「この作業が大変なので手伝って欲しい」と具体的にパートナーに提案、シェアすることがワンオペ育児の辛さを理解してもらうためのポイント。
そして、何よりも大切なのは夫婦間のコミュニケーション。日々の忙しさに敬遠しがちなこの作業、時間がないから、面倒だから… と目を背けずに週末にでもゆっくり話す時間を設けてみてはいかがでしょうか。
完璧を求めない
子育てをしていると「食事はバランス良く」「毎日掃除をしなくては…」など、完璧に家事をこなさなくては、というなぜだかわからない謎のプレッシャーを感じている新米ママも多いはず。お惣菜や外食に頼る、1日くらいは掃除をしなくても大丈夫、という心の余裕が自分を解放してくれます。
人と交流し、現状を話す
「なんで私だけ?」「こんな場合はどうすればいい?」など、育児をしていると、悩みがつきません。そんなときは、ひとりで抱え込まず自分の気持ちを素直に吐き出せる場を作ることも大切です。
ママ友や子育て支援センターなどの職員、ときにはSNSでも。愚痴や自分の思いを吐き出すだけで、すっきりして気持ちが楽になったり、解決策が生まれたり… メリットいっぱい。
第三者に頼ってみる
家事代行サービスやベビーシッター、地域によっては理由問わず幼児を預かってもらえる公共の施設など、近年は子育て世代をサポートする多くのサービスが充実しつつあります。
実家やママ友に頼むのが難しければ、たまには思い切ってお金を払ってでも第三者の手をかりてみてはいかがでしょう。ひとりで美容院やショッピング、映画など、ひとときでも自分時間をもつことで、気持ちがリフレッシュ。“眉間にシワがよっている状態から、笑顔が増える”子供にも夫にもいい影響が。
◆介護のケース
介護サービスを検討する、見直す
「親の面倒は子供が見るのが当たり前」という古くからの概念がなかなか払拭されず、家庭内でどうにか… と思いがちですが、今の介護が少しでも楽になるよう、ケアプランの見直しを。まずは市区町村の担当窓口、地域包括支援センターなど、気軽に相談してみてはいかがでしょう。介護される本人だけでなく、家族の状態も把握してもらうことも重要です。
日中預かってもらえる「デイサービス」や、数日間預かってもらえる「ショートステイ」、もしくは思い切って在宅介護をやめて、施設に入所してもらうのもひとつの選択肢。利用できるサービスの種類はさまざま。現状を把握してもらうことで、見直せる点に気付けるかもしれません。
共倒れにならないよう早めに先のことを考えながら、その人、その家族にあった“オンリーワン”の介護を考えることが大切だと思います。
悩みを人と共有し、客観的に考える
同じ悩みや経験をもつ人に積極的に話してみては? 共感をしてもらえると気持ちが楽になり、話すことによって改めて自分の現状が客観的に考えられるきっかけになります。
ときには、有効な情報を得ることも。また、介護サービスを利用している人なら、ケアマネジャーやヘルパーなどに気軽に話せる間柄になるのも手。今の状態を把握しているうえ、経験値が高いので、色々な角度から介護のアドバイスをしてくれるはずです。
抱え込まないことが一番
ここでは、深夜の労働、子育て、介護の「ワンオペ」について考えてみましたが、他にも職場などの「ひとりでこなさなくてはいけない過酷な状況」=「ワンオペ」は少なくありません。
がんばろうとしてひとりで抱え込んでしまわず、現状を打開すべく多くの人が声をあげていくことが大切なのではないでしょうか。
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