結婚しない人生って、どうですか?
結婚してしまったエディターSが独身を貫く社会学者・上野千鶴子先生に直撃!
エディターS(以下S) Oggi読者はとにかく真面目。「結婚したい」という気持ちと真摯に向き合った結果、婚活疲れに陥っているのが実情です。
上野さん(以下敬称略) 今や結婚は、しないと生きていけない〝生活必需品〟ではなく、ぜいたく品です。「何がなんでも結婚しなきゃ」という状況ではないからこそ、「より付加価値の高い結婚を」と自分でハードルを上げて疲れてしまうのでは。結婚願望の中身は、生活保障? 社会的承認? それとも愛?
S 今回の取材で改めて、「人生のパートナーとして男性に選ばれた」という自信が欲しかったり、「親を安心させたい」という、社会的承認欲求が根深いと感じました。もちろん、好きな人と結婚して一緒に生活する喜びや安心感も欲しいんですが…。
上野 戦前のフェミニスト・高群逸枝は「結婚とは死にまで至る恋愛の完成である」って言ったんです。この言葉を聞いて、グッとくる? ゲッとくる?
S ゲッ…かな。同じ相手に死ぬまでときめくような恋愛はないかもしれません(苦笑)。
上野 実体験ね(笑)。愛と性と生殖の三位一体を結婚のもとに結びつけるのは〝ロマンティックラブイデオロギー〟と呼ばれる幻想です。ドラマや漫画で「結婚とはこうあるべき」と洗脳されているかもしれないけれど、長い歴史上この3つがそろうことなんてめったにありませんでした。純粋に愛が欲しいならわざわざ結婚を届け出なくてもいいでしょうし、とにかく子供が欲しいということならそれなりのやり方があるんじゃないでしょうか。
S 先生はこれまで結婚したいと思ったことはないんですか?
上野 何度か同居はしましたが、結婚は考えなかったですね。自由を手放したくありませんから。結婚して「一生この人とセックスします」なんて、できない約束なら最初からしなければいいのに。だから最近の不倫騒動も理解できません。ちなみに私は男嫌いだと思われているけど(笑)、恋愛はしたほうがいいですよ。心と体が前のめりになって生きる意欲になります。
S でも、自由でいることのつらさはないですか?
上野 孤独かもしれません。そして、結婚すればいったん「孤独じゃない」と思い込むことはできるかもしれない。でもその後に何が起こる? 実際結婚してみてどう? 結婚相手は本当に、自分の居場所を与えてくれる?
S 夫が永遠に居心地のいい場所を「与えてくれる」とは思いません。結局、仕事なりなんなり、生きがいを自分で見つけないと人生はつまらなくなりそう。
上野 そうでしょう。それに今の時代、女の人生は結婚くらいでリセットされません。結婚してもしなくても、人間は結局ひとり。自分の居場所くらい、男に与えてもらうんじゃなくて自分でつくってほしいですね。
エディターS
20代後半から結婚願望が強く、お見合いなどの婚活経験あり。結婚話をのらりくらりとかわす2歳年上の彼を寄り切り、31歳で結婚して9年。1児の母。
古今東西こんな女性も〝結婚じゃない幸せ〟をつかんでいます!
自分の半径数メートルの価値観だけで幸せの形を決めてしまいがちだけれど、世界に目を向ければ結婚していなくても、恋をしてキラキラと輝いている女性が多数!
現在44歳のヴァネッサ・パラディは26歳から14年間、ジョニー・デップと交際し子供をもうけるも、入籍はせず。破局後も変わらず映画などで活躍し、新恋人とも結婚をする様子はなし。
一方、結婚したことで不自由さを知ったセレブたちも。20歳でチャールズ皇太子と結婚したダイアナ元妃は、王族という立場に苦しみ、35歳で離婚。自由の身になってからは、慈善活動に専念。
マドンナは2度結婚したものの、元夫との結婚生活を「監獄にいるようだった」と表現。離婚後も歌手活動は順調、新たな恋もしている。
もちろん日本人も負けてはいない。石田ゆり子さんや天海祐希さん、小泉今日子さんなどはアラフィフ独身。
読者からは、「人生を楽しんでいる」「自立してポジティブに働く姿が素敵」など憧れの声が殺到。だれかに頼ることなく自分らしく生きる彼女たちの姿は〝結婚しない人生〟のお手本になるはず!
ちなみに… 日本でも生涯未婚率は過去最高に
50歳までに一度も結婚したことがない人の割合を示すデータ。50年前の日本では、生涯未婚率は男女ともに2%程度でほとんどの人が結婚していたが、今は男性の4人に1人、女性の7人に1人が一生結婚しない時代に。
国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」、国勢調査(2015年)をもとに作成
2017年12月号「「その婚活、今すぐ辞めなさい!」より。
本誌掲載時スタッフ:撮影/江口登司郎 構成/酒井亜希子・佐々木 恵・赤木さと子(スタッフ・オン)
再構成:Oggi.jp編集部
上野千鶴子先生
1948年生まれ。社会学者。専門は女性学、ジェンダー研究。東京大学大学院教授を経て’11年4月からNPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。著書『おひとりさまの老後』(法研)は75万部のベストセラー。