「犬に論語」とは?
「犬に論語」とは、いくら道理を説いて聞かせても益がないことのたとえです。なお、論語とは、思想家・孔子の言行を門人たちが編集した20編にわたる書物で、処世の道理や倫理、政治などに関する教訓がまとめられています。
日本には応神天皇の時代に伝来したといわれ、四書五経の一つとして知られていました。また、江戸中期の近松門左衛門作『本領曽我』には「犬に論語」の表現が見られることから、論語といえば道理や大切な教えといった共通認識が広まっていたと考えられます。
・彼に道理を説いても犬に論語だよ
・彼女はわかりやすくパソコンの使い方を説明してくれているようだが、わたしのような全くの素人には犬に論語だった
・兄に何を言っても、今は犬に論語だ。久しぶりに彼女と会えると浮かれていて、他人の話は耳に入らないようだ
「犬に論語」は、理解力に問題がある場合だけでなく、考え方に偏りがある場合や何らかの事情で一時的に話が通じない場合などにも使われます。
犬に論語
出典:小学館 デジタル大辞泉
いくら道理を説いて聞かせても益がないことのたとえ。馬の耳に念仏。
動物を使った「犬に論語」と類似する表現
「犬に論語」と同じく、動物を「話が通じない者」や「理解力に問題がある者」などにたとえた表現は多数あります。次のような表現を聞いたことがあるかもしれません。
・馬の耳に念仏
・牛に経文
・兎に祭文
それぞれの使い方について見ていきましょう。

馬の耳に念仏
「馬の耳に念仏」とは、馬にありがたい念仏を聞かせても無駄であることから、いくら意見をしても全く効き目のないことのたとえとして使われる言葉です。
・彼が数々の女性問題を起こしてきた人物であることを説明しても、姉には馬の耳に念仏だ
・馬の耳に念仏だとは思ったが、一応、騒ぎ立てる子どもたちに静かにするようにと注意した
・息子が反抗期で言うことを何も聞かない。今日もお弁当箱を洗うように言ったが、全く馬の耳に念仏だった
「馬の耳に念仏」は、「馬の耳に風」や「馬耳東風(ばじとうふう)」などと言い換えることができます。
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牛に経文
「牛に経文(きょうもん)」とは、いくら説き聞かせても効き目のないことのたとえです。「馬の耳に念仏」と同じ意味で使われます。
・牛に経文と思いつつも、毎日娘に身だしなみを注意している
・講師として雇われてプログラミングの基本を説明したが、何の手ごたえもなく、まるで牛に経文だった
・妹に数学を教えているが、基礎の基礎すら理解していないため牛に経文だ
類似する表現として、中国の故事成語「牛に対して琴を弾ず」が挙げられます。魯(ろ)の公明儀が牛に琴で名曲を聞かせたところ、牛は素知らぬ顔で草を食んでいたことから、志の低い者に高尚な道理を説いてもわからないといったたとえで使われることがあります。
兎に祭文
「兎に祭文(さいもん)」とは、神仏の霊験について兎に説いても無駄であるように、いくら意見をしても効き目がないことのたとえで使われる言葉です。
・推しに夢中の娘には、推しのよくない評判を聞かせても兎に祭文だ
・兎に祭文とは思いつつも、フードコートで騒ぐ子どもたちに公共の場では静かにする必要性を説いた
・図形の問題の解き方を説明したが、兎に祭文と言わんばかりの反応だった
「犬に論語」「牛に経文」と同義で使われます。また「犬に論語」や「牛に経文」と並べて、道理を説くことが無駄だと強調することもあるといえるでしょう。
動物以外の「犬に論語」と類似する表現
「犬に論語」と類似した意味を持つ表現のなかには、次のように動物以外を用いたものもあります。
・暖簾に腕押し
・糠に釘
・月夜に提灯
それぞれの読み方や使い方を見ていきましょう。

暖簾に腕押し
「暖簾(のれん)に腕押し」とは、暖簾を押しても手ごたえがないことから、少しも手ごたえや張り合いがないことのたとえとして使われる表現です。
・納期が遅れていることに対して担当者に問い合わせたが、何やら論点をはぐらかされて暖簾に腕押しだった
・彼女には何を言っても暖簾に腕押しで、期待するような反応が返ってきたためしがない
「犬に論語」と同義でも使われますが、「話が通じない」というよりは「手ごたえがない」のニュアンスが強い傾向があるといえます。
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糠に釘
「糠(ぬか)に釘(くぎ)」とは、なんの手ごたえもなく、効き目のないことのたとえです。
・あの新入社員は他人の言葉に耳を貸すということがない。注意をしても糠に釘だ
・一生懸命に話をしても、何のリアクションもなく糠に釘だ
略して「ぬかくぎ」と言うこともあります。
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月夜に提灯
「月夜に提灯(ちょうちん)」とは、不必要なことや無駄なことのたとえです。
・会社のロゴマークを変えたらしいが、もともと目にすることがほとんどなかったため月夜に提灯だ
・髪にメッシュを入れたって? 月夜に提灯だね。よくわからないよ
「闇の夜の錦」や「籠(かご)で水を汲む」などの表現と言い換えられます。
「犬に論語」と反対の意味を持つ表現
次の表現は、「犬に論語」とは反対の意味で使われることがあります。
・釈迦に説法
・打てば響く
それぞれの表現について、例文を通して使うシチュエーションや使い方を見ていきましょう。

釈迦に説法
「釈迦(しゃか)に説法」とは、知り尽くしている人にそのことを説く愚かさのたとえです。
・彼女は心理学の権威だよ。心理学を彼女に説明するなんて、まさしく釈迦に説法だ
・あなたにマーケティングを説明するのは釈迦に説法ですね
「釈迦に経(きょう)」とも言うことがあります。
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打てば響く
「打てば響く」とは、働きかけるとすぐ反応することです。
・先月入社した彼は、打てば響く利発な人物だ
・打てば響く彼女は、どんな無理難題でもすぐに対応してくれる逸材だ
「打てば響く」は人を褒める際にも用いられます。
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適切な場面で適切な表現を選ぼう
「犬に論語」や「牛に経文」などの言葉そのものは失礼な表現ではありませんが、動物で人をたとえるのは失礼に当たる可能性があります。相手から適切な反応が得られない場合には「暖簾に腕押し」、無駄なことには「月夜に提灯」などの表現で言い換え、失礼に当たらないように注意しましょう。
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