朝ドラ『ばけばけ』今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『ばけばけ』ご覧になられてますか? ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
前回のレビューはこちら:ヒロインの父の「持ち逃げ」にがっかり…退屈な日常に変化はあるのか!?|『ばけばけ』第20週
第21週「カク、ノ、ヒト。」を振り返ります

松野家に新たな危機が到来? なんと、ヘブンさんの職場である熊本高等中学校がなくなる可能性が浮上…。ヘブンさんのお給金で家族4人+女中のおクマちゃん、書生の丈&正木=7人の生活を支えているわけですから、職を失えば大変なことです! どうする松野家。
なんでも、文部省の予算削減のために各地の学校を閉鎖しなければ…ということらしい。まだ噂レベルで決まったわけではありません。しかし、時は明治25年、歴史上では日清戦争まであと少し。学校のお隣では日々軍隊の訓練が行われていて、『ばけばけ』の世界でも世の中の雰囲気が変わっていく雰囲気を感じます。それゆえか、人々のあいだには余計に得体の知れない不安や焦りが漂っているのかもしれません。
とはいえ、貧乏暮らしが長かったためか松野家は意外と冷静。おトキちゃんは家計簿をつけてやりくりを可視化し、母上はさっそく内職を始めます。しかし、これって「貧乏に戻ったって平気」ということではないと思うんですよね。この先どうなるかはわからないけれど、これまでどうにかなってきたし、焦ってもしかたない。ただ、目の前の問題を淡々と片付けよう──そんな肝の座り方。ただひとり、父上はダメダメでしたが。慌てて投資に追加で手を出して、先週せっかく増やしたお金を溶かす始末! 父上はやっぱり父上であった。ヘブンさんも「パパサン、チョウシノル、ナイ!」と嗜めていたけれど、本当に反省してほしい。トータルでは元本割れしてないのが救い。そしてヘブンさんの稼ぎをしまう場所はもう変えて、父上には見つからないようにして!!
で、ヘブンさんは教師でもあるけどやっぱり本業は作家、ということで、これからも執筆業で食べていけるように松野家によるネタ探しがスタート。思い返せば、松江時代は錦織さんがヘブンさんにぴったりの題材をたびたび見つけてきてくれていたんですよね。帰ってきて、錦織さん…(泣)。だからこそおトキちゃん一同、自分たちが錦織さんに代わって「リテラリーアシスタント」にならねば!と奮闘。生活がかかっているのもあるけれど、みんなヘブンさんの役に立ちたい一心なのだろうなあ。
そんななかおトキちゃんが見つけたのが、“呪われた女性”・おイセさんでした。なんだか陰気でいかにも訳ありなおイセさん。村人にも避けられている彼女ですが、怪談マニアのおトキちゃんは「おもしろい」と興味津々。ヘブンさんの執筆のネタにもなるかもしれません! 詳しく話を聞くことになりました。
松野家を舞台に、「呪われた女」の取材がスタート!
どうも熊本にはいろいろな「言い伝え」があるみたい。嘘をつくと来世は蛇になるとか、人のぬくもりが残った場所に座るとその人の不幸が移るとか…。おイセさんは「人形の墓」の言い伝えを守らなかった結果、次々と困難に襲われるようになったのだそう。ついには「呪われた女」の烙印をおされ、周囲の人々からも「呪いが移る」と邪険に扱われるようになったのです。いや、科学的根拠なし! 直球の差別!!
先週予告で見た段階では「“呪い”て。ほんわかギャグ週かな?」くらいにドラ子も思ってたんですが、想像以上に深刻な話でした…。村の人は「呪い」を本気で信じているようで、根拠はないけれど、「言い伝え」とはそういうもんらしい。迷信だと笑うのは簡単。でも彼らにとってはそれが真実。火のないところで炎上がおきることもある現代のSNSなんかも、大差ないのかもしれない。
「人形の墓」の内容はこう。1年のあいだにふたりの死者が出た家では、藁人形の墓を作らないとさらなる死者が出る、というもの。う〜〜ん、ひょっとしたら言い伝えができた当初は、伝染病の蔓延を防ぐためとか、自覚的でないにしても何か合理的な理由があったのかも? だとしてもおイセさんが家族を失ってからもうだいぶ時間も経つわけで、「あの人は呪われているから近づくな」は、ちょっと拡大解釈になりすぎですよねえ。
生活には不安がつきものです。明治時代の庶民ならなおさらでしょう。暮らしのなかでつのった不安がいつしか恐怖となり、誰かを忌み遠ざけることで、人は安心したくなるのかも。「私は違う。だから大丈夫」と。それこそが、「呪い」の正体なのではないか、とドラ子は思う。でも、その「生贄」にされてしまった人の気持ちは…?
悲壮感がにじみ出るおイセさんの話を聞いて、取材の場もどこか気まずい空気になってしまったのですが、おトキちゃんは違います。呪いを気味悪がるでもなく、そんなの迷信だと笑い飛ばすでもなく。おイセさんのぬくもりがのこる座布団に座り、これで呪いは私に移ったからおイセさんはもう大丈夫!と。や、やさしい(涙)。なんならもしかしてちょっと、楽しんでる…? なにせおトキちゃんは金縛りにあってもうれしくてニヤニヤしちゃうような怪談マニアですからね(笑)。
おトキちゃんは、おイセさんが抱えてきた悲しみを感じ取ったのでしょう。呪い、怪談、ホラー。これらは不気味で、恐ろしい話であると同時に、いつだって人間の悲しみを内包している。これまで作中で語られた「鳥取の布団」も、「水飴を買う女」も、「子捨ての話」もそうでした。そんなふうに悲しみに共振できる彼女だからこそ、ヘブンさんは好きになったのでした。
ままならない毎日、うらめしい気持ちになるときもある。それを誰かに向けたら「呪い」になるけれど、「物語」にすれば違った意味を持つ。ヘブンさんとおトキちゃんが人生をかけて見つけていくものは、きっとそういうものなのだろうな。ちなみに、最終的に呪いはブードゥー人形(藁人形の代わり?)に移してめでたしめでたし!
さて、次週の『ばけばけ』は? 「アタラシ、ノ、ジンセイ。」
さて、結果として熊本高等中学校の存続は決まり、松野家の生活もひとまず安泰そうです! よかった〜。「結局大丈夫だったんかい、ズコーッ」と感じた人もいるかもしれませんが、未来が見えない時期って本当に不安で、焦って、迷走するものですからね。得体の知れない「呪い」に怯える村人と、閉校のうわさに右往左往する学校関係者たちって、根っこの部分は同じだったりして…ドラ子も同じ状況にぶち込まれたら、「ほら大丈夫だったでしょ」とはとても言えない(泣)。
さらに今週ラストは新キャラのおランさんが登場しました! おトキちゃんと同じ、異人の妻という立場の女性です。この出会いが、おトキちゃんをどう変えていくのでしょうか。そしてそして、おトキちゃんがラストシーンですっっっっごく眠そうにしていたじゃないですか。もしかして…おめでたフラグ…ですか? 次週のサブタイトルは「アタラシ、ノ、ジンセイ。」アメリカ行きを匂わせておいて、新しい命が誕生する流れとドラ子は予想! 違ったらすみません(笑)。
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。



