朝ドラ『ばけばけ』今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『ばけばけ』ご覧になられてますか? ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
前回のレビューはこちら:またしても修羅場!? 新婚の夫がこっそり向かう先は…|『ばけばけ』第15週
第16週「カワ、ノ、ムコウ。」を振り返ります

おトキちゃん&ヘブン先生の結婚フィーバーはまだまだ松江を賑わしております。新聞では記者・梶谷さんによる連載「ヘブン先生日録」がスタートし、ますますふたりは「時の人」に。記事の内容はおもしろおかしく誇張されているので、街の人たちのあいだでふたりの勝手なイメージがひとり歩きしています。さすがのおトキちゃんもちょっぴりしりごみ。街を歩けば声をかけられ、買い物もままなりません。
こうした状況にうんざり気味の松野家に対し、ヘブン先生は「とくにこれまでと変わらないけど?」という反応であることにハッとします。松野家に向けられる市民の好奇の目は、ず〜っとヘブン先生に向けられていたものなんだね…。先生だって人知れずやきもきしていたのだと思うと、少し申し訳ない気持ちになるドラ子です。そして、それは今に至るまでずっと続いているという。ってことは、ひょっとしたら松野家もずっとこのまま落ち着かない日々を生きていくのかもしれない。
さて、そんなおトキ&ヘブンフィーバーに浮かない顔をしている女性がひとり。おトキちゃんの親友・おサワちゃんです。結婚前は貧乏長屋で苦楽をともにした存在ですが、先週からふたりはなんだか気まずい空気に…。おトキちゃんの立派な新居を目の当たりにし、おサワちゃんから距離をとるようになったのでした。
友達の成功や幸せを心から喜べない、そういうときってありますよね。ましてやおサワちゃんは貧乏脱出のために正規の教員免許をとろうとがんばっている最中。その成果がなかなか見えないと、余計に心が荒むってものです。おトキちゃんかて、工場の同僚女子の縁談をうらめしそう〜にしていたことがありました。何かが違ったら、ふたりの立場だって逆だったかもしれない。誰も悪くないから、感情のぶつけどころがないのもつらい。
サワとなみ、ふたりの女性が選ぶもの
時を同じくして、おトキ&ヘブンフィーバーにまったく動じていない女性もひとり。貧乏長屋サイドに取り残されたもうひとり、遊女のおなみさん。つらい境遇なのにいつも飄々と明るくていい人なんですわ。お互いに貧乏脱出を夢見ながら傷を舐め合ってたおトキちゃんがすっかり遠くに行っちゃって!と軽口をたたくおなみさんに、おサワちゃんは何を思ったのでしょう。おトキ&おサワは、けっしてただ傷を舐め合う同士じゃなかったはずだよ。おトキちゃんが出生の秘密を知ってしまったとき。おサワちゃんが代用教員に合格したとき。あんなときもこんなときも喜怒哀楽をともにしていたじゃないの…。
ヘブン先生も錦織さんに「アナタノ生キル道、アナタ選ぶ。(どんな道を選んでも)友達、変ワラナイ」って言ってたじゃん(涙)。とはいえこれって、ヘブン先生も錦織さんも人生に余裕があるからこそ、言えることなのかもしれない…。それを考えると余計にしんどい。
「女性が生きていくには身を売るか、男と一緒になるしかない」がおなみさんの信条。対して、誰の手も借りず自分の力で人生を変えたいのがおサワちゃん。そんななか、ついにおなみさんに身請けの話が舞い込みます。待望のお話、しかもめちゃいい人そうな馴染み客の福間さんから! けれどおなみさん、意外にも迷いが生じているよう。
人生を変えるには、ここぞ!というところで選べるか、だとドラ子は思います。おサワは資格をとって正規教員になる/ならない、おなみには身請けを受ける/受けないという選択肢が立ちはだかっている。その先がどう転ぶかはわからないけれど、少なくとも「変える」には選ぶしかないし、自身が変われば人間関係も移ろうものなのかもしれません。
ここでやるせないな〜と感じるのが、おサワ、おなみ(そして、かつてのおトキちゃんも)が人生賭けた選択をしている一方、もっと軽めのノリで「選べる」人が存在することですね。おサワちゃんが自習のために通っているサロン・「白鳥倶楽部」の土江とかさぁ! 土木技師を目指しているらしいけど、お酒飲んだりおサワにちょっかい出したり、なんか気楽そうに見えて…。いや、名門・松江中の出身なのだから、それなりに努力もしているのは違いないけれど、やっぱり生まれであったり、実家の太さであったり、性別だったりで選べる範囲が変わってくることもある。この時代ならなおさらです。
けれどドラ子は信じたい。知らず知らずのうちに積み重ねてきたことが、いずれ思いもよらぬ「選択肢」を連れてきてくれるのだと。福間さんは、おなみさんの「悲しみ」にこそ惚れたように。そしておトキちゃんがブレずに大事にしてきた怪談愛が、ヘブン先生を繋いでくれたように。そのとき選ぶかどうかは、おなみの言う通り「心が決めてくれる」。おサワちゃんの人生も、そうであってほしいなとせつに願います。
次週、悩めるおサワに新たな展開が!「ナント、イウカ。」
結果としておなみさんは福間さんの想いを受け入れ、晴れて遊郭脱出&橋の向こうへ。おサワちゃんとおトキちゃんとの距離は埋まらぬまま、次週へ続きます。予告を見る感じ、久しぶりに登場した庄田さんとおサワが恋仲になる展開…? やはり明治のおなごが生きていくには男の力が必要なの? おサワの出す答えは!?
ヒロイン以外のサブキャラも幸せになってほしいのが「朝ドラ」というもの。知らない間にしれっと結婚してたり、夢が叶ったりしているパターンも多いんですが(尺の都合もあるしね)、今週の『ばけばけ』ではおサワ・おなみの迷いや決意まで丁寧に見せてくれて、とてもうれしかったです。いろんな人生が重なり合ってドラマになっている。サブキャラといえば…錦織さんの行く末も気になりますね。まだ何か隠している様子の錦織さん。全然私生活が見えないし、彼の掘り下げも待たれます!
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。



