朝ドラ『ばけばけ』ご覧になられてますか? ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
先週のレビューはこちら:今明かされるヘブン先生の衝撃過去!愛だけでは乗り越えられない、残酷すぎる結末|『ばけばけ』第11週
ついにヘブン先生が日本の怪談に出合う! 第12週「カイダン、ネガイマス。」を振り返ります

先週からヘブン先生が金縛りに悩まされています。もしかして、このところ関係が気まずくなっている錦織さんの怨念…? おトキちゃんの提案で、ひとまずお寺にお祓いに行くことになりました。そこで、ついに先生は出合ってしまうのです。そう、彼の運命を変える「怪談」とのファーストコンタクト! 住職から聞かされたのは、「水飴を買う女」。死してなお子を思う母の物語に、ヘブン先生は涙を流して感銘を受けるのでした。
もちろん、怪談大好きなおトキちゃんはいてもたってもいられません。「ヘブン先生、怪談、もっと聞きたいですか?」「イエス!モチロン。カイダン、スバラシ!」今まで幾度もなく「怪談なんて古くさい、つまらない」とディスられてきたのですから、その喜びは相当なもの。「(怪談が)好きです、大好きです!」とはしゃぐおトキちゃん。ようやく怪談の話ができる人が現れて、本当によかったね(涙)。先々週に小谷にバッサリ怪談を否定されたショックがあるからこそ、観ているこちらも余計にしみじみうれしい気持ちになります。
早速、怪談をお話しするために、おトキちゃんが先生の書斎に一歩足を踏み入れるシーンが実に美しくて。薄暗い部屋から光の入る書斎へのコントラストが印象的で、「敷居をまたぐ」=「相手の心理的領域に入る」というメタファーも感じさせました。ふたりの距離がグッと近づく予感!
本に頼らず自分の言葉で話してほしい、と頼まれたおトキちゃんが選んだのが「鳥取の布団」というのが、また泣けるんです。別れた元夫・銀二郎が教えてくれた物語。最初に思いつくくらい気に入っていたお話なのだろうし、何度も聞かせてもらっていたんだろうなと思うとせつない。今週ね、ちょいちょい銀二郎の話題が出るんですよ。どうしてるんだろう銀二郎…。あのつらい別れを、おトキちゃんも視聴者もまだ精算しきれていません。
「シジミサン」から「オトキシショウ」にランクアップ! 「物語」がふたりの心の距離をちかづける
で、連日ヘブン先生にお願いされてさまざまな怪談を聞かせるおトキちゃん。日本語が不慣れな先生のため、何度も何度も繰り返し聞かせてあげます。時には、深夜まで怪談に没頭することも…。残業代と深夜手当あげてくれ!とつい突っ込んでしまいますが(笑)、怪談を語れることがうれしくてたまらないおトキちゃんはまったく苦ではありません。そのすばらしい語り口に、先生からの呼び名もさりげなく「シジミサン」から「オトキシショウ」にランクアップ! おトキ師匠て(笑)。
そしてあるとき語られたのは、「子捨ての話」。一聴するとただただ淡々としていて、ゾッとする結末の怪談です。けれどヘブン先生は自身の経験と重ねあわせて捨てられた子の悲しみを思い、おトキちゃんは結末の「その後」を想像して希望を見出す。こんなふうに物語の「余白」を語り合えるのって素敵です。余白に何を感じるかで、その人の人生が見える気がする。それは単純に自己開示してわかりあっていくよりも、もっと深くて豊かな時間だと思うのです。「アナタノハナシ、アナタノカンガエ、アナタノコトバ、スキデス。」これってきっとおトキちゃんの人生を全肯定するような言葉なんですよね。怪談を通して交感しあうふたりの姿を見ていると、なぜか無性に泣けてくるドラ子でした。
まじで!? 次週、あの男が再登場!!「サンポ、シマショウカ。」
とはいえヘブン先生が怪談に満足しつくしたら、松江を去ってしまうかもしれません。となるとおトキちゃんは失業ですから、「語るほどに失業が近づく」というアンビバレントな不安もあります。でも、やっぱり語っちゃうおトキちゃん。先生が喜んでくれるとうれしいもんね。心配しているのは本当に「失業」だけなのかな〜?
そしてラストに衝撃の展開が待っていました!! な、な、な、なんと、銀二郎が帰ってきます! 今週の「ちょいちょい銀二郎の話題」が大いなる伏線だったとは!!! もう興奮しすぎて「!」も増えますわ。予告を見るとずいぶん立派になったようで、「おトキちゃんとやり直したい」と…。ヘブン先生との関係が深まってきたところで銀二郎を再登場させるだなんて、大波乱の予感。銀二郎は『ばけばけ』屈指の人気キャラですからね、これはもう期待しかありません。ヘブン先生が大事に写真を飾っている女性・イライザも満を持して登場するみたい。ど、ど、どうなっちゃうの〜!? すっごく楽しみです!
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。



