朝ドラ『ばけばけ』今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『ばけばけ』ご覧になられてますか? ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
先週のレビューはこちら:スキップ成功は恋の予感?『ばけばけ』第9週
第10週「トオリ、スガリ。」を振り返ります

先週はヘブン先生に恋するおリヨが登場したわけですけども、今週は松江中の学生・小谷がおトキちゃんに想いを寄せる展開に。予告を観た感じではおサワちゃんと小谷がいい感じになるのかな?と思っていたけれど、朝ドラあるある・予告詐欺だったようです。しっかりだまされた〜。恋する思春期男子・小谷はなかなかがんばり屋さんで、周囲の人々におトキちゃんの好きなものを調査したり、何かと理由をつけて職場(=ヘブン先生宅)を訪れたり。好きになったきっかけが「顔」ってのも年相応でかえって信頼できますね。ポッと出の小谷が「優しいところに惹かれました」とか言おうもんなら、「おトキちゃんの何を知ってるん!?」とツッコんでしまうところでした。なにせ我々視聴者は、幼少期から彼女を見守っているのですから!
そして小谷は、おトキちゃんの大好きな怪談を一生懸命知ろうとしてくれます。小谷自身はまったく興味がないようだけれど、まずは学んでみようという姿勢がうれしいよね。小谷、アリかもしれない…と、この時は思っていました。この時は。
一方、ヘブン先生はというと…風邪をこじらせて寝込んでしまいました。ラブコメの王道・看病展開キタ〜! 史実でも、モデルのラフカディオ・ハーンが来日した年は記録的な大寒波だったそう。西洋と違って暖炉もストーブもなく、薄い障子で仕切られた日本家屋…きっと地獄のような寒さだったことでしょう。
体調を崩してすっかり弱気になったヘブン先生の一言が気になるところ。「If I die, don’t be sad. I was just a foreigner passing through.」小谷の訳を借りれば、「たとえ(私が)死んでも悲しまないでください。私はただの…通りすがりのただの異人です」。今週のサブタイトルにもなっている「通りすがり」というキーワード。なんとなく、ヘブン先生は周囲との関係を深くしすぎないようにしているようにも見えます。
おトキちゃんとの距離も、縮まったようでどこか遠い。基本的に明るくフレンドリーなヘブン先生だけれど、いちばん肝心な部分には、誰にも触れさせない。それに気づきつつあるおトキちゃんの、もどかしい表情がなんとも切ないです。その理由を知りたい、と思うなら、それは恋のはじまりな気もするドラ子です。でも、やっぱりまだ「恋愛」って雰囲気じゃないんだよなー!! まだ、名前のない想い。これがどんなふうに恋になるのか、全然想像つかなくて今からドキドキが止まりません。
で、話を小谷の恋路に戻しますと。小谷、おトキちゃんと清光院デートにこぎつけます。はい、かつて傳さまとも銀二郎とも訪れたあの清光院です。怪談・松風の舞台であり、おトキちゃんは3回目の訪問も大喜び! 小谷のリサーチ完璧。しかも、謡曲「松風」まで披露するなんて。たくさん練習したんだね小谷…とドラ子がしみじみしていたのも束の間、小谷から衝撃の一言が待っていたのです。「私…無理です」と。彼なりに怪談を読んでみたけれど、「私にはついていけません」と! 極め付けには「時間の無駄です」とまで!!
おい小谷〜! おトキちゃんの大好きな怪談をそんな風に否定するなんてがっかりだよ(怒)。なんかいい感じじゃない?♡と浮かれていた視聴者にガツンとショックを与える展開、さすが『ばけばけ』ですわ…。がんばったうえで無理だったのだし、ごまかさずに本心を伝えた小谷はある意味誠実なんだけど、こういう若い恋ゆえの残酷さ、なかなかにリアルでした。なぜかフラれたみたいな形になったおトキちゃんがかわいそう(涙)。
いや〜〜早くヘブン先生が日本の怪談を文学に昇華してくれないものか。「古臭い」「ついていけない」と一蹴していた人たちが、「さすがヘブン先生!」って手のひら返す瞬間を見たいものです…。そういえば今週のヘブン先生は、原稿のネタをあとひとつ、悩んでいたみたいでしたね。清光院行ってみたらいいんじゃないですか!? それをネタにしてくれたら、おトキちゃんの気持ちもちょっとは晴れるのではないでしょうか!
おリヨ、君は本気なんだね!? 次週は「ガンバレ、オジョウサマ。」
そういえば、くせつよお嬢様・おリヨはまだまだヘブン先生を諦めていない様子でしたね。先週のデートが不発で、もう懲りたものたとばかり思っていました。思ったよりも本気度が高い。もしかしたら、なんとかしてヘブン先生と結婚したい大きな理由があるのかもなあ。たとえいばらの道であろうと、国際結婚を足掛かりに日本を飛び出したい…とか? 彼女なら、ありえる気もします。さてさて、おリヨに小谷にあとおじじ、2週にわたる三者三様の恋模様はヒロイン・おトキにどんな影響を与えるのでしょうか。ヘブン先生の過去も少し明らかになる予感!?
朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。



