朝ドラ『ばけばけ』今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『ばけばけ』観てますか? ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
先週のレビューはこちら:トキが背負うもの、銀二郎が求める自由。愛しているから、手を離すこともある。|『ばけばけ』第4週
どいつもこいつも差別的〜! 第5週「ワタシ、ヘブン。マツエ、モ、ヘブン。」を振り返ります

これまでのストーリー振り返りから始まり、まさに新章突入!な今週。おトキちゃん&銀二郎の切ない別れから4年の月日が経ちました。おトキちゃん、現在は松江でシジミ売りを仕事にしている様子。相変わらず仕事仕事…な日々のようで、「私は銀二郎か!」と自虐も飛び出します。うーん、これは銀二郎さんのこと、まだ引きずってるのかな。完全に吹っ切れてたら、元夫のことなんて話題にすら出てこないものでしょう。
そんななか早速、あの男が登場しました! オープニング映像でおトキちゃんと仲睦まじく写真に収まっている男、ヘブン先生です。そして東京でおトキちゃんが世話になった錦織さんも再登場。ヘブン先生は松江の学校で英語教師になるために来日、錦織さんはそのサポート的な立ち位置ということです。松江の将来を担う(?)異人さんの到着を住民たちは大興奮で迎えます。
…なんですが、ファンタスティックな日本の風景に夢中なヘブン先生はまったく錦織さんの思い通り動いてくれません! 県知事とヘブン先生の板挟みになって振り回される錦織さんが不憫すぎました。でも「あ〜〜〜〜〜!!」ってなりつつ奮闘する吉沢亮、なんて魅力的なんだ。
登場人物のナチュラル差別ムーブに感じるのは、「いたたまれなさ」。みんなも心当たりない?
そんなコミカルさにクスっと笑える一方で、今週もばっちり不穏ポイントがあるのが『ばけばけ』です。どいつもこいつも、ナチュラルに差別ムーブする姿にとってもヒヤヒヤ。異人であるヘブン先生をエンタメ的に消費する松江市民。そこに暮らす住民の気持ちを考えずに、遊郭街に拒否感をあらわにする錦織さん。ヘブン先生のカタコト日本語を真似して楽しむ旅館のみなさん。どうせ日本語がわからないだろうと、ヘブン先生の目の前で文句言っちゃう旅館の主人などなど…挙げればキリがない!!
でも、これを観て感じるのは「この人たちやばいな」ではないのです。「私も過去に、絶対こういう発言したことがある…」といういたたまれなさ。「差別」って言うともっと能動的で、過激で、悪意のあるものだと思いがちだけれど、実際にはこうやって無意識にやっていることのほうが多いのかもしれない。ドラ子も反省しきり。
まあ、松江をワンダーランドのごとくエンジョイしながら、ずけずけと住民の生活空間に踏み込んでいくヘブン先生もまた、リスペクトが足りないように思うのです。人間って「未知のもの」と対面したとき、相手の気持ちや背景に考えが至らなくなりがちです。よく知らないからって何言ってもいいわけじゃないからね。それは、たとえ対象を肯定的に捉えていたとて同じことです。
そんななかヘブン先生、日に日にいらだちが募ってきたのか、いきなりキレることも増えてきました。モデルである小泉八雲もなかなかの癇癪持ちだったと聞きますが、その片鱗でしょうか。周囲の人たちからしたら意味不明、サポート役の錦織さんも疲労困憊! そこで唯一ヘブン先生の心に寄り添ったのが、他でもないおトキちゃんでした。
「ヘブン先生も人間です。私たちと同じ」。おトキちゃんのこの言葉が、今週のすべてでした。人間だから、不安も緊張もプレッシャーも感じる。それを理解するだけで、ヘブン先生のこれまでの行動も違って見えてくる。握手したときの手の震えからそれを理解したおトキちゃんは、人の気持ちがとてもよくわかる優しい子なのだなあ、としみじみ感じました。「ヘブン先生を人間扱いしていなかった」と、錦織さんも反省。
少し想像を巡らせれば、未知の相手とだってもっとわかりあえるはず。不穏のなかにそんな希望を灯して、物語は次週に続きます。
次週、サブタイからして怖いのだが!? 「ドコ、モ、ジゴク。」
ちなみにヘブン先生、本当は教師じゃなくて新聞記者だったそうです! 専門外なのに住民の期待を一身に受けて、そりゃプレッシャーは重かっただろうなあ。でも、引き受けたんだから仕事はちゃんとやろ? 次週は、ヘブン先生また癇癪を起こしそう。滞在中の旅館を出て家探しを始めるみたいです。そして予告に一瞬、三之丞映ったよね? なんかボロボロになっていたけれど…ドラ子、とても心配です。
朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。



