朝ドラ『ばけばけ』今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『ばけばけ』観てますか? ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
先週のレビューはこちら:ヒロインの出生の秘密が明らかに!波乱の予感に目が離せません|『ばけばけ』第3週
東京で交錯する出会いと別れ。第4週「フタリ、クラス、シマスカ?」を振り返ります

出奔した婿・銀二郎さんを連れ戻しに東京へ向かったおトキちゃん。その費用は、おじじさまが家宝の鎧や刀を売り払って工面したものでした。おそらく、おじじさまによる婿いびりも、銀二郎さんが置き手紙を残して出ていった要因のひとつ。取り乱すおトキちゃんを見て、おじじも思うところがあったようです(でも、遅いよ!!)。
ひょっとしたらおトキちゃんは東京へ行ったまま、もう松野家には帰ってこないかもしれない──そう予感しつつも彼女を送り出したことが、だんだんわかってきます。
一方、東京のおトキちゃん。向かった先で出会った同郷の男子たち(吉沢亮が登場したぞ〜!)がみんな気のいいやつらで。田舎からヒロインが上京するとさ、「都会の洗礼」的にひどいめに合うパターンってあるあるなのでヒヤヒヤしていましたが、ひと安心。なんていうか、「いい人」が出てくるたびに松野家の「ヤバさ」もじわじわ際立っていくよね。普通逆じゃない?(笑)都会の冷たさを視聴者に見せつけて、ヒロインのホームシックを描くとかさ。そのあたりが『ばけばけ』の斬新さだと思っています。
とはいえ、気のいい東京のやつらも、おトキちゃんが大好きな「怪談」を悪気なくディスったりと、ちょっと「ん?」な一面を垣間見せる。逆に言うと、松野家だっていいとこもたくさんあるんだよね。そういうバランス感、『ばけばけ』抜かりない〜。
愛しているからこそ手を離す。前半屈指の名シーンだった、夫婦の別れ
そしておトキちゃんは銀二郎さんとも無事再会。夫婦でおだやかな時間を過ごします。お見合い以来デートもしたことなかったなんて! もうこのままふたりで東京で暮らしなよ〜。
いや〜心なしかすっきりした銀二郎さんの表情といったら。松野家にいたころは朝昼晩と働き詰めで、モラハラおじじもいましたからね…。失いかけていた自己肯定感を東京で取り戻したのかな。みんなの前で「(おトキちゃんとは)もうずっと一緒だと思います」と強気な宣言まで。銀二郎…あの家出てって正解だったんじゃない?(泣)
一方で、おトキちゃんが他の男性に親切にすると不安そうな、嫉妬が混ざったような顔も見せる。今週は表情だけでうならせるシーンがたくさんあって、演出的にも見応えがありました。
どう見たってお互いに思い合っているおトキちゃんと銀二郎さん。そして東京は「やり直せる街」。できることならこのまま夫婦で新しい暮らしを始めたい、その気持ちはふたりとも同じです。
けれど、おトキちゃんは松江の家族を見捨てることができず、銀二郎さんとは別々の道へ…最後にふたりで話すシーンがまた切ないんです。相手を責めるでもなく、強く引き止めるでもなく…愛しているからこそ、銀二郎さんはおトキちゃんの決断を尊重したし、おトキちゃんは銀二郎さんを自由にしてあげたかったのでしょう。
今週はそういう週でしたね。つまり、「愛しているからこそ、手放す」そんな選択もある、ということです。
すべてをおトキちゃんに委ねて東京へ送り出したおじじも、娘の幸せな未来を信じて松野家に託したおタエさんもそうです。人間の心は複雑で、一筋縄ではいかなくて…とにかくみんな、それぞれの道の先で幸せになってほしいです(涙)。
次週、ついに…! 「ワタシ、ヘブン。マツエ、モ、ヘブン。」
そんなこんなでおトキちゃんは松野家に帰宅。牛乳の白ひげつけて泣き笑いの一家がおかしくも切ない! この、ふざけてるのかまじめなのか混乱する感じが『ばけばけ』のいいとこですね。人間って真剣なときほど、はたから見たらだいぶ滑稽だったりする。これをドラ子は「プロ野球・珍プレーの法則」と呼んでいます(伝われ)。選手が真剣に試合すればするほど、珍プレーのおかしみが増す。狙ってウケにいってたら絶対に出ない哀愁、なんか「人生」って感じで愛おしいんです。
とっても苦しい今週だったけれど、次週は新展開が待っている! ついにあの男、ヘブンさんとおトキちゃんが出会うぞ〜!
朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。



