朝ドラ『ばけばけ』今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『ばけばけ』観てますか? ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
先週のレビューはこちら:ヒロインの出生の秘密が明らかに!波乱の予感に目が離せません|『ばけばけ』第2週
先週までが「光」なら今週は「闇」…。 第3週「ヨーコソ、マツノケヘ。」を振り返ります

松野家に婿殿・銀二郎さんがやってきた! 優しくおだやかで働き者、怪談好きでおトキちゃんと趣味も合う銀二郎さん。貧しい生活ながら、ふたりは仲睦まじく幸せそうです。そのうえで、おトキちゃんと別の男性が夫婦になっているオープニングムービー流れ出し、脳がバグります(笑)。
…で、ふたりは幸せそうなんですが、父上&おじじさまの婿いびりがやばい! 松野家の立派な跡取りになってもらうため鍛えているつもりみたいですが、ほぼモラハラな発言も連発でドラ子、引いてます。心優しい銀二郎さんの自己肯定感も下がっていくではないですか(涙)。父上&おじじがマジで良かれと思ってやってるぽいのがなんとも恐ろしいです。
いや〜〜先週までは「貧しいけれど仲良しなほのぼのファミリー」だった松野家の、別の一面がポロポロと露呈していきます。人間とは多面的なもの。同じ人でも、見る角度が変わればまったく違う印象になるし、環境や立場が変われば、それまで見えなかった一面が顔をだす…。人生の光と闇。まさに怪談みたいな展開です。
松野家だけではありません。たとえばおトキちゃんの勤め先の従業員・平井。最初は周囲を気遣う余裕もあったのに、工場の危機にピリついてどんどん高圧的になっていきます。おトキちゃん、そして我々視聴者にとっては「素敵なおじさま」である雨清水家の傳さまも、三男坊の三之丞からしてみたら、けっしていい父親とは言えませんでした。
終わらない不景気、長男は借金を残して出奔、社長である傳さまも病に倒れ、いよいよやばい雨清水家。その不穏さが伝染するように、松野家にも終始、不安げな空気が流れます。やっぱりおトキちゃんは雨清水家の子だったわけですが、その出生の秘密が本人にばれないかと気掛かりなのです。
おい! 三之丞なんてことしやがる! でも…
そんななかですよ、三之丞がやらかしましたよ! おトキちゃんの出生の秘密をポロッとばらして!! おい〜〜〜! まあわかりますよ、終わりの見えない不穏な空気に、積み重なった不満。たまらなくなって言ってはいけないことをこぼす。誰しもありえることだと思います。秘密を抱え続けるのって大きなストレスですからね。漫画『進撃の巨人』でライナーが変なタイミングで突然すごい告白を始めたときも、そんな気持ちだったんだろうなあ(伝われ)。
そして、続く三之丞の言葉が切ない。自分は放置なのにおトキちゃんには目をかける両親に「手放したぶん愛おしくなるなら、だったら私もよそで育ちたかったです」。ここでも「立場の違いによる光と影」がありありと描かれて胸を抉られる気分。もしふたりの立場が逆だったら? お互いにこんな思いをしなくてよかった? 「もしも」を考えるとキリがないけれど、子供は親を選べないからこそ、無限に存在する「もしも」の存在が悲しい。でもそれは、おトキちゃんにとっても同じなんじゃないのかなあ。
けれど、みんなの前で突然真実を知らされたおトキちゃんは気丈でした。「もう知っちょるけん。」と絞り出した言葉は本当なんだろうか。それとも、みんなを安心させるための嘘だったのか。とはいえ、子供は意外と大人の違和感に敏感ですから、「自然とそうなのではないかと」気づいたっておかしくないと思います。だとしたら、それを態度に出さずに松野家のみなさんのことも、雨清水家のおじさまおばさまのことも大切にしていたおトキちゃんは本当に健気すぎると思います…(涙)。「そうなのかもなあ」と思いつつ、事実をはっきりさせないことで心のバランスを保っていたのかもしれない。でもそれが瓦解した今、おトキちゃんはどんな気持ちでいたらいいのでしょうか。
みんなの前では気丈だったけれど、「ひとりになって取り乱したい」と自宅を出るおトキちゃん。結局お友達のおサワちゃんに遭遇してひとりにはなれませんでしたが、ようやく感情を解放して大泣きする姿が見ていてとても悲しく、胸が痛くなるドラ子でした。また何も聞かずそばにいてくれるおサワちゃんが素敵なのよ…。
次週は「フタリ、クラス、シマスカ?」新キャラも登場の予感だ!
ハイパー余談なんですが、ドラ子の実家も松野家みたいにせま〜い家に大家族で暮らしていたんですよ。なのであのプライバシーのない感じ、常に半径1メートル以内に人がいる暮らし、とても共感できます。それが普通だったのでそこまで不満もなかったんですが、ドラ子も「ひとりで取り乱す」ことができなかったな〜と少し懐かしく、切ない気持ちになります。つらかったよね、おトキちゃん。ニッチすぎる感想ですみません(笑)。
そして次週のおトキちゃんは、「やりなおしができる街」東京へ!? おトキちゃんの運命はどこへ向かうのか、来週が待ち遠しい〜!
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。