ついに最終週です(涙)。朝ドラ『あんぱん』を総括させてください!
半年間観続けた朝ドラ『あんぱん』がとうとう最終週を迎えました。第10週から突如スタートしたこの連載も、いよいよ最後かと思うとしみじみ涙…。朝ドラ大好き、OggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、『あんぱん』のツボを最後まで自由きままに語ります!
◆先週のレビューはこちら:どう考えても低予算!? 不安すぎる舞台制作にツッコミが止まらない|『あんぱん』第25週
広がっていった物語が次々とたたまれていくさまは、朝ドラの最終週の風物詩。久しぶりの顔ぶれもあったりしてうれしいけど、やっぱり寂しいですね。アンパンマンはアニメ化し、健ちゃんとメイコはカレー屋を開き、そしてドラ子がずっと気になっていた登美子問題・蘭子&八木さん問題の行末は!? 振り返っていきましょう!
朝ドラウォッチャーの「最終週のツボ」

1. 登美子問題は「決着」することはない。でも、それでいい
先週はアンパンマンのミュージカルが大成功したわけですが、なんとのぶちゃんが撮影した客席の写真にあの登美子が写っているではないですか。驚く嵩。いやいやあのキャパの会場なんだから気づきなさいよ、登美子ってだいぶ目立つぞ?と思ったけど突っ込むのは野暮ですね。きっと初日の緊張で気づく余裕もなかったんだよね、嵩。羽多子さんの言う通り、登美子は本当はきっと、誰よりも作家・やないたかしのファンなのです。素直になれ〜。
でも登美子は最後まで登美子でした。わがままで自分勝手で、言いたいこと言って、本人いわく「ずるく」生きていて、でもどこか愛嬌があって憎みきれない登美子でした。
もしかして幼少期ぶりなんじゃない? 登美子と布団を並べて眠る嵩。「(写真の)母さんが楽しそうに笑ってる顔を見て、なんだか驚いたっていうか、うれしかった」。この言葉がもうすべてだよな。嵩はとっくに、母の帰りをただ信じて待つちいさな子供ではなくなっていた。嵩と登美子の親子関係がわかりやすくハッピーエンドを迎えることはなかったけれど、きっとこの親子は、これだけの時間をかけてこのくらいの距離感がちょうどいいのです。
2. 蘭子&八木さん、ふたりの選ぶ未来。それにしても会議室暗すぎじゃなかった?
八木さんは嵩と出会う前に何かトラウマ級の出来事があったのだろうな…と思っていたけれど、最終週にしてその内容が明らかになりました。戦地で生きのびるために人を殺した過去を、誰にも言えず封じ込めてきた八木さん。涙をこぼしながら想いを吐露する姿に、ドラ子も心が震えました。そんな八木さんを何も言わず抱きしめる蘭子。ところで八木さんの手を指でさすさすしていたのは問題の傘差しシーンのアンサーでしょうか?
これからも八木さんの心の傷が癒えることはないのでしょう。きっと蘭子も。それでも、ふたりは戦争のない平和な世界を作ることを信じて行動し続けるのです。
蘭子は紛争地域の取材へ。八木さんはそんな彼女の背中を押しつつ、手作りの誕生日カードに指輪を仕込んでプロポーズ!? 照れているのか背を向けて「笑うな」と言う八木さん、いいね。「帰ってきたら考えてくれ」「はい!」とだけ交わして出発するのがふたりらしい。「愛する人を置いていく/見送る」はかつて蘭子と八木さんが経験した悲しみのトリガーでしたが、今度は未来の約束を楽しみに待てる、希望のある時間を過ごして欲しいです。
3. アンパンマンが飛び続ける限り、きっとふたりの日々も続いていく
物語のラストは、のぶちゃんと嵩のふたりの時間が丁寧に描かれました。年を重ねても手を繋いで歩き、「のぶちゃん」「嵩さん」と呼び合うふたりの微笑ましさよ。出会ったころにはアホとか、たっすいがーとか、東京に帰れとか、散々嵩に暴言を吐いていたのぶちゃんがずいぶんおだやかになって…。それもこれも、根っからの優しさをもつ嵩の力なのかもね。
ふたりは子供をもつことはなかったけれど、アンパンマンという“我が子”を生み出した。そんなアンパンマンが、今や日本全国の子供たち、さらにはそのママ・パパたちの支えになっていると考えると非常にエモいです。
モデルの小松暢さんはやなせたかし先生よりも早く亡くなっているわけで、『あんぱん』最終週でものぶちゃんの入院・手術が描かれたので…永遠のお別れエンドだったら悲しい!!と思っていたのですが、奇跡的に元気を取り戻したのぶちゃんと嵩の日々は、もう少し続いていくみたいです。
もっと言えば、ふたりが大事に育てたアンパンマンがいる限り、この夫婦の物語は生き続けるのでしょうね。嵩が込めた「生命は受け継がれていく」という想いのように。
最終週、「ツボ」押されまくりました
いや〜それにしても、晩年ののぶ&嵩が飼い始めたワンちゃんがかわいかったー!! ワンちゃんにはちゃんと役名があって、「ボン」というそうです。「メイ犬ボン」じゃん! あの詩、とても好きだった。まさかの再登場を果たした黒井先生&うさ子ちゃん(戦後どんな気持ちで教師を続けていたのか、知りたくないですか?)に世良さん、登美子・羽多子・千代子の謎すぎるスリーショット遺影(そんなんアリ??)、突然登場した石橋蓮司さんなど他にも言いたいことたくさんあるのですが、永遠に語ってしまいそうなのでまたの機会に…一個だけ書いておくと、石橋蓮司さん演じる写真屋さんが、のぶちゃんのカメラを「ドイツ製のカメラ」って言うのがNHKだな〜とじわじわきました(笑)。
さて、来週からは髙石あかりさんがヒロインを務める『ばけばけ』のスタートです。生命は受け継がれ繰り返し、朝ドラも続いていくのです!! また半年間楽しみですねえ。ほいたらね!
【おまけ】今週のあんパン

最終週ということで、新宿まで走って買ってきました。美村屋…じゃなくて木村屋のあんパンです♡ じつは初体験だったんですが、これまで食べたどのあんパンよりもおいしくて衝撃を受けました。酒種だけで発酵させた生地から漂う甘く芳しい香り、クリーミーなこしあんの口当たり。絶妙なタイミングで登場する桜の塩漬けもすばらしいアクセント。いつかは元祖・銀座の「木村家」に行って焼き立てを食べたいです。
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。