朝ドラ『あんぱん』を語りたい!今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『あんぱん』、いよいよ佳境です。やなせたかし先生の妻・小松暢さんをモデルに、“逆転しない正義” 『アンパンマン』にたどり着くまでの愛と勇気の物語を描くドラマ。ヒロインの「朝田のぶ」を今田美桜さん、やなせ先生をモデルにした「柳井嵩」を北村匠海さんが演じます。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、今週の『あんぱん』のツボを自由きままに語りたいと思います!
◆先週のレビューはこちら:ラスボスは“毒親”・登美子か? こじれた親子関係に安易に手を出しちゃダメ絶対
嵩の才能に惚れ込んだ“漫画の神様”・手嶌治虫から、直々にアニメ映画『千夜一夜物語』の美術監修のオファーが舞い込みます。映画は大ヒット! ますますクリエイターとしてステップアップしていく嵩。ですが、そんな彼が今伝えたい想いをたっぷりと込めた作品『あんぱんまん』(の、プロトタイプ)はなかなか評価を得られないようです。
ついにここまで来た!! 第24週「あんぱんまん誕生」を振り返ります
映画『千夜一夜物語』ヒットのささやかなお礼に…と、手嶌治虫が嵩に映画制作の機会を用意してくれました。しかも自腹! トップクリエイターは「ささやか」のスケールもでかい。そして上映された作品はあの『やさしいライオン』。さらに嵩は八木さんの会社から雑誌『詩とメルヘン』を創刊、編集長に就任します。嵩が健ちゃんに「いくつになっても挑戦はできるよ」と言っていたけれど、まさにそれを体現していてすごい。
ちなみに八木さんの会社名はキューリオというらしい。この響きで『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期)を思い出せる人はみんな友達。サブキャラたちの動向はというと、羽多子さんは全国各地へ結太郎さんの足跡をたどる旅へ、蘭子は、「やりたかったこと」として戦争体験を取材する活動を始めました。あと、たくチャンは3度目の結婚もうまくいっていないようです。つらい。
他方、嵩渾身の一作『あんぱんまん』はなかなか売れず。現実受け入れムードの嵩に対し、のぶちゃんは「そのときがきたら、世界中の人が認めてくれると思う」とけっしてあきらめません。その前向きさが、少しずつ何かを動かすのかも…?
朝ドラウォッチャーの「今週のツボ」

1. のぶちゃん、あんぱんまんの“強火オタ”と化す
なんやかんやありましたが、ついに嵩の『あんぱんまん』が雑誌に掲載され、日の目を浴びる日が来ました〜! やったね! おなじみの、丸いお顔を食べさせてくれるアンパンマンではなくて、太ったおじさんがパンを配るというプロトタイプのストーリーです。しかしながら評判は芳しくなく、ヒーローなのにかっこよくないとか、なぜ悪と戦わないのかとか、言われたい放題です。ぐぬぬ。
でものぶちゃんは動じません。なぜなら、あんぱんまんの魅力に絶対の自信を持っているから。今週はとにかくのぶちゃんの「あんぱんまん強火オタ」っぷりがすごい。「私の推しを見てくれ!」と言わんばかりに編集者さんに猛プッシュししたり、子供たちに読み聞かせをして“布教活動”を続けたり。それでも依然としてあんまりウケはよくないのですが…。でものぶちゃんは諦めません! なぜなら、あんぱんまんの魅力に絶対の自信を持っているから!(2回目)。
この作品の良さが、いつか絶対にたくさんの人に届く…と信じて読み聞かせを続けるのぶちゃんは、キラキラしていてなんだか素敵です。やっぱりオタクはね、好きなものについて語っているときがいちばんイキイキするんですよ(褒めてます)。のぶちゃんこれまでいろんなことに挑戦しては、うまくいかず頓挫してきたけれども、今は最高に輝いているぜ。あと、髪ツヤツヤお肌トゥルトゥルで相変わらず美魔女だぜ。木曜日に3年の時が飛んで申し訳程度に歳をとったけれど、還暦近い女性にはどうしても見えない(笑)。
2. 登美子&蘭子の定点観測を報告します。今週は進展なしだけど…
さて、しばらく決着が見えそうにない登美子の動向&蘭子の恋模様をドラ子は引き続きチェックしております。のぶちゃんが強火オタクなら、登美子はまるで「反転アンチ」。あんぱんまんのことも呼吸するようにディスっていましたが、映画『やさしいライオン』はしっかり観に行っているではないですか。なんなら、涙も流していました。登美子、あなた本当は嵩作品の大ファンなんじゃあないのかい…?
よくよく考えたら、あんぱんまんの特徴もかなり細かく把握していましたよね。もしかしてめちゃ読み込んだ? 素直になれ、登美子! でも登美子というキャラクターの魅力はその尖った姿勢の「ブレなさ」なので、急にデレたらそれはそれで不安になりそう(笑)。
蘭子&八木さんはというと、先週までのしっとりエロ…じゃなくて大人っぽい雰囲気はどこへやら、とてもリラックスしたムードで一緒に仕事に取り組んでいます。蘭子がついつい辛口評論家の顔になると、八木さんがそっとたしなめるやりとりは実に自然。あの…ドラ子思ったんですけど、これ、もしかしてすでに付き合ってます…? それとも付かず離れずのいい感じの状態? いずれにせよ蘭子の豪ちゃんへの想いに折り合いはついたの? 詳しい説明が待たれます!!
3. フラグの鮮やかな回収…。東海林さんの「手紙死」がいろいろ衝撃でした
高知新報の東海林さんが久しぶりの登場! のぶ&嵩家を訪ねてくれました。なんでも嵩の全作品をチェックしているそうで、「『千夜一夜物語』のキャラクターはフランスの俳優がモデルやろ」と言い当て、「『チリンのすず』は戦争のむごさを描きたかったがやなあ」と物語のテーマをがっちり捉えます。強火オタク、反転アンチときて今度は「考察系オタク」の登場ですね。いいぞ。
東海林さんの再登場はとてもうれしいのだけれど、見るからに足取りはおぼつかなく、声も枯れ気味で(声の風合いでありありと老化を表現する津田健次郎さん、さすがの一言)、なんだか心配。今にもナレーションが「東海林が亡くなったのは、その半年後でした」とか読み上げそう…とフラグをビンビンに感じていたら、案の定天国へ(泣)。ナレ死じゃなくて、琴子さんからの「手紙死」だったけどね。
琴子さんからの手紙は、東海林さんの訃報を伝える速達でした。速達!? 電話くれてもええんやで!?とまずびっくり。何か事情があったのでしょうか。それとも昔は速達で訃報って一般的だったのかな。教えて有識者。手紙によると、東海林さんはもともと余命いくばくもなく、高知で入院していた病院を1日だけ抜け出してのぶ&嵩に会いに来てくれたのだとか。
ここ、たぶんグッとくるところだったんだと思うんですけど…率直なところドラ子はえ!?となってしまいました。
だって、生死をかけてまで東京に来るだなんて、それこそ電話1本くれればのぶ&嵩は絶対に高知まで会いにいったのにー! 東海林さん、ふたりに心配をかけたくなかったのかもしれない。でもだからこそですよ、本人の死後にその背景をまるっとばらすのってちょっと違くないですか…? ドラ子的にはなんだかモヤモヤが残りました。とはいえ、人生の終わりには本人が後悔しないように、したいことをしてもらうのが正解とも思います。東海林さんとの最期のやりとりは、しっかりとのぶ&嵩に新たな決意のバトンを渡してくれたようでしたね。
次週は「怪傑アンパンマン」。アンパンマンのメディアミックスが始まるぞ!
東海林さんの熱い想いを確かに受け取り、夜通し筆を走らせる嵩。そして、みんなが知っている「あのアンパンマン」がついに誕生! のぶちゃんの布教活動も徐々に実をむすび、その魅力は少しずつですが、確実に伝わっています。まだまだ「顔を食べさせるのは気持ち悪い」などと不評の声はあるものの、のぶちゃんはへこたれません! なぜなら…(以下略)。古川琴音さん演じる意味ありげな新キャラも登場&次週、嵩はふたたびたくチャンとタッグを組んでミュージカルに挑戦するよう。なんだか集大成感あってわくわくです。
【おまけ】今週のあんパン

1913年、フランス・ブルターニュで創業した「ル ビアン」のほうじ茶栗あんぱん。栗あんは完全に裏ごしせず、ほどよく粒感が残っているのがいい感じ。ケシの実をボトムにトッピングして栗っぽく見せるの、かわいいですよね♡ 9月30日までの限定メニューだそうです。
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。