朝ドラ『ばけばけ』今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『ばけばけ』ご覧になられてますか？ ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲（ラフカディオ・ハーン）の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います！
先週のレビューはこちら：こんな朝ドラ観たことない!? 1週間まるっと「スキップ」を描いた衝撃の『ばけばけ』第8週
クセツヨお嬢様あらわる！ 第9週「スキップ、ト、ウグイス。」を振り返ります
ヘブン先生に恋するお嬢様・おリヨ登場。島根県知事の娘で、それ相応の教育も受けているようで英語ペラペラです。ふだんから島根弁を使わず、流暢な東京ことばを話すあたりも、当時としては先進的なマインドの子なのかな？ 自信たっぷりな態度でおトキちゃんに恋のアシストを頼むさまは、なんというか、「一軍女子」な強さを感じます。おトキちゃんもタジタジになってつい引き受けてしまいました。しかし時は明治時代。異人との結婚はいばらの道です。当然、お父様である県知事が許すわけがなく。
ここで県知事の口から、当時の国際結婚の難しさが語られるの、助かる。我々視聴者は「未来人」なので、将来おトキちゃんとヘブン先生が結婚することはわかっている。でも全然関係ないこのタイミングで明治の国際結婚のリアルををさりげなーく説明してくれることで、ふたりに待ち受けそうな困難に対して心構えができるってもんです。
で、近ごろ知事の便利屋と化している錦織さんが恋路の邪魔に奔走することになりました。となると、当然錦織さんはおトキちゃんに協力をあおぎます。おリヨと錦織さんの板挟みになるおトキちゃん、さあどうする!!
まあ結果として、おトキちゃんは錦織さん側につくわけですが。ポッと出のおリヨさまより付き合い長いし、雇い主であるヘブン先生側の人間なんだし、そりゃそうよね。でも一度おリヨに「協力する」と言った手前ずっと気まずそうなおトキちゃんの表情といったら（笑）。おリヨとヘブン先生の遭遇を阻止するためにその場しのぎの嘘でごまかしたり、錦織さんとひと芝居打ったり、いちいちおもしろいです。髙石あかり＆吉沢亮のわざとらしい作り笑顔、たまらん！
そんなこんなで今週もコメディ満載だったのですが、一方でおトキちゃんの心境の変化を感じるような繊細な描写も。ヘブン先生とのデートを目前にして、お弁当に何を入れたらいいかおリヨが相談に来るのですが…。ここで錦織さんはデートを台無しにするために、ヘブン先生の大嫌いな糸こんにゃくを勧めます。その瞬間、暗い顔になるおトキちゃんをドラ子は見逃しませんでしたよ。恋路の邪魔というミッション成功よりも、ヘブン先生に嫌な思いをさせたくない──その気持ちが前に出ているように見えました。ずっとコミカル小芝居顔をしていたからこそ、こういうふとした時の「本音の表情」ってすごく胸にきます。
結局阻止できなかったヘブン先生＆おリヨのデート中、気が気でないのか相撲の「てっぽう」を繰り返すおトキちゃん（父上も以前やってましたね）。そのソワソワは、ひょっとして恋のめばえなのか…？ 正直まだラブではないんだろうけど、少しづつ、ヘブン先生を大切に思うようになってきている。そんなふうに感じます。おトキちゃんが生けた花をヘブン先生が褒めてくれたときも、その花をスケッチに残しているのを見つけたときも、内側からにじみでるようなうれしそうな表情をしていて。そのあと初めてスキップが成功するのもいいですよね。だってスキップは、「上機嫌なときの歩き方」なのですから。今までどこか不気味に見えていた松江の夜の灯りまで、途端にキラキラ見えてきたのもグッときました。
おじじにも春の訪れが…？ 「伴侶を失ったあとに恋をする」その意味を考える
そして今週のもうひとつのハイライト、おじじの老いらくの恋。年甲斐もなく浮かれているさまがかわいらしくもあり、ちょっと鬱陶しくもあり（笑）。妻と死別してから数十年、まさかこんな日が来るとは本人も驚いてるみたい。すごいな〜と思うのが、おじじの恋が始まることで、この世界に「伴侶とお別れしてから好きな人ができる」ケースがありえるというエビデンスになるわけです。同じくおリヨの登場で、「異人さんと結婚する」という選択肢が現実に存在することも示される。こうした何気ないシーンの積み重ねが、この先のおトキちゃんの進路により説得力を持たせるんだろうな、と作劇の妙にうなります。
あと今週気になったこともうひとつ！ 酔ったヘブン先生がつぶやいていた「ウグイスがメジロなら 私もメジロなんだろうか？」という言葉。みんながウグイスだと思っていた小鳥が実はメジロだった、というシーンを受けての台詞ですが、ヘブン先生はもしかしたら自身の経歴詐称をまだ気にしているのかな…。言葉の壁もあって、ヘブン先生の本音ってまだまだ見えない。そこに触れる瞬間を、楽しみに待ちたいです。
次週は、さらに恋愛ムードが加速する!?「トオリ、スガリ。」
恋は朝ドラの加速装置♡ といってもヒロイン・おトキちゃんの恋が動き出すのはまだまだ先かな？ 今度はおサワちゃんにいい感じの人が現れるようですよ〜！
朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」（通称・朝ドラ）をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』（2019年度後期放送）。
