朝ドラ『ばけばけ』今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『ばけばけ』観てますか? ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
先週のレビューはこちら:地獄しかないんか!? しんどすぎるシーンの連続に震えっぱなしの『ばけばけ』第6週
朝からヘビーな家族会議勃発! 第7週「オトキサン、ジョチュウ、OK?」を振り返ります

雨清水家のおタエさん&三之丞親子の地獄のような落ちぶれっぷりを目の当たりにし、ふたりを救うため「異人の女中」=ラシャメン(洋妾)になる決意をしたおトキちゃん。家族に心配をかけたくないのでしょう、「花田旅館で働く」と嘘をつき、事実を隠してヘブン先生宅に通い始めます。
もう後戻りはできない…。自分が犠牲になることで、手にした破格の給料。なのにこの期におよんで三之丞は「いくら困っていてもおトキから金なんか(受け取れない)」とか言いだすしまつ。プライド守ってる場合か!!
ここでふたつめの嘘をつくおトキちゃん。「このお金はおじさま(三之丞の亡き父・傳さま)からお預かりしたお金」だと、どうにか三之丞を説得してお金を渡します。この一連のシーンが本当に切なくて苦しくて…。どれだけ切実な思いだったんだろう。嘘をついた罪悪感と、これで三之丞とおタエさんを救える、という安堵。ラシャメンになる不安と覚悟。さまざまな感情が複雑にからみあったおトキの表情は、胸を抉るものがありました。髙石あかりさん、本当にすさまじい俳優です。
でもさー、三之丞がさー、「あ、そうなの? だったら…」みたいな感じで受け取る姿に「おい!」とツッコミを入れずにはいられないよね。冷静に考えればそんなわけないだろう、三之丞。せめて「ありがとう」くらい言いなさい、三之丞。でもこれこそが、世間知らずの三之丞ぼっちゃんなのだ。
毎週誰かの嫌〜な面が露呈する『ばけばけ』、今週は三之丞のターンでしたね。その後、おタエ&三之丞の暮らしがまったく好転していないのを見てますます愕然としましたもん。おトキちゃんから受け取った大金のこと、おタエさんに隠してるじゃん! これは、朝ドラ名物「ダメ男が大金を持ち逃げする展開」が来るか?とヒヤヒヤするドラ子でした。結果として大丈夫だったんだけど、正直まだ油断ならねぇ。頼むぞ三之丞。
でも、やっぱり嘘はばれてしまうもので…
さてさて、ラシャメンを始めたおトキちゃんに話を戻します。やはり、嘘をつき続けるってのは無理があるもの。少しずつ露呈する違和感に、母・おフミが気づかないわけがなく。おトキちゃんがヘブン先生の女中になった事実は、あっという間に家族にばれてしまいました。おフミさんの名探偵っぷりはすごかったですね。母には隠し事ができない。ドラ子も身に覚えがある。
いつもおだやかで優しいおフミさんが「お金より大事なものがあるがね!」とおトキちゃんに怒りをあらわにする姿、震えました。なんだか見てるこっちまで10代20代に戻って、母親に嘘がばれてめちゃくちゃ叱られている気分(涙)。こうやって観る者の遠い記憶を呼び起こすドラマは、いいドラマです。
まあ結局、ヘブン先生が求めていたのはラシャメンではなく、本来の「女中」、つまり単なる家事手伝いだったことがわかりひと安心、となったわけですが。その時のヘブン先生の「ダキタクナイ」がパワーワードすぎて(笑)。それに対して「失礼だぞ!」と憤る松野家にも笑った。こうやって適度にクスっとさせてくれるの、本当に助かります…。「おかしみ」があるからこそ、つらい局面も乗り越えられるというものです。
しかしながら、これでめでたしめでたし!とはいきません。やがて、おタエさん&三之丞の窮状という、もうひとつの隠しごとも明るみになり。三之丞本人にも、渡したお金はおトキちゃんの稼ぎだったことが伝えられます。
いや〜もうこの家族会議が朝から重くて重くて…
おフミさんはおタエさんへの嫉妬心をおトキちゃんにぶつけるし、この期におよんで(2回目)三之丞は「やっぱり自分の力で稼ぎたい」みたいなこと言うし、どいつもこいつもワガママだな!!と思っていたら、ついにおトキちゃんの思いが爆発!
「お断りしたのも、お引き受けしたのも、みんな家族のためだけん!」「私を見て。自分を捨てたの。自分を捨てて、家族のためにラシャメンになろうとしたの」。おトキちゃんの並々ならぬ覚悟と家族への愛。迫真のカタルシスが、おフミさんの気持ちを動かし、そして三之丞をようやく、ようやく少しだけ変えるのでした。絞り出した「ありがとう」、ドラ子はその言葉を待っていたよ〜!
来週は「スキップ」が鍵となる…? 「クビノ、カワ、イチマイ。」
おフミさんが味方になってくれた瞬間にポロリと流したおトキちゃんの涙、たまらなかったな。それまで張り詰めていた表情がグッと崩れて、ひと粒涙がこぼれるわけです。やはり髙石あかり、すさまじい。
そんなわけで、おトキちゃんが嘘偽りなく「女中」として働くことが家族にも認められました! 松野家と雨清水家、ふたつの家庭を支えていくことになります。苦しい展開が続いた2週間だったけれど、最後には憑き物が落ちたように明るい雰囲気を取り戻してホッとしました。ヘブン先生のおだやかな笑顔もよかったですね。今まで「得体の知れない異人」だったヘブン先生の、人間らしいところがもっとこれから見えてくるとうれしいな。
ただね〜、和気あいあいと笑う松野家の背景で、輪に入れてない三之丞がちょっぴり気になりましたね。彼が本当の意味で変われるのか、過去の自分を「捨てる」ことができるのか、なんだかまだまだ心配です。
朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。



