役者としては「恥ずかしい」話ですけど、僕は意外と役に引っ張られるらしくて
2026年3月から開演する丸山隆平さん主演のNAPPOS PRODUCE 舞台『oasis』。この作品との出会いには、丸山さんらしい(?)微笑ましいエピソードが。
丸山隆平さん(以下、丸山):「人生で大好きな映画がある」。かつてMVを監督してくださった山田佳奈さんと、なにげなく情報交換をしていたなかで、こう薦めてくれたのが韓国映画『oasis』でした。本当にすごい映画で、山田さんは「舞台でやろうかなと思ってる」と言っていて。僕は「いいですね!」「観に行きます!」なんて話しながら、あの役は誰がやるんやろうと思っていました。だって、いい意味でも悪い意味でも「ヤバい」のが、あの映画。主人公の男性はまともなのかそうじゃないのか、絶妙なところで存在していて、そしてヒロインは想像を絶する表現力で。
しばらくたって、事務所から「次の舞台は『oasis』」だと聞いたとき、「いやいや、あの作品は山田さんが演出されるから」。なんて言っていたら、なんとその作品だった(笑)。なんだか、よくわからないモニタリングみたいな感じになっちゃいました。

Story/ひき逃げ事故を起こした兄の身代わりとなり、服役していた青年ジョンドゥ。刑務所から出所し、家族のもとへ戻るものの、みんなからけむたがられていた。ある日、事故の被害者家族のアパートを訪れた彼は、寂しげな部屋で一人取り残された女性コンジュと出会う。脳性麻痺を持つコンジュは、部屋の中で空想の世界に生きていた。二人は互いに心惹かれ合い、純粋な愛を育んでいくが、周囲の人間は誰一人として彼らを理解しようとはしなかった…。
――で、主演に抜擢されての感想は…?
丸山:いやぁ、怖いです。これだけの名作ですから。と同時に、生半可な覚悟ではできないと、身構えました。でも考えてみれば、主人公のふたりは「ただ恋をしているだけ」。それなのに偏見や好奇の目を向けられてしまう社会の現実があって、それゆえに生きづらさや苦しさがあって。だから、こうした作品が生まれるんだということは、理解できます。
僕だって、表現する仕事をしていれば、悩んだり憤ったり、生きづらさを感じることは、少なからずあるものです。きっと、それはだれでも同じで。そんなときに、どういう行動に出るか。自分に問いかけられている作品でもあると感じます。
演じるジョンドゥは、すごく優しいし素直だけど、ゆえに道を踏み間違えてしまうところがある人物です。きっと、ものすごくピュアなんです。でもピュアさは時に人を傷つけてしまう。そんな人物かな。――って、こんなふうに俯瞰している状態では、まだ全然ダメなんですけどね。役者としては。

――「役者としては」、どのように表現されていくのでしょうか。
丸山:僕のなかにある「病的少年性」みたいなものが、うまく利用できたら。そう思っています。気持ちだけは、小学生ぐらいに戻ろうかなと。そして、自分の心がどういうふうに形を変えるのか、楽しみにしています。
役者としては「恥ずかしい」話ですけど、僕は意外と役に引っ張られるらしくて。たとえば、映画の撮影期間中に行きつけのバーに行ったら、「一瞬誰かわからなかった」って言われたり。それまでは、他の役者さんが「役が抜けない」なんて言っていたら、「それ、言いたいだけやろ」って思っていたのに、自分がそうなってる(笑)。まあ、役者としてはうれしいんやけど、恥ずかしいし、なんだか怖いし。
それに、今回のジョンドゥの役が抜けずに僕が同じような行動とってしまったら、それこそ問題になりますから。そこまでは大丈夫だと思うけど、もしできるんやったら、それくらい深く潜りたいな。
あ、「役が抜けない」とか恥ずかしいので、ここだけの話にしといてください。

舞台は、いろんな感情を共有できる場所。日常よりも豊かな場所
――それでも役者の仕事…特に舞台は、どんなところに惹かれるのでしょうか。
丸山:普段は丸山隆平としての日常を生きているけれど、舞台の上では別の人物になる。それは、ときに社会に順応していない人だったり、許されない行動だったりするけれど、エンタメを通して、「もし自分だったら」と考え自由に体現している感じです。むしろ、舞台上のほうが人間臭くて、現実の自分が擬似なんじゃないかって思うぐらい。いや、現実世界でだって、人間臭くいたいとは思いますよ。でも、あまりにも人間臭すぎると、キツいこともあるじゃないですか。だから、みんな思っていることを言えずに腹のなかに溜め込んで、それをどう処理していいか悩みながら生きている。僕だって、そうです。
でも、それが悪いわけでもありません。口をつぐみながらも真面目に生きていないとダメなのが社会だし、そうやって懸命に生きている人は、美しいし素晴らしい。一方で、すごく苦しいな、とも思ったり。
そんな人たちが、芝居を観ることで救われたり、自分への戒めになったりするのが、舞台のいいところ。日常では声を大にして言えないことが、お芝居のうえでは成立していて、観た人はそれに対して感想を言い合ったりもできます。
だから舞台は、僕にとって痛みや喜び、いろんな感情を共有できる場所。日常よりも豊かな場所だという気がします。わっ、だんだんアツくなってきちゃった(テレる)。
――一方、アイドルとしてはさまざまな活動と長い時間を経て、気持ちの変化もあったのでしょうか。
丸山:僕なんて、まだまだアリンコです。いや、それはアリンコに失礼か。永ちゃん(矢沢永吉さん)なんて、芸歴50年を超えましたからね。まだまだここからです。
僕なりに感じているのは、アイドルはファンの方々によって、お芝居は演出家やお客様によって、形を変えていくものだということ。それは既に沢山経験してきたので、これからは、よりその精度を上げたり、掘り下げていきたいです。
それは、グループ活動も同じこと。順調なときも、そうじゃないときもあって、それを繰り返しながら今、これまでにないいい空気で、強く結びついていると感じます。お互いが、それぞれのキャリアの中で、認め合いながら、気づかい合いながら、もっと強く、そしていいものをつくっていく。今「グループ」っていいなって、すごく思います。だから、ひとりの活動も頑張れる。ひとりの仕事が大変でも、孤独じゃない。超ラッキーな芸能生活やと思ってます。

――では最後に。共演される菅原小春さんとは、どのようなセッションになりそうでしょうか?
丸山:初対面のときから、ソウルメイトだったんじゃないかというくらい、お互い同じものを感じている気がしています。逆に、息が合いすぎて怖いというか。
今思っているのは、舞台上では彼女のほうが体の負担は大きいので、期間中、サポートできることはなんだろうということ。パートナーとして、何か支えられたらと思います。
全方向に配慮をしながらも、自身の役目は120%まっとうする。こんなことができるのも、経験を積んできたからこそ。自身は「いつまでも中堅でいたいのに」と言うけれど、仕事へ向かう背中は、人に刺激と勇気を与える余裕と貫禄さえ漂い…。それを照れて隠しながら去って行くのも、丸山さんらしさなのでした。
NAPPOS PRODUCE 舞台 oasis
韓国を代表する映画監督の一人、イ・チャンドンが手掛け 2002 年に公開された韓国映画『oasis』をもとに舞台化。物語の主人公・ジョンドゥを演じるのは、SUPER EIGHT の丸山隆平。家族に疎まれた前科三犯の青年という難しい役どころに挑みます。そしてジョンドゥと心を通わせるコンジュを演じるのは、菅原小春。ダンサーとして世界で活躍する菅原が、脳性麻痺を患い日常生活がままならず、空想の世界で自由に生きる女性をどう演じるのか期待が高まります。
原作:イ・チャンドン
翻訳:みょんふぁ
脚本・演出:山田佳奈
出演:丸山隆平 菅原小春
田中俊介 岩本えり 富山えり子 中原三千代 武藤晃子 久保貫太郎
池田遼 石森美咲 上ノ町優仁
深水元基 水橋研二
東京公演:2026年3月14日(土)~30日(月) サンシャイン劇場
大阪公演:2026年4月4日(土)〜12日(日) 森ノ宮ピロティホール
愛知公演:2026年4月17日(金)〜19日(日) 東海市芸術劇場
撮影/高木亜麗 スタイリスト/袴田能生(juice) ヘア&メイク/NOBU(HAPP’S.) 取材・文/南 ゆかり

丸山隆平
1983年11月26日生まれ、京都府出身。2004年にCDデビュー。SUPER EIGHTではベースを担当。グループ活動と並行して俳優としても多くの作品に出演。近年の出演作に、ドラマ『着飾る恋には理由があって』『FOGDOG』、映画『泥棒役者』『金子差入店』、ブロードウェイミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』、舞台『ハザカイキ』『浪人街』『震度3』『日本対俺2』など。FM COCOLO「Groove-Method」では、レギュラーDJを務める。2026年5月全国公開の映画『名無し』への出演を控える。



