朝ドラ『ばけばけ』今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『ばけばけ』ご覧になられてますか? ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
前回のレビューはこちら:目に見えない不安に右往左往。それこそが“呪い”の正体かも!?|『ばけばけ』第22週
第22週「アタラシ、ノ、ジンセイ。」を振り返ります

アメリカで出版されたヘブンさんの日本滞在記は大ヒット! 第二弾として、今度はフィリピン滞在記を執筆しないか?という打診が本国から届きます。近ごろ日本には「書くことがない」とスランプぎみだったヘブンさんにとってはまたとない好機です。そのうえ、条件も申し分ない。作家としては、断る理由などありません。
けれどオファーを受けるなら、家族のことはどうしたらいいのでしょう。この時代の国際結婚では、なんらかの都合で夫が帰国→そのままお別れ、ということもめずらしくなかったよう。同僚夫婦のロバート&おランさんも「それが普通でしょ?」って感じで、とくにネガティブにも捉えていないみたい。現代の価値観からするとちょっと衝撃です。
だいぶ前に島根県知事が言ってたけどさ、当時は異人と結婚する=日本国籍を失うことでした。ゆえに、国際結婚の多くが事実婚だったことも背景にあるのかもしれません。おトキちゃんとヘブンさんも、法律上では結婚の手続きを踏んでいないんだよね。
とはいえ、過去の心の傷から、家族のつながりをとても大切にしているヘブンさん。そう簡単には、「いい話なんでひとりで行ってきます!」とはなりません。けれど未知の国・フィリピンにはやっぱり興味津々。どうにかおトキちゃんだけでも一緒に来てもらうことはできないか。フィリピン行きの話はひとまず伏せつつ、その可能性を模索すべくおトキちゃんへの英語指導が始まります。ですが…
おトキちゃん英語下手すぎ問題
おトキちゃん、あまりに英語の才能がない! 書生の丈&正木も気まずい顔になるレベルです。やる気だけはあるようですが、Hatは「ハタ」だしThank youは「センキョー」だし、発音もリスニングも壊滅的です(涙)。なぜか「I want to be with you(正木訳:あなたとずっと一緒にいたい)」だけやたら上手なのが笑えるんだよな。さすがにヘブンさんも匙を投げそう!! これはもう、家族は日本に置いていくしかないのでしょうか…。
そんなおトキちゃんですが、先週ラストに引き続きずっと眠気が消えません。さらにはごはんが食べられなくなり、立ちくらみもおこして…どう考えてもおめでたフラグ! 松野家のみなさんが妊娠についてあまり知識がなかったこともあって確定まで時間がかかりましたが(そういえばおトキちゃんは養女だった。すっかり忘れてました)、やはりご懐妊でした! 喜びでいっぱいの松野家。けれどおトキちゃんは「ヘブンさんにはまだ言わないで」と。
実はヘブンさんのフィリピン行きオファーをおランさん経由で知ってしまったおトキちゃん。本当は行ってほしくない、日本でずっと家族一緒にいたい。けれど彼のやりたいことを、止めることはしたくない。ヘブンさんが執筆にかける熱意を、エネルギーを、その背中をずっと見てきたおトキちゃんが誰よりもよく知っているのです。お腹に赤ちゃんがいることがわかれば、きっとヘブンさんを迷わせてしまうでしょう。
子供を授かった喜び、けれどそれをヘブンさんと分かち合えない苦しみ。離れ離れになるかもしれない不安、でも彼が「書く人」であることを応援したい気持ち──さまざまな感情がないまぜになったおトキの表情に、ドラ子も胸が苦しくなります。観ているこちらは「大丈夫、ヘブンさんは絶対に赤ちゃんとの暮らしを選ぶよ〜」と思いつつ、そもそもこうして二者択一になってしまうことがつらいんですよね。どちらかを選ぶ=どちらかを「諦める」ということが、じわじわと人を苦しませることもある。
…なんですが、おトキちゃんの妊娠を知ったヘブン先生は想像以上の喜びの爆発させっぷり! 「ヤッターー!」と大はしゃぎです。フィリピン行きのことはすっかり頭から吹き飛び、迷いなく「日本で家族と暮らす」一択! 最初から二者択一なんかじゃなかったんや(涙)。「I want to be with you.」ふたりはこれからも共にいることを確かめ合い、新しい未来へと踏み出すのでした。単なるギャグ要素だと思っていたこの英文に泣かされるなんて…。おトキちゃんたらず〜っと英語下手くそだったのに、ここにきて血の通った発音をするではないですか! 初めて、「英語」で、同じ気持ちを分かち合ったおトキちゃんとヘブンさん。伝えたい思いがあるからこそ、言葉はモノになるというものですね。世界の見え方がガラリと明るくなるような、美しい名場面でした。
それにしても、かつてのヘブンさんだったら、妊娠を黙っていたことに「ドウシテ!?」って怒ったんじゃないかな。嘘や隠し事が嫌いな彼ですから(自分のフィリピン行きを伏せていたのは棚に上げる)。でも今回、おトキちゃんがヘブンさんのために思い悩み、隠していたことを自然と察します。おトキちゃん本人が何も言わなくとも、です。これにはヘブンさんの変化を感じてグッときましたし、先々週のゆるすぎた「焼き網紛失事件→丈と正木の優しい嘘」のくだりもさりげなく生きていることに気づき、「やられた!!」と膝をたたいたドラ子です。日々のちいさなちいさなできごとが、知らぬ間に人を形作っていくんですね…。
あの男が帰ってくるぞ! 次週の『ばけばけ』は…「ゴブサタ、ニシコオリサン。」
数か月後、おトキちゃんは元気な男の子を出産。親になったふたりは、まるで新しい人生が始まったかのような気持ちです。単身フィリピンに行くよりも、執筆したいことがずっと増えるんじゃない? さてさて、前述の通りおトキ&ヘブン夫妻は事実婚。子供のために法的にも結婚の手続きをしよう!と決意するふたりですが、島根県知事が言ってた通りなかなか大変な道のりになるんじゃないかな…。物語のなかでも、後半の山場になるのかもしれない。
そしてみなさん、ついにあの男が再登場しますよ。に、に、に、錦織さん!! 予告の後ろ姿だけでも元気なさそうだったけれど、この数年間どんなふうに過ごしていたのでしょうか…?
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。



