朝ドラ『ばけばけ』今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『ばけばけ』ご覧になられてますか? ヒロイン・松野トキを演じるのは髙石あかりさん。「耳なし芳一」、「ろくろ首」、「雪女」──日本人なら誰もが知る怪談の数々を文学へと昇華した、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツがモデルです。怪談を愛する夫婦の、何気ない日常を描く物語。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、毎週『ばけばけ』にグッときたポイントを自由きままに語りたいと思います!
前回のレビューはこちら:親友との別れ、もう戻れない青春の日々|『ばけばけ』第19週
第20週「アンタ、ガタ、ドコサ。」を振り返ります

松野家、熊本へお引越し。ヘブン先生を追って松江中から熊本の高等中学校へ転学した丈&正木も書生としてジョイン。おトキちゃんが銀二郎とお別れするまでを第一部、ヘブン先生と出会い、夫婦になり、松江を離れるまでを第二部としたら、まさに第三部・熊本編の開幕。新展開だ!…と思っていたのですが。まあ、ある意味かなり新展開なのですが(笑)。
生活は豊かになったし、家事は働き者の女中・おクマちゃんが一手に担ってくれる。すると…松野家の面々は暇を持て余し、退屈でどうにかなってしまいそうに。貧乏で働き詰めだった期間が長いせいか、のんびり過ごすことに慣れないのでしょうか。ドラ子もかつて激務に疲弊→転職して毎日17時帰宅になった時、何をどうしたらいいかわからなくなって困ったことを思い出す。しみじみ。
ヘブン先生はというと、熊本が「オモッテタノト チガウ…」。執筆もなかなか進まず、どう見てもスランプ。落書きばかりがはかどります。
いや〜先週の、錦織さんとの涙、涙の別れはなんだったんです!?というまったり具合。しかしこの「大きな決断」のあとに意外と何も起こらない、というのがなかなか生々しくて残酷で、おもしろいと思います。悩みや葛藤・別れとトレードオフで人生が大きく変化するとは限らないんですよね。(また私事で恐縮なんですが)ドラ子は田舎から一念発起して上京したクチなんですけども、それだけではな〜〜んにも変わらなくて愕然とした記憶が蘇りました…。
退屈に苦しむ松野家を見ながら、自身の人生を振り返っているのが我ながら謎なんですが(笑)、「あの時の気持ち」を不意に思い出すほどに、登場人物の一喜一憂がリアルに感じられるのかもしれませんね。
とはいえ、おトキちゃんの心の傷はすっかり癒えているように見えるし、これだけでも熊本行きは大成功と言えるはず。それに人生において「決断」が正しかったか否かっていうのは、もっと長いスパンで明らかになっていくものです。ドラ子でいうと、17時帰宅にはあっという間に慣れたし、結果として上京は大きなターニングポイントだったと、今は心から言えるし。きっと松野家もその「途中」にいるんじゃないかな。
まさかの…父上が朝ドラ名物「持ち逃げ」を
そんななか、目を疑う光景ですよ。ここに来て、朝ドラ名物「金銭の持ち逃げ」が勃発。な、な、なんと父上が、こっそり札束を持ち出しているではないですか! それヘブン先生が稼いだお金やで? 見るからに怪しい男・荒金九州男(演じるのは夙川アトムさん)に大金を預け、小豆相場にぶっ込む父上。うさぎ相場で大失敗して借金こしらえたこと忘れたんか! 本当にがっかりだよ!!
ちなみに父上の動機は、長屋時代のようなヒリヒリした焦燥感を味わいたかったから、でした。満たされすぎて生きた気がしないらしい。いやいや家族まで巻き込むのはまじで迷惑だから!
これまで、数々の朝ドラで「持ち逃げ」が大きな困難をもたらしてきました。これが松野家の退屈に悪い意味で風穴を開けてしまうのか?と思いきや…小豆投資、まさかの大成功、お金は5倍に。思わず「んなわけあるかい!」と突っ込んでしまいました(笑)。荒金九州男、まじで有能なんかい!
まあ、朝ドラにおいて夙川アトムさんが悪人だったことはないので、「もしかしていい人かも?」とドラ子もうすうす思ってはいたのですが。いや〜朝ドラ的「ベタ」を裏切っていくスタイル、斬新。そんなわけで、父上の持ち逃げが物語の転換点になることはありませんでした!
…ですが、こういうちょっとした悪事はバタフライエフェクト的に空気を変えていくわけで。今度は、松野家内で「焼き網紛失事件」が発生。家族の誰かが盗んだのでは?という疑惑が巻きおこり、お互いがお互いを疑う負のループに。松野家をギスギスした空気が包みます。つらい。日々に忙殺されていたら焼き網くらいでここまで必死にならないのかもしれないけれど、いかんせん暇だと余計なことも考えてしまうのでしょうか。
なんやかんやありましたが、最終的には丈&正木が機転をきかせ、全員を救えるようにひと芝居うちます。思惑は成功し、それぞれが抱えていたモヤモヤは晴れて、一件落着。ヘブン先生だけはふたりの優しい嘘を見抜き、その気遣いに感銘を受けるのでした。この出来事が先生にインスピレーションを与えて、ついに止まっていた筆も動き出します!
──ちなみに、焼き網はキッチンの隙間に落っこちてみたいです。ズコーッ。松江でもあった「隙間」ネタがここで再登場するとは!! まるでコントの伏線回収みたいでしたね!
次週、おトキちゃんが呪われる!? 「カク、ノ、ヒト。」
はじめこそ「今週、ゆるすぎないか?」と心配にもなりましたが…(笑)。一見何もない日々の繰り返しにも、事件があって、感情が動いて、少しずつ何かが変わる。人生ってドラマティックなことばかりじゃない。でも、劇的な出来事だけが人生を進めるわけではない。「日常」の尊さを丁寧に表現する『ばけばけ』の美しさを感じました。
モデルとなった小泉セツ&ラフカディオ・ハーンには、熊本生活で2年が経ったころに第一子が誕生しているそうです。熊本編=子育てパートと位置付けて、それこそドラマティックにおトキちゃんが母になる物語を描いたっていいのに、あえてそれをしないのが今作らしくていいな、と思います。人生は基本的にもどかしい日常の繰り返し。でも、それでいいのです。
子育てパートもぜひ観たいけども〜! 少なくともまだ先になりそうです。次週は突然のホラー展開!? 『ばけばけ』のことだからきっとそれだけじゃないはず…。
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。



