「演歌歌⼿になります!」は本当だった
6⽉10⽇から開幕する舞台『俺節』。松⽥元太(Travis Japan)舞台単独初主演であり、9年前に安⽥章⼤さん(SUPER EIGHT)が演じた役を蘇らるという⼤役を担います。演じるのは、演歌歌⼿を⽬指して⻘森から上京したコージ。囲み取材では、「Travis Japan を辞めて演歌歌⼿になります!」と⾔って、いつものように笑いを誘っていた松⽥さんですが、直後のゲネプロでは、どこから⾒ても「本物の」演歌歌⼿に豹変。先ほどの⾔葉は単なるリップサービスではなかったのです…。
波とカモメの⾳が流れ、上京前の⻘森から物語は始まります。松⽥さんは、練習を重ねたという津軽弁を上⼿に操り、全⾝で純朴さを表現。そのあと舞台は東京に移り、演歌の先輩たちとの交流、都会の⽇陰で必死に⽣きる⼈々との出会いながら、夢を追いかけます。

はじめは未熟ながらも好きな歌を歌うだけのコージですが、松⽥さんが歌い始めると、その⼤きな可能性に期待が膨らみます。荒削りだけど繊細さもある、未熟だけど優しさもある、そんな歌声は、慣れない東京でも徐々に聞く⼈の⼼を掴んでいき…。

物語が進んでいくほどに、そしてコージが歌い続けるほどに、その歌声は厚みを増し、松⽥さんが「苦労した」と⾔っていた「こぶし」も存分に発揮。千昌夫、⼩林旭、瀬川瑛⼦といった⼤物昭和演歌の曲を次々と披露します。
その中でも、コージの相棒でありギター弾きのオキナワ(稲葉友)の演奏で歌う⼩林旭の『北へ』は、前半で⼼を揺さぶられる場⾯のひとつ。魂の奥底から搾り出すものは、「歌」であると同時にコージの「叫び」。おしゃべりが上⼿ではないコージは「⾔いたい⾔葉がうまく⾔えない時に、気持ちが演歌となって出てくる」のでした。

キャスト全員が「当たり役」
演歌好きの純朴⻘年から、仕事としての演歌歌⼿に移り変わっていく様⼦は⾒事。繊細さは残しながらも、声の⼒強さ・歌詞の説得⼒ともにどんどん膨らみ、同時にプロとして歌うことの葛藤へとストーリーは展開します。
ほかにも⾒どころはたくさん。舞台映えするスタイルの良さと半年前に始めたとは思えないギター使いを魅せる稲葉 友(オキナワ役)。歌もギターも想像以上の腕前で驚かせた六⾓精児(流しの⼤野役)。全員が個性のかたまりで、全員が「当たり役」という舞台は、そうあるものではありません。



コージの歌に「⾜りなかったもの」とは
後半で、ある⼈物が発する「詩やメロデイだけでは歌ではない」「⼼に響いて『歌』になる」という重要なフレーズ。それを証明するかのように、最後にコージが歌い上げるのが『俺節』(オリジナル)です。コージは「⾜りなかったもの」に気づき、物語はクライマックスへとつながります。
「歌」があることで、こんなにも⼈⽣はドラマチックになり、舞台は⾒る者を惹きつける。でも、そこに演じる者の深い理解と感情がなければ成し得ないこと。楽しいだけでない、悲哀も葛藤も後悔も避けて通れない「演歌な」⼈⽣を、松⽥さんはたった27年の⼈⽣で本当に全部体験しているのでは(それどころか、⼈⽣何周⽬?)、と思わせる説得⼒でした。

舞台『俺節』
歌⼿を⽬指して⻘森から単⾝上京したコージ(松⽥元太)は、抜群の歌唱⼒を持ちながら、極度のあがり症のせいで、実⼒を発揮できずにいる。お調⼦者のギター弾き・オキナワ(稲葉友)は、コージが抱く演歌へのたぎるような情熱にほだされ、⾃分が根城とするドヤ街「みれん横丁」に連れていく。と、偶然そこにヤクザから逃れようとする外国⼈⼥性、テレサ(キム・チャンミ)が駆け込んでくる。持ち前の正義感から彼⼥を助けようとしたコージは、ボロボロに殴られた末、無我夢中で歌い出し、周囲を圧倒する。
テレサは不法滞在中のストリッパー。彼⼥への想いが募れば募るほど、コージの演歌は強く、深くなる。やがてオキナワとのコンビで、流しの歌⼿としての修⾏を始め、コンテストへの出場を繰り返す中、デビューの話が持ち上がる。だがそれは「コージ⼀⼈で、ソロ歌⼿として」という条件付きだったーー。
6⽉10日〜30 ⽇・東京建物BrilliaHALL、7⽉8⽇から福岡・キャナルシティ劇場、7⽉19⽇から⼤阪・SkyシアターMBSにて上演。
▶︎公式サイト
写真/岡 千里 取材・⽂/南 ゆかり



