Oggi.jp

おしゃれもキャリアも。働く女性のWebメディア

フリーワードで検索

人気のキーワード

  1. トップ
  2. 働く
  3. 先輩インタビュー
  4. どんなライフステージでも続けられる、自分らしい働き…

WORK

2026.07.28

どんなライフステージでも続けられる、自分らしい働き方を女性たちへ。麹文化事業家・鈴木ひろみさんインタビュー

選択の多い30歳からの人生に、決断は欠かせないもの。各界の第一線で活躍する先人はどんな転機を迎えてきたのか? 今回は、医療機器メーカーや製薬会社を経て、日本の発酵食「麹」の魅力を次世代へつなぐ鈴木ひろみさんにお話を伺いました。

麹文化事業家・鈴木ひろみさんインタビュー

麹文化事業化・鈴木ひろみさん

《Profile》すずき・ひろみ/1976年、東京都生まれ。麹Style代表取締役。IT業界・外資系大手医療機器メーカー・製薬会社での勤務を経て、東京農業大学にて麹菌学・麹製造学を学び、2018年に『一般社団法人日本麹クリエイター協会』を設立。講座運営や情報発信のほか、2019年には鎌倉に麹専門店『麹Style』をオープン。神奈川県の「なでしこブランド」に選出され、鎌倉市のふるさと納税返礼品にも採用されるプロダクトを開発。これまでのべ5万人以上の人々に、麹を暮らしに取り入れる提案を続けている。

会社員として走り続けた17年、安定を手放すのは怖かった

第1子を出産したのが、ちょうど30歳のころ。仕事も子育てもちゃんとしたい、でも何が正解かわからない。ずっとそんなことを考えていました。30代はジョンソン・エンド・ジョンソンで医療機器の営業をしていましたが、当時は「出産したら内勤」という風潮があって。最終的には上司が受け入れてくれたものの、その事業部で産後に営業復帰した女性は私が初めてでした。会社としても前例がなく手探りだったのだと思います。最初は小さなエリアからの復帰で、「私がここでコケたら、次に続く女性たちに迷惑がかかる。絶対結果を出してやる!」と気負っていましたね。数字を達成できたことで、34歳で第2子を出産した後はすぐに大学病院を任され、自分でつくった道とはいえなかなかハードな生活でした。

この業界は営業先の医師に会うために医局で長時間待つのも当たり前で、ときおり「私、人間として見えているのかな?」と心配になるほど(笑)。まずは専門知識を蓄えて信頼関係を築くことから始め、徐々にコミュニケーションがとれるようになっていきました。中でも担当していた腹腔鏡手術の領域には大きなやりがいがありましたね。先生方の新しい術式習得に伴走しながら、患者さんの負担を減らす医療が日本に広がっていく。その過程に関われることに社会的意義も感じていたんです。

ただ、子育てとの両立は想像以上に大変でした。保育園の送りは夫、お迎えは私でしたが、オペが長引けば帰れませんし、学会や出張もあります。30代はほぼずっと激務に追われていました。転機は長女が小学校3年生のころ。子育ては幼少期を乗り越えれば楽になるわけではなく、年齢なりの悩みや課題が出てくる。「手は離れても目は必要なんだな」と痛感し、「もう少し子供との時間がほしい」「このままの働き方でいいのか」と考えるようになりました。

鈴木ひろみさん

製薬会社に転職してからは時間的余裕はできたのですが、その分、社会への貢献度が薄れてしまった感覚に。自分自身が熱中できる「何か」を求めていたのだと思います。会社員以外の生き方を模索して、まずは全米ヨガアライアンスの資格を取得したものの、講師が飽和状態で仕事にできる未来が見えず絶望。次に目を向けたのが〝腸を整える食事〟でした。ヨガと食を組み合わせようと料理を学び始めたものの、正直、料理には苦手意識があって。最初に学んだ玄米菜食は家族の評判もいまひとつで、植物性の食材のみで過ごす生活に私自身も数か月でパワー不足を感じてしまいました。でもだからこそ、動物性たんぱく質の大切さや、発酵の力にひかれるようになったとも言えます。

原点は手軽に取り入れられる乾燥麹との出合いから。そこから醬油蔵や味噌蔵、種麹屋さん、杜氏さんのもとへ足を運んで学びを深めるうちに、日本の発酵調味料の多くを生み出す麹の虜になりました。特に黒麹を初めて知ったときは衝撃でしたね。外食やお惣菜頼りだった私でも、麹調味料を使うと時短でおいしいごはんやおやつがつくれて、しかも疲れにくくなる。毎日飲んでいた栄養ドリンクも不要になり、何より、子供たちへの罪悪感がほどけ、イライラしがちなママだった私もすっかり穏やかに。「私でもできる」と、自分にOKを出せるようになったんです。麹を知るほど、これは私だけの救いではないと思うようになりました。味噌や醬油、みりん、酒は今も身近にありますが、効率化や大量生産が進む中で、麹の力をしっかり生かした本来の調味料を見つけることは難しくなっています。日本の食や歴史を支えてきたこの知恵を、もう一度暮らしに戻して継承したいなと。

ただ、まだ安定を手放す怖さは拭えませんでした。葛藤を抱えながらも、第3子を授かります。40歳での出産を見据え、「これからどう働きたいのか」を改めて考えました。夫にも相談しながら将来を見つめ直し、事業の勉強を始めていったのです。学ぶ中で、ビジネスとは問題解決ということを知りました。私の問題は、子供を産んでも働き続ける問題、毎日のごはん問題。それを一気に叶えてくれたのが、麹でした。女性の働き方はさまざまですが、私のように働きたい思いはあるのに、それが難しいと感じてしまう。そんな問題を抱えている女性は多くいるのではないか? その思いから、女性の新たな働き方をつくる! と覚悟をして協会を立ち上げました。

麹

自分のことは信じられなくても、麹の力は信じられた

それでも、会社を辞めるか否かは最後まで自問自答しました。本当に続けていけるのか、会社員として働いてきた以上の結果を出せるのか。でも最後は、「自分のことは信じられないけれど、麹の力なら信じられる。麹を信じよう」と43歳で退職と『麹Style』設立を決めました。

協会運営や講座設計、実店舗の物件探し、カフェ経営、融資を受けることまで、すべてが初めて。大変なことは山ほどありましたが、挫けている間もなく、「どうしたらできるか」をひたすら考えていましたね。コロナ禍でオンライン講座へ切り替えたときも、不安そうなスタッフにまず自分がやってみせて、みんなで乗り越えていきました。今では全国で講座を展開し、受講生は約1300名、講師資格取得者は350名超に。私が30代のころにほしかった「女性がどのライフステージにいても、自分らしく働ける仕事」が、少しずつ形になっています。

YouTubeを見て「食べてみたい」と鎌倉のカフェに来てくださる方も多く、実際に召し上がって「こんなにおいしいんですね」と驚く顔を見るたびに、実店舗をもつ意味を感じています。受講生の中には、副業として教室を開いたり、定年後にカフェで麹の仕事を始めたりする方もいます。麹を通じて人が元気になり、その人がまただれかを元気にしていく。そんな循環を見るたび、胸がいっぱいになります。

子供たちがワクワクできる日本を残すために、私たち世代にできることはまだあるはず。それは家庭の中でも同じで、子供たちは「いい母親であるか」以上に、「ママがどう生きているか」を見ている気がするんです。だからこそ、お母さんたち自身が「楽しい」「これが自分の使命だ」と感じられることを、もっと増やしていけたら。

最近、家系図をつくってみたところ、ご先祖様に酒造の創始者がいたことを知りました。偶然出合ったと思っていた麹と、実はつながっていたんです。『麹Style』で扱う麹菌は、京都から譲り受けたもの。さらに、より気軽に麹を試していただける商品を増やすため、島根・出雲で工場の準備も進めています。日本の国菌である麹の力を次の世代へ。そしていずれは海外へも届けながら、人が元気になる循環をつくっていきたいです。

鎌倉散策で立ち寄りたい手づくり麹のパワーとおいしさを発見できるカフェ『麹Style』

黒麹玄米甘酒のレアチーズケーキ

鈴木さんが手がけるカフェ『麹Style』では、オリジナルの麹箱で育てた「糸結び麹」を使用。手づくりの塩麹、醬油麹、甘酒を仕込み、低温調理や蒸し煮など、麹の特性を活かした調理法で、日本の食の原点を味わえる。砂糖不使用の体に優しい『黒麹玄米甘酒のレアチーズケーキ』も人気。

住所:神奈川県鎌倉市佐助1-13-1 1F

YouTube『べっぴん菌ちゃんねる』では、暮らしに取り入れやすい麹レシピも発信中!

2026年Oggi8月号「The Turning Point~私が『決断』したとき~」より
撮影/石田祥平 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部

Oggi編集部

「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
Oggi.jp

▼あわせて読みたい

Today’s Access Ranking

ランキング

2026.07.29

編集部のおすすめ Recommended

Follow Us!

Oggiの公式SNSで最新情報をゲット!

メールマガジン登録はこちら

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

【消費税の価格表記について】 記事内の価格は基本的に総額(税込)表記です。2021年4月以前の記事に関しては税抜表記の場合もあります。

Feature

スマートフォンプレビュー

LINE公式アカウント 友だち募集中

働くすべての女性に向けて、
今すぐ役立つ「ファッション」「ビューティ」「ライフスタイル」
情報をお届けします。