ITエンジニアとして働くOggi世代

野村吏璃星さん:のむら・りりほ/1999年山口県生まれ。2022年、株式会社ウエディングパークにエンジニアとして新卒入社、結婚式クチコミサイト「Wedding Park」の開発を担当。開発リーダーや新卒研修運営リーダーの経験を経て、2024年にマネージャーへ転向、新企画立ち上げに関わる。2026年3月、結婚式場向けの接客支援ツール「mierepo」をリリース。
ITの力でブライダル業界を支えるウエディングパーク
株式会社ウエディングパークの「おもてなしオートメーション事業」、通称「OA事業」で開発責任者を務めています。人が生み出す創造的なおもてなしの価値を、テクノロジーで最大化するのがOA事業のミッションです。
現在担当しているのは「mierepo(ミエレポ)」という接客支援ツール。今年2026年3月にリリースされたばかりのサービスで、企画立ち上げから関わってきました。「mierepo」は、先輩カップルの結婚式の実例写真と実際にかかった費用をセットで紹介できる、結婚式場向けのサービス。結婚式のイメージと費用感をわかりやすく伝えることで、カップルが納得して選択できる環境をつくり、結婚式費用の透明化を進めることを目指しています。
文系からエンジニアの道へ。ものづくりの面白さに魅せられて

エンジニアに興味を持ったきっかけは大学時代。もともとは文系でしたが、授業の一環で統計学やプログラミングに触れる機会があったんです。当時、データサイエンスが注目されていたこともあり、少しずつIT分野に興味が湧いていきました。
大学時代にコロナ禍が重なったことで、「先の見えない状況でも、自分の力でキャリアを築けるように手に職をつけたい」と強く感じていたこと、今の自分に何ができるのだろう?という焦りもあり、勉強を始める後押しに。それでプログラミングを学び始め、チーム開発やハッカソン(※)などにも参加するようになりました。
実際に触れてみると、ITの「ものづくり」の側面にも惹かれました。私は小さなころから絵を描いたり、手を動かして何かを作ったりするのが好き。できたものを見て誰かが喜んでくれると、とてもうれしくて。それをITやWebの世界で実現できるのが、エンジニアの魅力だと感じています。
※ハッカソン:ソフトウエア開発者が、一定期間集中的にプログラムの開発やサービスの考案などの共同作業を行い、その技能やアイデアを競う催し(小学館・デジタル大辞泉より引用)
多くの人にとって、よりよいサービスを目指して
就職活動ではITを軸にさまざまな企業を見てきましたが、ウエディングパークの掲げる「四方よし」の姿勢に共感し第一志望に。これは、ユーザーであるカップル、クライアント、自社だけでなく、「社会にとってもよりよいサービス」を目指すあり方です。ものを作る立場だからこそ、一部の人に都合のいいものではなく、できる限り多くの人にとってよいサービスを追求したいと考え、入社を決めました。
入社してから2年は結婚式情報・クチコミサイト「Wedding Park」の開発に携わりました。学生時代とは違って、現実のユーザーまで届くサービスに関わるわけですから、もちろん大変でしたが先輩エンジニアからたくさんのことを学べる環境でもあり、楽しかった記憶のほうが強いですね。とくに、自身が開発したものが実際にサイトに表示されたときは、とてもうれしかったことをよく覚えています。
リーダーとして、まずは“コト”に向き合う。入社2年目に訪れた転機

転機は入社2年めの2023年夏。基幹商品のバージョンアッププロジェクトで、開発リーダーを任されることに。その少し前には新卒研修の運営リーダーを担当していましたが、研修運営と比べてバージョンアッププロジェクトは関わるステークホルダーが多く、事業のことを理解していなければならない。はじめは「私はリーダーとして何ができるんだろう?」という状態だったので、わからないなら周囲に聞くしかないだろう!と、プロジェクトメンバーひとりひとりに「リーダーには何をしてほしいですか?」とストレートに意見を集めることから始めました。
ですが、たくさんの人に意見を聞けば聞くほど、進むべき道がわからなくなってしまい…。そんなとき、上司から言われたのが「人に向き合う前に、まず“コト”に向き合うのがリーダー」という言葉。
このプロジェクトでいえば、まずは「バージョンアップを成功させる」という目的がある。そのために人と向き合うのであって、中心にあるのはあくまで「目的」。その言葉をもらってからは、「プロジェクト成功のために、次のステップでは何を叶えるべきか」と自身の意思で考えられるようになりました。そこから少しずつ、うまく回り始めたように思います。
エンジニアのスペシャリストを目指すか、マネジメントに挑戦するか
2024年のはじめには、さらに大きな選択が待っていました。当時の上司から、「あなたはマネージャーに向いていると思うから、やってみない?」と声をかけられたのです。
当時はどちらかといえば、エンジニアとして技術を磨いて、スペシャリストになる道をイメージしていて。マネージャーは自分ではまったく考えていなかったキャリアだったので、とても悩みました。
挑戦を決めた理由は、それまで自分が多くの“機会”を与えてもらったこと。開発リーダーや新卒研修のような挑戦の機会を通して、自身の成長を実感できたことが何度もありました。だったら次は、私が誰かに機会を作る側になりたいと思ったんです。
実は当時、上司だけでなく「マネージャーに向いているのでは」と言ってくださる人が何人もいたんです。自分では見えていなかったけれど、もしかしたらそれが私の強みなのかもしれない。もし実際に向いていなかったとしても、それはそれで自分のことをもっと知るチャンス。いい経験になるのではないかと思いました。
「向いていないかも」とオフィスで涙。それでも折れなかった理由

ところがマネージャーになってからの半年間は、想像以上に苦しい時間でした。任されたのは、まったくの新規サービスの企画。のちの「mierepo」です。これまではすでに決まったものを作る側だった私が、今度はゼロから構想し、自分の意思で“正解にしていく”立場に。
本当に手探り状態で、社内外から厳しいフィードバックをいただくことも多々ありました。2か月ほどのあいだ、何度も何度も議論を重ねても企画が前に進まなかったころは、出口が見えずに本当につらかったです。「やっぱり向いていないかも」とオフィスで泣いて、先輩に慰めてもらったこともありました。
それでも折れなかった理由は、ふたつあります。ひとつは、近くで支えてくれた上司の存在。迷っていたら「いったんやろう」と仕切り直してくれたり、ごはんに連れていっててくださり元気づけていただいたり。本当に心の支えになっていました。
もうひとつは、自身の負けず嫌いな性格です。マネージャーになると決めたのは自分自身ですし、挑戦するからにはいい形で終わらせたい。悔しいから立ち上がる、という感じでした。諦める自分がすごく嫌なのだと思います。
言うなれば「這いつくばって食らいついた」ような毎日。そんな日々を経て、ついに2026年3月、「mierepo」はリリースされました。開発の途中で納期が厳しくなり、チームメンバーに無理をさせてしまったことなど、反省もたくさんあります。でも、まずはみんなで「やったね」と言えたことがうれしくて、達成感もひとしおでしたが、より大きいのは「ここからだ」という気持ち。
私たちが目指しているのはサービスをリリースすることだけではなく、「mierepo」を通じて結婚式費用の透明化を進めていくことなので、これからもっとサービスを成長させて、事業として続けられるものにしていきたい。いい反応も悪い反応も含め、率直なフィードバックを生かしていきたいと思います。
推進力の源は、環境の変化を楽しむ好奇心

振り返ると、新しい環境に積極的に飛び込む姿勢は、幼少期から培われていたように思います。父の仕事の都合で何度も引越しを経験しており、最初の転校では、友達と離れるのが悲しくて泣いた記憶も。けれど2回目くらいから、「次はどんなところなんだろう」と、新しい環境を楽しめるようになりました。初めての人や環境に馴染んでいく力は、そこで自然と身についたのかもしれませんね。
苦しい状況でも前向きに取り組む姿勢は、高校時代に所属したバレーボール部でも身につけた気がします。決して強いチームではなかったものの、コーチからは「苦しいときでもネガティブな顔を見せず、笑顔で元気よく声を出そう」と繰り返し教えてもらいました。
最近はひとり旅が好きで、とくに“島”が気になっています。場所が変われば、感じ方や居心地のよさが全く変わるのが面白くて。旅も、環境を変えて自分のことを知る──そのための自己探求だと言えそうです。
趣味の絵画でリフレッシュ。デッサンを通して、自分自身の“クセ”を知る

子どものころ絵を習っていたのですが、最近また教室に通い始めました。いつかは本格的な油絵に挑戦したくて、現在はデッサンの基礎を学んでいます。
週に2時間半ほど、ひたすら絵と向き合う時間は、大切なリフレッシュのひととき。同時に、自分自身について新しい発見もありました。
真っ白な紙を前にすると、どう描くかを考えすぎて、なかなか手が動かないことがあるんです。でも先生に「ここを意識するといいよ」と言われると、一気に動き出す。それが仕事でもまったく同じだと気づいて(笑)。自分ひとりで考えすぎて進めなくなるけれど、人からヒントをもらうと前に進めるんですよね。
仕事で壁にぶつかったときは、まずは考えていることを紙に書き出して全体を整理します。それでも自分だけでは解決できないときは、ためらわず周囲に相談。直接答えをもらうというより、“どう動けばいいか”のヒントをもらうことが多いです。それを繰り返して、少しずつ進み方がわかるようになっていく。その積み重ねで、ここまで来られたのかなと思います。
目指すのは「売上を作れるクリエイターマネージャー」
これからの目標は、まず「mierepo」を成功させること。そして、売上を作れる「クリエイターマネージャー」になることです。
ただ「いいものを作る」だけでは終わりたくないんです。作ったものをきちんと価値として届け、売上を生み出すところまで担いたい。そして、サービスを成長させることで、事業として継続的に利益を生み出すことで、社会への貢献につなげたい。
今関わっているmierepoでは、結婚式のイメージと費用がオープンになっていることが当たり前の業界をつくることで、「結婚式っていいな」と思っている人が安心して検討し叶えられる社会にしていきたいと思っています。私自身はその過程で、ものづくりと事業成長の両方を担える人を目指したいです。
私は自分が成長することが好きなのだと思います。挑戦して、たとえ思い通りにならなくても、自分のことがまたひとつわかる。だからこそ、これからも「まずはやってみる」。その姿勢を大切にしたいと思います。
取材・文/徳永留依子



