まっすぐなホテル愛を胸に、その魅力を全世界に届ける。ザ・ペニンシュラ東京広報・豊島 周さん

豊島 周(とよしま・あまね)さん:1995年 アメリカ生まれ。幼稚園から兵庫県神戸市で育つ。スイス・ローザンヌの大学でホテル経営学を学び、卒業後の2019年にザ・ペニンシュラ東京に入社、広報部に所属。
東京都内屈指のラグジュアリーホテルで広報を担当するOggi世代
ホテル「ザ・ペニンシュラ東京」で広報を務めて6年目になります。テレビ、雑誌、SNSなどさまざまなメディアを通じて、“ペニンシュラブランド”を多くの方々に知っていただくのが仕事。国内外にザ・ペニンシュラ東京をPRするだけでなく、世界12か国にある姉妹ホテルの広報も、日本メディア向けに行なっています。
ホテルは、プロフェッショナルの集まりです。コンシェルジュ、ハウスキーピング、シェフやソムリエ…各ジャンルを突き詰めた人たちがいるからこそ、魅力的な場所になるのだと思っています。そんな「プロの仕事」を伝えていくのが、私のモチベーションです。
「広報」という仕事は一見華やかに見えるかもしれませんが、実際はコツコツとした作業が大切。その積み重ねで、少しでもペニンシュラのファンが増えてくれたら…そんな気持ちで仕事に取向き合っています。1日たりとも同じ日がないくらい、業務の内容はさまざま。つねに新しいことに取り組めることがこの仕事のやりがいであり、楽しいところでもあります。

豊島さんのとある1日のスケジュール
7:15 起床・身支度
8:15 自宅を出発
9:00 業務スタート
まずはメールチェック後、チームや上司とスケジュールや業務の確認
10:00 ホテル内の中国料理「ヘイフンテラス」で、季節限定メニューの取材・撮影立ち合い
11:00 記事の校正やプレスリリースのライティングなどのデスクワーク
12:00 従業員食堂「GOCHI」でスタッフとランチ
13:00 取材で来日した海外メディアにご挨拶&館内のホテルツアー
14:30 ホテル内のダイニング「ザ・ロビー」でメディアへの紹介と打ち合わせを兼ねたアフタヌーンティー
16:00 料飲部と今後のプロモーションについての打ち合わせ
17:00 デスクワーク
18:30 退社後、友人と気になるレストランでディナー
23:00 帰宅してお風呂&SNSチェック
24:00 就寝

仕事のパフォーマンスは、プライベートが充実してこそ
ホテル業界というとハードなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、ペニンシュラはワークライフバランスを大切にする社風。プライベートが充実するからこそ仕事にも生きる、そんないい循環が社内に根付いていると感じます。スタッフ同士がフランクに交流できるようなイベントも定期的に開催されています。不規則な仕事だからこそ、従業員がリフレッシュできる機会を会社が積極的に設けてくれています。バーベキューやスキー、時にはドッジボール大会まで。なんだか学生時代の「放課後」のようなイメージです(笑)。こうやって仕事を離れて肩の力を抜ける環境も、弊社のいい文化ではないでしょうか。外資系ホテルということで、スタッフは国際色豊か。さまざまな話題が飛び交っていて、本当におもしろいです。

ホテルで働く夢ができたのは高校生のころ
高校2年生のころ、ちょうど進路について考え始めたタイミングで、たまたまホテルに行く機会がありました。その時スタッフの方がフロントデスクの奥に入っていく様子が目にとまって、「この中にはどんな世界が広がっているんだろう?」と好奇心がわいたのが最初のきっかけです。もともとアメリカ生まれで英語に親しみがあり、インターナショナルな環境に興味があったことも後押しになりました。
ホテルを軸に進路を模索するうちに、観光大国・スイスにホテル経営を学べる大学がいくつかあることを知りました。ならば、ホテルについて勉強ためにスイスへ留学しよう!と決意。前例のないことなので、担任の先生にはとても驚かれたことを思い出します。
スイスの大学でホテル経営学を学ぶまでには、いくつかの試練が

とはいえ、スイスの大学に行くという選択はそう簡単にはいきませんでした。当時、日本の高校卒業単位ではスイスの大学に出願する資格を満たさず、海外の高校で追加単位を取得する必要がありました。さらに両親からは「本当にホテルが好きなのか、実際に働いて確かめてみなさい」と言われて。お客様としてみるキラキラした世界と、サービスを提供する側も見てほしい──そんな心配もあったのかもしれません。そこで、高校卒業後にまずは大阪のホテルでアルバイトを始めました。
1年間のアルバイトで電話オペレーターから部屋の清掃、フロントデスクの対応まで、さまざまな「ホテルの仕事」を経験。高校の友人はすでに大学生活を楽しんでいたころだったので、不安もありました。将来が確約されているわけではないし、「この期間が無駄になったらどうしよう」という気持ちも常にあって。けれど、結果としてホテルのことがますます大好きになったのです!
裏側を知るほどにホテルが好きになりましたし、お客様が喜ばれる姿を直接見られることが、本当にうれしくて。「やっぱりホテルで働きたい」と思いを新たにし、本格的にスイスの大学を目指し始めました。振り返ると、この1年があったからこそ、ホテル内の様々な部署を理解したうえで“広報”としてホテルを語れる強みができたことは大きな糧になった気がします。
スイスの大学生活で培われた「チーム力」

大学があったスイス・ローザンヌは国際的な街で、学生も半数以上が外国籍という環境でした。世界中に友達がいることは大きな財産。文化の違いでぶつかることもありましたが、みんな故郷を離れてスイスに来ているという共通点があり、友達を通してコミュニティを作って助け合う精神も培われました。“助け合い精神”は日本にいたころよりも、強くなったかもしれません。週末に友達とヨーロッパ各地に足をのばしたことも、思い出に残っています。
決め手は“人柄”。あたたかい職場で、「ホテルで働く」夢を実現
大学を卒業後は、日本に戻り、首都・東京で働いてみたいと、ザ・ペニンシュラ東京に就職。決め手になったのは、みなさんのあたたかい人柄です。気さくで親近感のわく雰囲気に「ここで働くことができるといいな」と直感しました。ご縁があって入社でき、あれよあれよと6年が経過。インターナショナルで多様な文化があり、本当に居心地のいい職場です。
入社当初すぐにコロナ禍に突入し、思うように広報活動ができず歯がゆい思いもしましたが、だからこそ今、全力で仕事に取り組めることが心から幸せだと感じています。
プライベートではゴルフにハマり中! お休みを満喫することが仕事にも生きる
今、いちばんハマっているのはゴルフ。都心を離れて自然のなかでのびのびできますし、ボールにひたすら集中する時間を過ごせます。友人たちと連れ立って、ドライブ感覚でおしゃべりしながらゴルフ場に向かうのも楽しくて。
国内外問わず旅行もよく行きます。旅先での体験が仕事のアイディアやコミュニケーションにつながることも多いです。お休みの日を思い切り楽しむことで、やはり仕事にも良い循環が期待できるのだと思います。
これからの抱負や目標は?

ホテルは「衣食住」すべてが入っている業界。これからますますお客様にさまざまな感動を届けるために、引き続きたくさんの文化に触れていきたいです。美術館に行ったり、読書をしたり、家とホテルの行き来だけでは出会えない感動を、もっともっと増やしていきたい。30歳になって、自分の「好きなもの」はしっかり見えてきました。だからこそ、これからの数年は“まだ知らない世界”へ飛び込む時間にしたい。小さな挑戦や発見を積み重ねながら、自分らしいキャリアを育てていきたいです。まだまだ、模索中です!
取材・文/徳永留依子



