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2026.07.26

「だれもがあきらめなくていい結婚式をつくるために、制約を超えていく」フリーウエディングプランナー・岩田美生さん

選択の多い30歳からの人生に、決断は欠かせないもの。各界の第一線で活躍する先人はどんな転機を迎えてきたのか? 今回は、結婚式という一日を通して、人の想いや生き方に向き合い続けてきたフリーウエディングプランナーの岩田美生さんにお話を伺いました。

フリーウエディングプランナー・岩田美生さんインタビュー

岩田美生さん

《Profile》いわた・みお/Colorfraise代表取締役。オリエンタルランド、ミリアルリゾートホテルズなどディズニーブランドで約15年、サービスや人材育成、開業準備に携わる。2005年ベストブライダルに転職し、約2000組の結婚式をプロデュース。営業責任者、店舗支配人を経て、2018年に独立し、2020年同社設立。「『どこで』より『どんな』一日をつくるか」を起点に、全国でオーダーメイドの結婚式を手がけ、全国から指名や紹介が絶えない。国家資格「1級ブライダルコーディネート技能士」をもち、専門学校や企業研修での講師経験も豊富。

「あの日、幸せだった」という記憶が人生を支える〝お守り〟になる

だれかの幸せのために働く。その思いを手がかりに、自分が進む先を模索していたのが20代後半から30代の初めです。ディズニーブランドで接客や人材育成、ホテル開業準備に携わる中で、〝人が喜ぶ瞬間〟に立ち会うことが私の原点になっていました。ただ、いざホテルのフロントに立つようになったころ、違和感を覚えたんです。お客様をお迎えしているけれど、一組一組に関われる時間はわずか。自分の仕事でだれかの感情が大きく動く実感が、遠くなった気がしたんです。接客業のさらなる高みを目指して、「もっとじっくり、直接、人の幸せに関わりたい」と思い始めました。

ちょうどそのタイミングで、自身の結婚を機に訪れた式場見学。ウエディングプランナーの仕事に、「これだ!」と直感しました。お客様と一緒に、その人のための一日をつくる。反応がその場で返ってくる。まさに求めていたものだと、国内外でゲストハウスウエディングを展開するベストブライダルに転職しました。

ただ、実際には数字を追う「営業」としての役割も大きく、最初は戸惑いもありましたね。けれど、予算を理由に「やりたいけれど、あきらめます」と肩を落とすお客様を前に、「できない」と伝えたくなかった。高額でなくても楽しい式を実現するには、社内で提案を通せる立場になること。結果を出すことが、お客様の願いへの近道だと気づいたんです。

そうやって真剣に向き合ううちに、営業の捉え方にも変化が。商品を売るのではなく、「まだ存在していない夢の一日」を一緒に描いていく。なぜその日を選び、どんな想いで結婚を決めたのか。背景にある軸を丁寧に掬い上げれば、当初の要望とは形が変わっても、おふたりに合うアイディアが降りてくるんです。気づけば、メリットや条件を並べるのではなく、「おふたりやゲストにどんな気持ちを残せるか」をプロデュースする感覚に変わっていきました。

岩田美生さん

現場全体を預かる立場になり、トラブルへの対応も重要な役割となりました。あるときは、ウエディングケーキの内容にミスがあり、新婦から強いお𠮟りをいただいたことも。苦情の多くはひとつのミスでいただくわけではなく、返金という対応だけでは傷ついた心までは救えません。後日、おふたりのためだけに、当日叶わなかった想いを実現する場をスタッフ総出で用意しました。あきらめたもう一着のドレスを纏い、幸せな思い出を上書きするような時間。「ここを選んでよかった」という涙ながらのお言葉をいただき、結婚式とは人生に残す「記憶」をつくるものなのだと強く感じました。

同時に、大きな組織ゆえの限界も感じていました。持ち込みやスケジュールの制約。LGBTQ+のカップルからの「周囲にまだカミングアウトしていないので、貸切にしてもらいたい」という切実なご要望に、当時のルールを理由にお断りせざるを得ないこともありました。すべての期待に応えられないことが、ずっと引っかかっていて。お客様が納得してくださったとしても、「本当はやりたかったのにな」と心残りを生んでしまうんじゃないか。多くのお客様を抱える大手ではできないことも、自分ひとりならその制約を取っ払って、あきらめなくていい結婚式をつくれるかもしれない。そう考え、45歳で独立を決めました。

独立後は婚礼プロデュースに加え、会場コンサルティングの依頼も増え、法人化を見据え始めていました。そんな矢先にコロナ禍が訪れ、決まっていた仕事は白紙に。夫も運営を任されていた飲食店を離れ、夫婦で無職の期間も過ごしました。転機は、立ち止まってはいられないと参加した経営者の勉強会でのご縁から、金沢での結婚式を任せていただいたこと。手探りながら現地のクリエイターとチームを組み、ゼロからつくり上げた経験は、「場所に左右されず、人がいればどこでも価値は届けられる」という確信へとつながりました。地域のプランナーとも競合という関係を超えて「共創」することで、全国どこでも質の高いプロデュースができるという手応えを感じています。

活動の幅が広がるにつれ、より多様な人生の節目に立ち会うようにもなりました。一組一組にドラマがあり、心を揺さぶられます。「ケンカして結婚式ができないかもしれない」と泣きながらお電話をいただいたり、「新郎」「新婦」という呼び方に違和感を抱く方がいるとハッとさせられたり。

一対一で深く向き合うからこそ、プロとしての正しさが、お客様の純粋な願いを傷つけてしまう場面もありました。一生に一度のことで、伝え方に迷いが生まれ、表面的なご要望と本当の願いがずれてしまうこともある。真夏の長時間にわたる屋外セレモニーを希望されたお客様に、安全面を優先して代案をお伝えしたところ、「思いを否定された」と受け取られ、本番直前にキャンセルのお話まで出てしまったんです。このまま終われば、お客様にもチームにも後悔が残る。「もう一度チャンスをください」とお願いし、腹を割って対話を重ねました。なぜその演出にこだわるのか。言葉の奥にある本心に触れたとき、ウエディングとはだれかとの約束であると同時に、自分自身への誓いでもあるのだと理解できました。信頼を積み直して迎えた当日は、祝福に満ちた一日となりました。

ウエディングプランナー

こうした経験を重ねる中で、不安の根に寄り添い、すれ違いを早くほどくことの大切さを実感しています。「NOと言わない」というスタンスも、どうすれば叶えられるかを考え続けてきた中で、自然と身についていったものです。一方で、業界全体に目を向けると課題も少なくありません。挙式実施率は年々低下し、地方では式場閉鎖も相次いでいる。にもかかわらず、お客様の自由度を狭める仕組みは根強く残っています。さらに、バリアフリーとされる施設であっても、導線や設備の問題で障害がある方に追加の負担が生じるケースもある。

そうした小さな違和感や不便が、「結婚式をあきらめる理由」になってしまっている現実があります。だからこそ、場所ではなく「人」で選べる結婚式のあり方を広げていきたい。自分が間に入ることで、ひとつでもハードルを下げていけたらと思いますし、プランナー同士が連携し、全国どこでも質の高いプロデュースを届けられるネットワークづくりにも取り組んでいます。

結婚式は、なくても生きていくことはできます。でも、ふとしたときに立ち返れる「あの日、私は幸せだった」という記憶があることは、人生を支える〝お守り〟になる。特別な一日が、その人の生き方や選択を肯定する場であるように。そんなだれかの背中をそっと押す時間を、これからも丁寧に積み重ねていけたらと思っています。

フリーウエディングプランナーと、既存の形式にとらわれない自分たちらしい結婚式を!

結婚式の新しい選択肢を広げるため、岩田さんは現在、「フリーウェディングプランナー協会(仮)」の設立を準備中。認定制度やプランナー同士の連携により、自由でありながら安心して選べる環境を整え、多様な結婚式のかたちを社会に広げていくことを目指している。相談窓口や活動詳細は、公式HPSNSで発信予定。

2026年Oggi7月号「The Turning Point~私が『決断』したとき~」より
撮影/石田祥平 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部

Oggi編集部

「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
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