FIFAワールドカップについて教えてくれるのは…

元サッカー日本女子代表・澤 穂希さん
さわ・ほまれ/1978年生まれ。2011年のFIFA女子ワールドカップドイツ大会では、キャプテンとしてなでしこジャパンの優勝に貢献し、大会MVPと得点王に輝く。同年FIFA最優秀選手賞受賞。2012年のロンドン五輪では銀メダル、2015年W杯カナダ大会では準優勝に貢献。現在はスポーツ普及のために尽力。
「FIFAワールドカップ2026」開催国も出場チームも史上最多になった影響は…!?
Oggi編集部(以下Oggi):もうすぐ、ワールドカップ(以下W杯)が始まりますね。ふだんから熱心にサッカーを追っているわけではない〝にわかファン〟で恐縮ですが、W杯ともなるとテンションが上がります!
澤さん(以下敬称略):4年に1回開催されるW杯は、FIFAが主催する世界選手権大会。サッカー選手ならだれもが憧れる場所です。特に男子は、原則23歳以下という年齢制限があるオリンピックに対して、W杯は若手からベテランまで、真に強いスーパースターたちが集結。その頂点に立ってトロフィーを掲げたい、という思い入れは強いでしょうね。
Oggi:今回開催されるのはアメリカ、カナダ、メキシコですね。
澤:はい、3か国での開催は初めてのこと。6月11日の開幕戦はメキシコシティ、7月19日の決勝はニューヨーク/ニュージャージーで行われる予定です。今回は参加チームも、前回の32チームから48チームに増えて、全試合数が64試合から104試合へと大幅に増加。3か国で開催するのは、会場を確保するためという背景もあったのではないかと、推測します。
Oggi:参加チームも、そんなに増えたんですね。
澤:たとえばアジアの出場枠は、4年前の4.5から、今回は8.5に増えました(大陸間プレーオフを含む)。枠が広がったことで実力にバラつきが出るのは、ある程度仕方がないこと。サッカーではあまり見ない、10点差がつくような試合も出てくるかもしれません。
Oggi:なるほど、ゲームとしての面白みにも影響するんですね。
澤:でも元選手としてはシンプルに、多くの国に出場のチャンスが増えるのは「夢がある!」と思います。出場国が増えることで、さらに多くの人に見てもらえるでしょうし。FIFAにとっては、より多くの放映権収入を得たいという、ビジネス的な側面もあるとは思います。
Oggi:とはいえ、選手たちの移動の負担も大きそうです。
澤:率直に言って大変だと思います。私も現役時代、移動距離が長い国際大会があって、スタッフが「グループリーグは1位じゃなくて、2位で通過しておいたほうが、移動時間が短くなるから…」なんて話していたのを覚えています。実際はそんなに計算どおりにはいかないんですが(笑)。今回の日本代表は海外で活躍する選手も多いので、移動にも慣れているはず。乗り切ってくれると思います。
全48チームが集結! 世界のスター選手たちも一堂に!
ヨーロッパから16チーム、アフリカ10、アジア9、北中米カリブ海6、南米6、オセアニア1のチームが出場。「アルゼンチンのメッシ選手は、これまでの集大成となるプレイを見せてくれるはず。フランスのエムバペ選手は、前回大会決勝でハットトリックを決めた20代。優勝候補・フランスの選手層の厚さを感じさせます」(澤さん・以下同)
アルゼンチン・メッシ選手

フランス・エムバペ選手

日本代表はグループFで、まずはこの3か国と対戦!
第1戦:6月15日(月)5:00〜 オランダ
第2戦:6月21日(日)13:00〜 チュニジア
第3戦:6月26日(金)8:00〜 スウェーデン
※日本時間
「オランダ、スウェーデンなどヨーロッパのチームはフィジカルがとにかく強い! 相手の強みを出させないような、守備やゲームづくりが大切です。ふだんヨーロッパのチームでプレイしている選手も多いので、対策はしやすいはず。チュニジア戦は現地時間の22:00キックオフ。ここまで夜遅い試合開始は珍しいので、心身をどう整えるかもカギに」
SAMURAI BLUEが優勝する確率は…!?
Oggi:ズバリ、今回の日本代表の実力は…? 前回大会ではグループリーグを突破して、ベスト16に進出しました。
澤:サッカー関係者たちからは、「今の日本代表は、これまででいちばん強い!」という話をよく聞きます。前回のカタール大会でも、スペインやドイツなど強豪に勝利してグループリーグを1位で通過するなど、想像以上の活躍を見せてくれましたが、今回も世界をアッと驚かせてくれるんじゃないでしょうか。ひとりで、相手チームの選手をひとり、ふたり抜いて、自分で点を取れるような選手も増えて、決定力も上がっていると感じます。だれが代表に選ばれてもおかしくない、実力のある選手が増えていて、監督の森保さんも相当迷っていると思いますよ。
Oggi:森保 一監督は2018年から、長期にわたって代表の監督を務めていますね。どのようなスタイルなんでしょうか?
澤:選手ひとりひとりの特徴を知り尽くしているので、交代のタイミングや、その交代で入る選手の起用法などが絶妙だな、と感じます。試合途中から出て、結果を残す選手も多いです。あとは、とても熱い人! お話しするととても穏やかなんですが、サッカーに対してはとても情熱的で、ときに涙を流すことも。一試合一試合にかける思いが周囲にも伝わるからこそ、結果がついてくるのだと思います。
Oggi:日本代表の最初の試合は6月15日、オランダ戦です。
澤:今年4月1日時点でのFIFA世界ランキングでは、日本は18位。グループリーグでは、オランダ(7位)、チュニジア(44位)、スウェーデン(38位)と対戦することになります。ただ世界ランキングはあくまでも目安。相性もありますし、実際の試合では〝格下〟と見られているチームに負けることもふつうにあります。そんなことを考慮に入れても、日本チームはグループリーグを突破すると思いますよ。
Oggi:力強い予想ですね。
澤:唯一心配しているのは、けが人が続出していること。開幕までにしっかり治して、コンディションを上げていけるとよいのですが…。森保さんが目指すところは優勝ですし、選手みんなが同じ思いで、一日一日を大切にしていると思います。
Oggi:優勝、ですか。
澤:私たちが、’11年に女子W杯で優勝したときも、観客のみなさんは、優勝できるなんてだれも想像していなかったと思います。でも、W杯に旅立つ前にチームメイトの宮間(あや)と散歩をしながら、「このチームだったら優勝できると思う」って話していたんですよね。
Oggi:そんな確信が…!
澤:運も味方してくれたとは思いますが、勝ち進むごとに成長している手ごたえもありました。さまざまな要素が重なって、今の日本代表が優勝することは不可能ではないと思います。やるからには目標を高く、優勝してほしいと、心から応援しています。
SAMURAI BLUEの中でも、澤さんが特に注目しているのは…?
チームを安定させる守備的リーダー【遠藤 航選手】

「2023年6月から日本代表のキャプテンを務めていて、ポジションも私と同じボランチ。個人的なイチ推し選手です」イングランドのリバプールFC所属。33歳。
勝利に導く貪欲なプレイに注目【久保建英選手】

「足さばきがすばらしい! 左利きならではの、カットインからのシュートに魅了されます。貪欲に得点を狙う姿勢も◎」スペインのレアル・ソシエダ所属。24歳。
知的でクールなセンターバック【谷口彰悟選手】

「相手の動きを冷静に予測して守るなど、ポジショニングが的確。チームメイトのミスもスマートにサポート」ベルギーのシント=トロイデンVV所属。34歳。
写真提供:公益財団法人日本サッカー協会
W杯をもっと楽しむために注目すべきポイントは?
Oggi:サッカーに詳しくない人は、W杯をどのように楽しんだらよいでしょうか?
澤:初心者は、個人的にお気に入りの選手を見つけるのが、いちばん手っ取り早いですよ(笑)。推しがいれば一気にハマりますから。
Oggi:澤さんの好みのタイプの選手といえば?
澤:私に聞かれても… そういう目で選手を見ていないので(苦笑)。でもまあ、たとえば日本代表の谷口彰悟選手は、チーム一の端正なたたずまいでも人気ですね。
Oggi:失礼しました(汗)!
澤:サッカーの見どころということなら、たとえばドリブラーと守備など、選手が1対1で駆け引きしている場面はハラハラして楽しいのでは。ゴール前のプレイも緊迫感があっていいですね。プレイスタイルから選手の性格が透けて見えるのも面白いですよ。冷静なプレイをしている選手なら「日ごろからクールな性格なんだろうな」とか。
Oggi:血気盛んな選手もいるんでしょうね(笑)。
澤:あと、スポーツバーなどで、だれかと一緒に観戦すると、さらに盛り上がりますね。そういう応援の声って、選手にちゃんと届くんです。
Oggi:時差で見づらい試合もありそうですが… 日本代表の第2戦は、週末の午後なのでみんなで集まれそう! あと今回は、決勝戦でハーフタイムショーが行われると聞きました。
澤:そうなんです。アメリカでは、アメフトのNFL優勝決定戦であるスーパーボウルのハーフタイムショーがとても有名ですが、サッカーのW杯でハーフタイムショーが行われるのは初めてのこと。エキサイティングなサッカーを観戦しながら、エンタメも楽しめるとあって、最高に盛り上がると思います。
Oggi:楽しみですね!
澤:自分ひとりじゃなしえないことも、仲間がいるからできる、といった経験を、サッカーで何度もしてきました。うれしさは倍増、悲しみは半分に。そんなチームプレイの醍醐味も、W杯から感じ取ってもらえたらうれしいです。
覚えておきたいキーワード
1. FIFA
国際サッカー連盟。フランス語で Fédération Internationale de Football Associationの略。211の国と地域のサッカー協会が加盟。イギリスは4つの地域がそれぞれ独自加盟しているため、W杯の出場チーム数=参加国数とはならない。
2. 大陸間プレーオフ
アジア、アフリカ、北中米カリブ海、南米、オセアニアの予選で出場権を得られなかった次点6チーム同士が、最後の2枠をかけて対戦。アジア出場枠8.5の「.5」は、大陸間プレーオフで勝てば出場、負ければ予選敗退となることを示す。
3. 日本代表
W杯には’98年の初出場から7回連続で出場し、今回が8大会連続8回目。ベスト16には4回進出。「SAMURAI BLUE」という愛称は’06年にサポーター投票で選ばれ’09年から正式な愛称に。今回の日本代表メンバーは5月15日発表。
4. ハーフタイムショー

7月19日にニューヨーク/ニュージャージースタジアムで行われる決勝戦で、前半終了後に25分程度のショーが行われる。ロックバンド・コールドプレイのクリス・マーティン(写真)がプロデュースし、アーティストが複数出演予定。FIFAジャンニ・インファンティーノ会長は「世界最大のスポーツイベントにふさわしいショーになる」と発信。
●掲載している情報は2026年5月12日現在のものです。
2026年Oggi7月号「Oggi大学」より
構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部
Oggi編集部
「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
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