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2025.08.18

「ドイツではビールは16歳になってから」ビールの本場・ミュンヘンのビールへの本気度がスゴかった〈旅コラムニスト・山下マヌー〉

先日取材でミュンヘンを訪れた際、初めて知った「ドイツではビールは16歳になってから」そこには、ビールが日常に深く根ざしているからこその、きめ細やかな社会的配慮がありました。旅行コラムニスト・山下マヌーさんがお送りします。

山下マヌー Manoue Yamashita

夏だ! ビールだ! オクトーバーフェスト発祥の地・ドイツという国の美学

「お酒は20歳になってから」。日本では当然のこのルールも、国境を越えれば異なる価値観と出会ったりします。先日、ANA「翼の王国」での取材でミュンヘンを訪れた際、初めて知った「ドイツではビールは16歳になってから」。さすがオクトーバーフェスト発祥の地らしい、実に象徴的なルールです

世界初のビール醸造所が誕生したのは約1000年前のミュンヘン郊外にある修道院

実は世界初のブルワリー(ビール醸造所)が誕生したのは、今から約1000年前のミュンヘン郊外にある修道院。当時のヨーロッパでは水質の衛生状態が劣悪で、疫病の温床となることが少なくなかったのです。そこで、発酵による殺菌作用を持つビールやワインは「安全な飲み物」として重宝され、赤ちゃんや子どもにまで飲ませていたという記録も。日本では考えられませんが、ドイツにおけるビール文化の原点はそこにあるのかもしれません。

そうした歴史を背景に、現代のドイツでもビールは「暮らしに寄り添う存在」として定着しています。週末の街角では、伝統的なレザーホーゼン(革製のショートパンツ)に身を包んだ若者たちが、瓶ビール片手に談笑しながら移動する光景は珍しくありません。興味深いのは、彼らの飲み方。日本であれば公然とした飲酒は好ましくないとされがちなシチュエーションでも、彼らは決して大声を上げることなく、座り込むこともない(たまたまそのような場面に遭遇しなかっただけかもしれませんが…)。この洗練された飲酒マナーこそが、ドイツのビール文化成熟度を物語っているのだと感じます。

ドイツ人にとってビールは文化そのもの。適切な“酒育”を前提としたルールも

「16歳からビールが許可される」という法律は、単なる年齢規定を超えた意味をも持ちます。さらに驚くべきは「保護者同伴なら16歳未満でも飲酒可能」という条項。適切な“酒育”を前提とした、極めて現実的なアプローチなような気もします。一方で「レストランではビールより安価なノンアルコール飲料の提供が義務化」されています。これは「ビールが安価すぎるため、未成年者が安易に選択することを防ぐ」という配慮から生まれたルール。ビールが日常に深く根ざしているからこその、きめ細やかな社会的配慮なんですね。

ドイツビール文化のさらなる真髄を表すのが、500年以上にわたって守られてきた「ビール純正令」。「ビールは麦芽・ホップ・水・酵母の4つの原料のみで醸造すること」。このシンプルかつ絶対的な規定により、それ以外の材料を使用した飲料は「ビール」と名乗ることができないんです。日本では発泡酒や第三のビールも便宜上「ビール系飲料」として親しまれていますが、ドイツにはそのような曖昧さは許されないし、存在しません。この徹底的な純粋性への固執。ドイツ人の職人気質と品質への絶対的こだわりはビールにまで浸透しているということです。

世界最大規模を誇るミュンヘンのオクトーバーフェストでは、さらなる厳格さが要求されます。会場で提供可能なのは「ミュンヘンの水脈を使用して醸造されたビール」に限定され、現在この条件を満たすのは歴史ある6社(シュパーテン、アウグスティナー、パウラナー、ハッカープショール、ホフブロイ、レーヴェンブロイ)のみ。これらの醸造所は、フェスト期間限定の特別なビールを仕込みます。麦汁濃度13.5%以上、アルコール度数5.8〜6.4%という精密な数値の規定…。これはもはやクラフトマンシップを超越した、芸術の領域ですね。

一見すると、ドイツのビールを取り巻く規制は過度に厳格に映るかもしれない?「たかがビール」という気持ちにもなったりします。しかしながらドイツ人にとってビールは単なる嗜好品ではなく、文化そのもの。厳しすぎるとも思える規律を設けることで、世界中の人々に愛され続ける品質を維持してきた… そんな姿勢こそが、ドイツという国の美学なのかもしれません。ということで、Prost!(乾杯!)

山下マヌー Manoue Yamashita

雑誌編集者を経て旅行文筆家に。渡航回数400回超、著作数は65タイトル。2022年よりANA「翼の王国」スーバーバイザーを務める。

After a career as a magazine editor, became a travel writer, embarking on over 400 journeys and authoring 65 books. Since 2022, has served as a supervisor for ANA’s 「Tsubasa no Ōkoku」

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