暑い日本の夏を抜け出し、オーロラを見に行く?

暑くて寝苦しい夜が続く日本の夏。そんな時に夜空いっぱいに広がる、冷たい宇宙のカーテンのようなオーロラを想像することは難しいかもしれない? ところが実は夏にもオーロラが出現しているという話。

「オーロラって、行けば必ず見えるの?」
オーロラに関してよく聞かれる質問です。その裏にあるのは「せっかく行ったのに見られなかったらどうしよう…」という、ちょっとした不安。遠くカナダの大地まで飛んで行って、ひと目も見られなかったら、なんてことは考えたくないですから。

前回ANA機内誌「翼の王国」の取材中、出会った現地ツアー会社や一般の人々の多くの答えは「3日滞在すれば、きっと見られる」というもの。
そしてそれは間違いではないような気がします。実際自分たちもそうで、初日は雲が空を覆っていて、うっすらと見えた程度。しかし2日目。天気は快晴。夜10時にホテルを飛び出して、雲のない方角へ1時間ほど走ったころで窓の外を見ると、そこには光のカーテン、オーロラが出現。
クルマの中からでもはっきり見えるほどの輝き。光のカーテンが風に揺れるかのように、静かに空が踊り始めたのです。

その後さらにオーロラの光が明るく照らす方へとクルマを進め、公園で待ち構える。すると次々にオーロラが現れては消えていき、光が空を、そして自分たちの身体と心を包みこんでいったのでした。
現れては広がり、渦巻き、降り注ぎ、消えていき、また新たなカーテンが降りてくる。その繰り返しは、まるで地球と宇宙の間で繰り広げられる、静かなダンス。これまでの自分の人生の中、一番美しく幻想的な風景に出会った時間だったというのは確かです。

ところで、オーロラは冬だけのものだと思っていませんか? 実は、オーロラが出現するのは冬だけではないんです。
今回我々が取材したイエローナイフ、実は8月10日前後から10月末ごろまでが「夏・秋のオーロラシーズン」とされていて、特に8月下旬〜9月中旬は夜の暗さと気温のバランスがよく、観測に適した時期とされているということはあまり知られていません。

この時期の魅力は、なんといっても寒すぎない快適さと、湖面に映る“鏡張りのオーロラ”。冬のような極寒装備が不要で、澄んだ空気の中、湖に反射する幻想的な光景を楽しめるのは夏〜秋だけの特権。
ちなみに、2025年は太陽活動が活発な「当たり年」とされており、例年以上に美しいオーロラが期待できるそうですよ。
さあ、旅せよ乙女。夜空のダンスフロアが、あなたを待っています。

協力:ANA翼の王国

山下マヌー Manoue Yamashita
雑誌編集者を経て旅行文筆家に。渡航回数400回超、著作数は65タイトル。2022年よりANA「翼の王国」スーバーバイザーを務める。
After a career as a magazine editor, became a travel writer, embarking on over 400 journeys and authoring 65 books. Since 2022, has served as a supervisor for ANA’s 「Tsubasa no Ōkoku」