「江湖」という言葉にふれたとき、どこか異国情緒のある響きを感じる人もいらっしゃるかもしれません。中国ドラマを通して知ったという人もいるでしょう。
この記事では「江湖」という言葉について、少しずつ理解を深めていきましょう。
「江湖」とは? ドラマで注目の言葉の読み方と意味を解説
中国時代劇『江湖英雄伝〜HEROES〜』のタイトルにも登場する「江湖」という言葉。日常ではあまり見かけない表現かもしれませんが、そこには豊かな意味が込められています。
ここでは、読み方とともに、意味を丁寧にひもといてみましょう。言葉の理解が、作品の世界観を味わう手がかりになるかもしれません。

「江湖」の読み方と意味、使い方をチェック
「江湖」は、「こうこ」と読みます。辞書を参照しながら、意味を確認してみましょう。
こう‐こ〔カウ‐〕【江湖】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《「ごうこ」とも》
1 川と湖。特に、中国の揚子江と洞庭湖。
2 世の中。世間。一般社会。「広く―の喝采を博す」
3 都から遠く離れた地。隠者の住む地。
「猫を友にして日月を送る―の処士」〈漱石・吾輩は猫である〉
「江湖」とは、川と湖を指し、その中でも特に揚子江(ようすこう)と洞庭湖(どうていこ)を意味します。
そのほか、「世の中」や「世間の人々」を意味しますよ。「江湖の好評を博した」などというように使います。
『江湖英雄伝〜HEROES〜』の「江湖」の世界観
「江湖」という言葉の意味を踏まえたうえで、中国時代劇『江湖英雄伝〜HEROES〜』に描かれる世界観を見ていきましょう。古典的な武侠の雰囲気と現代の感覚が交錯するこの作品は、「江湖」のイメージを豊かに体現しています。

『江湖英雄伝〜HEROES〜』のあらすじは?
『江湖英雄伝』は、若きヒーローたちが固い絆で結ばれながら、壮大な陰謀に立ち向かうロマンスとアクションが融合した時代劇です。
物語の中心となるのは、白須(はくす)園で武芸を学ぶ王小石。彼はある日、師匠から託された小箱を、金風細雨(きんぷうさいう)楼の後継者争いに関わる重要な人物・蘇夢枕(そむちん)に届けるよう命じられます。
その道中で出会うのが、江湖で名を上げることを夢見る孤高の剣客・白愁飛(はくしゅうひ)と、洛陽王の娘にして蘇夢枕の妹弟子である温柔(おんじゅう)。3人は都へ向かう旅の中で、しだいに深い信頼関係を築いていきます。
彼らを待ち受けるのは、権力と策略が交錯する世界。王小石と白愁飛はまるで正反対の性格でありながら、互いに支え合いながら困難に立ち向かっていきます。
また、王小石と温柔の間に芽生えるのは、ゆっくりと歩み寄るような一途な思い。さらに、敵対する組織に属しながらも心を通わせる蘇夢枕と雷純(らいじゅん)、そしてその恋を見守る白愁飛の想いなど、多層的なロマンスも物語に彩りを添えています。
『江湖英雄伝〜HEROES〜』のキャスト
『江湖英雄伝』の世界を彩るのは、中国ドラマ界でも注目を集める若手俳優たちです。それぞれが持つ魅力が、物語に深みと余韻を与えています。
主人公・王小石を演じるのは、ツォン・シュンシーさん。『擇天記(たくてんき)~宿命の美少年~』で注目され、『宮廷衛士の花嫁』では凛々しい衛士役を好演するなど、確実にキャリアを重ねてきた俳優です。本作では、正義感にあふれる心優しいヒーローとして、理想と現実のはざまで葛藤しながらも成長していく姿を自然体で演じています。
そんな王小石と深い絆を結ぶ白愁飛を演じるのは、リウ・ユーニンさん。音楽活動で知られる一方で、『長歌行』をはじめとする時代劇で存在感を放ってきた彼は、クールな外見の裏に不器用な優しさを秘めた役どころを繊細に表現。静けさの中に情熱がにじむような演技が印象的です。
そして、2人と行動を共にする温柔を演じるのが、ヤン・チャオユエさん。『鳳舞伝 Dance of the Phoenix』など話題作で経験を重ねてきた彼女は、本作でも芯の強さと純粋さを併せ持つ役柄に挑戦。王小石に対して素直になれないツンデレな一面が、物語にやわらかなアクセントを加えています。
「江湖会」とは?
「江湖」という言葉を含む表現には、「江湖会(ごうこえ)」という仏教に関わる言葉もあります。少し専門的な内容ですが、その背景を知ることで、言葉の世界がさらに深まっていくかもしれません。

「江湖会」は修行の場
「江湖会」とは、禅宗において修行中の僧たちが一定期間集まり、厳しい参禅修行を共にする集まりのことを指します。「結制(けっせい)」や「安居(あんご)」とも呼ばれます。
かつては、夏と冬の年2回、三か月間にわたり、僧侶たちが一つの寺院に集まって参禅修行に励む習わしがありました。しかし、禅宗が地方へと広がり民衆に向けて布教が進む中で、従来の修行色は次第に薄れ、民間信仰との融合が進んでいきます。
そうした流れの中で、禅本来の修行精神を見直す動きが起こり、「江湖会」が再評価されるようになります。とくに曹洞宗では「千人江湖」と呼ばれる大規模な江湖会が開かれ、戦国大名の支援のもと、地域の禅僧たちが集結。
僧侶だけでなく、一般の人々も授戒などを通じて参加できるよう工夫され、修行の場でありながら、民衆への教化にも大きな役割を果たすようになっていきました。
参考:『国史大辞典』(吉川弘文館)
最後に
「江湖」という言葉は、日常で使うことはあまりないかもしれません。しかし、その奥には、多層的な意味がひそんでいます。言葉の意味を深く知ることは、とても面白いですね。
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