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「幸甚です」の正しい意味は?
「幸甚です」は「この上なくありがたく思います」という趣旨で、深い感謝や喜びの気持ちを表す言葉です。
漢字の「幸」には「幸い」や「ありがたい」という意味があり、「甚」には「はなはだしい」「非常に」などの意味があります。
つまりこれらの言葉を組み合わせている「幸甚です」というフレーズは、「非常に幸いである」という意味の言い回しです。
【場面別】「幸甚です」を使った文例

ビジネスシーンで生じやすい場面別に「幸甚です」を用いる文例をチェックしていきましょう。
♦︎お願いをする場面
ビジネスシーンで相手に何かを「お願い」するときには、メールや手紙に「幸甚です」を記すと丁寧で格式ある文章に見せられます。
相手に確認をしてほしくてお願いをするとき…
「お忙しいところ恐縮ですが、ご確認いただけますと幸甚です」
相手に対応をしてほしくてお願いするとき…
「ご多忙の折、誠に恐れ入りますが、ご対応いただければ幸甚に存じます」
相手に検討をしてほしくてお願いをするとき…
「何卒ご高配を賜りますよう、お願い申し上げます。ご検討いただけますと幸甚です」
♦︎感謝を述べたい場面
ビジネス上の相手への感謝を格式ある言葉で伝えたいシチュエーションにも、「幸甚です」は使いやすいフレーズです。
相手が気を遣ってくれたことへの感謝を伝えたいとき…
「このたびはご配慮を賜り、誠にありがとうございました。心より幸甚に存じます」
相手の行動に感謝を示したいとき…
「ご多忙中にもかかわらず、ご対応いただき幸甚に存じます」
♦︎協力を依頼する場面
ビジネスシーンで相手への協力を依頼したい場面でも、「幸甚です」を用います。
相手からの継続的な支援を依頼したいとき…
「今後とも変わらぬご支援を賜れますと幸甚です」
相手から引き続き指導や助言を受けたいとき…
「引き続きご指導ご鞭撻を賜れますと幸甚に存じます」
「幸甚です」を使うのが相応しくないシチュエーション

「幸甚です」は非常にフォーマルな表現ですので、シチュエーション次第では違和感が強まり、相応しくない表現だと受け取られます。
「幸甚です」を使うべきではないシチュエーションを解説します。
♦︎NG1:カジュアルな会話や私的な連絡
フォーマルな言葉である「幸甚です」は、日常会話や友人・家族とのカジュアルなやり取りには不自然な言い回しです。
たとえば「昨日の件を手伝ってもらって、幸甚です」といった言い回しは、誤っている日本語だと受け取られやすいでしょう。
♦︎NG2:断定的な報告や事実の伝達
「幸甚です」は、「ありがたい」や「うれしい」といった感情を込めた依頼や感謝に使う言葉ですので、事実や報告を記す文には適しません。
たとえば「来週から新しい部署に異動となりましたので、ご理解いただけると幸甚です」と記してあれば、受け取った相手は感情を押し付けられているように感じかねません。
♦︎NG3:目下の相手への依頼や連絡
「幸甚です」は敬語を含む表現です。そのため部下や後輩など目下の相手に使うと、上下関係が逆転しているかのような不自然な言葉に受け取られやすいでしょう。
たとえば「この件、対応いただければ幸甚です」と部下に伝えるのは、不適切な使い方です。
ビジネスシーンで使える「幸甚です」の言い換え3例

「幸甚です」は非常に丁寧ですが、硬い表現です。
シチュエーションや文体によっては、よりふさわしい表現に言い換えるとスマートでしょう。
アラサー世代が使いやすい言い換え例を3つ解説します。
♦︎「ありがたく存じます」
「幸甚です」と比較すると丁寧ながらも少し柔らかい印象で、「ありがたく思います」の謙譲語表現です。
意味としては「幸甚です」に非常に近く、「ご対応いただけましたら、ありがたく存じます」などとビジネスメールでもよく使われています。
♦︎「幸いです」
「幸いです」は、「うれしく思います」「助かります」といった意味で日常的なビジネス言葉として、敬意を保ちたい相手に対して使われています。
「幸甚です」と比較するとややカジュアルで、丁寧すぎる言葉にならない分、社内や親しい取引先とのやり取りにも適しています。
♦︎「助かります」
「助かります」には「とても助けになります」「ありがたいです」といった意味があり、「幸甚です」よりも感謝をストレートに伝える表現として使えます。
フランクな印象があるフレーズですので、上司や社外の相手には不適切な場面も少なくありませんが、社内連絡や同様など親しい間柄であれば「幸甚です」よりも使いやすい言い回しでしょう。
「幸甚です」は書き言葉として用いるフレーズ
「幸甚です」は、主にビジネスシーンや公的な文書で使われている書き言葉です。
口頭ではほとんど使われず、仮に使ったとしても不自然で硬すぎる印象を与えがちでしょう。
基本的には文書やメールなどでフォーマルな印象を心がけたいシーンで使うと、間違いがありません。
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並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。