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「格物致知(かくぶつちち)」という四字熟語を聞いたことはありますか? この言葉は、古代中国の経書『礼記』大学に由来します。「格物致知」は、現代においても政治を行う上で非常に大切な概念です。
この記事では、「格物致知」の意味や使い方について紹介していきましょう。
「格物致知」の意味と背景
まずは、「格物致知」という言葉がどのような意味を持つのか、基本的なところから確認します。

「格物致知」の読み方と意味
「格物致知」は「かくぶつちち」と読みます。辞書では、次のように説明されています。
かくぶつ‐ちち【格物致知】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
物の道理を窮め、知的判断力を高める意で、理想的な政治を行うための基本的条件、モットー。
[補説]「礼記」大学の「致知在格物」の意味を、朱子は「知を致すは物に格(至)るに在り」と事物の理に至ることと解し、王陽明は「知を致すは物を格(正)すに在り」と心の不正を去ることと解した。
「格物致知」は、中国哲学の用語です。この言葉の解釈には諸説あります。
宋代の儒学者・朱子は、「自分の知識を極限にまで推し広めること」と解釈しました。一方、明代の王陽明は、「自然な心情、本来的な心のはたらきを徹底的に発現させること」と捉えました。
つまり、「格物致知」は、物事の本質を探りながら、知的な理解力を高めていくことを意味しています。それは、理想的な政治を行うための基本的な条件ともされています。
「格物致知」の由来は?
「格物致知」は、中国古典『大学』に記された言葉に由来します。
『大学』では、儒学の学びを「格物・致知・誠意・正心・修身・斉家(せいか)・治国・平天下」の八つの段階に整理して説いています。「格物」と「致知」はその最初に位置づけられています。
この中の一節に「致知在格物」という記述が出てきます。こうした語句が思想史の中で大きく取り上げられるようになったのは、宋代以降のことだそうです。
参考:『日本大百科全書』(小学館)、『世界大百科事典』(平凡社)

「格物致知」の使い方と例文
ここでは、「格物致知」の使い方を具体的な例文とともにみていきましょう。
為政者には、格物致知の精神をもって政策の背景にある課題を見極めてほしいと思います。
政策決定において、表面的な問題ではなく、その背後にある本質的な構造や要因を深く理解する姿勢を求める表現です。格物致知は、その基盤となる思考態度を表しています。
歴史を振り返ると、格物致知に立脚した統治こそが、人々の信頼を得る政治につながっていたように思われます。
思想としての格物致知が、過去の政治において実際にどのように生かされていたかを静かにふり返る視点の例文です。民意と知性のバランスに着目しています。

単なる人気取りではなく、格物致知を通して長期的な視野で政策を考える政治家が求められています。
目先の判断よりも、物事の理を探究する姿勢が政治には不可欠だという問題提起をする例文です。格物致知の「深く考える力」が重要視されています。
最後に
「格物致知」は、物事の本質を追求し、知識を深める姿勢を表す言葉です。この考え方は、政治だけでなく、学問や自己修養の場面で重要な指針となり得るでしょう。日々の生活や学びの中で、「格物致知」の精神を意識することで、より深い理解や成長を目指すことができるかもしれませんね。
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