「大見得を切る」とは? 基礎知識を解説
「大見得を切る」の読み方は、「おおみえをきる」です。「大見得を切る」とはどのような言葉か、詳しい意味や「見え」「見得」「見栄」との違い、「見得を切る」、歌舞伎における「見得」、使い方・例文を解説します。
大見得を切るには2つの意味がある
「大見得を切る」が持つ2つの意味は、以下のとおりです。
<歌舞伎における意味>
歌舞伎で、役者が特に際だった見得の所作をする。
<日常生活で使われる際の意味>
自信があると強調するために大げさな言動をとる。また、できもしないことをできるように言うこと。
そもそも「見得(みえ)」とは、歌舞伎のクライマックスのときにおこなう演技の型のひとつのことからきています。歌舞伎役者が一瞬動きを止めて、にらむような表情をする演技です。
人前で意識的に自信たっぷりの発言や行動、態度を示すようなことを指す意味は、そこから転じて使われるようになりました。
大見得(おおみえ)を切(き)・る
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 歌舞伎で、役者が特に際だった見得の所作をする。
2 自信のあることを強調するために大げさな言動をとる。また、出来もしないことを出来るように言う。

「見え」「見得」「見栄」の意味や違い
「みえ」という言葉を漢字にする場合、「見え」「見得」「見栄」といった選択肢があります。そのため、漢字表記で迷うことがあるかもしれません。
これらの意味や違いを確認しましょう。
<見え>
見た目や外観。
<見得>
見た目の姿を意識して、実際以上によく見せようとする態度。
<見栄>
歌舞伎の演技・演出のひとつ。
これらは動詞「みえる」の連用形からきていて、「見栄」「見得」は当て字だとされています。
なお、「見得」は「けんとく」とも読めます。「けんとく」と読む場合には、仏語(ぶつご)の「自らの智慧(ちえ)を働かせて真理を悟ること」もしくは「会得すること」「理解すること」という意味になります。
みえ【見え/見▽栄/見得】 の解説
出典:小学館 デジタル大辞泉
《動詞「みえる」の連用形から。「見栄」「見得」は当て字》
1 見た目。外観。みば。「—を飾る」
2 (見栄)見た目の姿を意識して、実際以上によく見せようとする態度。「—で英字新聞を読む」
3 (見得)歌舞伎の演技・演出の一。俳優が、感情の高揚した場面で、一瞬動きを停止して、にらむようにして一定のポーズをとること。
「見得を切る」とも表現可能
「大」を外して、「見得を切る」とも表現可能です。意味は、「歌舞伎において見得をおこなうこと」「ことさらに自分の力を誇示するような態度・言動をすること」です。このように、見得を切るの意味も大見得を切るのものと似ています。
なお「大見得」とは、大振りの見得のことを指します。

歌舞伎における「見得」とは
歌舞伎における「見得」とは、感情の高まりなどを表現するための演技の型です。歌舞伎役者が動きを止め、首を回してから特徴的な目をして静止します。「見得」のときは片目だけをより目にするため、左目と右目が違うところを向いています。
これは、写楽の浮世絵などにも描かれるほど印象的なシーンです。「見得」は、舞台上でのクローズアップの手法として、その瞬間の観客の視線を集めようとして実践されていたものだといわれています。
「見得」の瞬間には、あわせて効果音があることが多いです。「ツケ打ち」と呼ばれるスタッフが2本の木と板を用いて音を出し、その効果音にあわせて歌舞伎役者が動きを止めます。
大見得を切るの使い方・例文
「大見得を切る」の使い方を簡単な例文で確認しましょう。
- あのとき「できる」と大見得を切ってしまったせいで、仕事に追われる羽目になってしまった
- 「これくらいなら一人でやれる」と自分で大見得を切ったんだから、頑張ろう
- 部長が社長に大見得を切るせいで、彼の部下はいつも大変だ
- お酒の勢いで、ついつい「ここは自分がおごります」と大見得を切ってしまった。給料日までどうしよう
大見得を切るの関連語もチェック
大見得を切るの類語・言い換え表現には「顕示する(けんじする)」「誇示する(こじする)」が挙げられます。また、対義語表現は「自粛(じしゅく)」「自制(じせい)」などです。
それでは、これらの関連語の意味もあわせて確認していきましょう。

大見得を切るの類語・言い換え表現
「自信があると強調するために大げさな言動をとる」という意味と似ている類語・言い換え表現は、以下のとおりです。
<顕示する(けんじする)>
わかるようにはっきりと示すこと。
<誇示する(こじする)>
誇らしく思って示すこと。得意になって見せつけること。
顕示するの「顕(けん)」が持つ意味は、「はっきりと目立つ」「隠れていたものを明らかにする」などです。「示(じ)」には「わかるようにはっきりと見せる」「おしえる」という意味があります。
また、「誇示する」の「誇」の訓読みは「ほこる」です。「大げさに言うこと」「自慢すること」を指します。
大見得を切るの対義語表現
対照的な表現は、「控えめ・遠慮がちな言動をすること」を意味する以下のような言葉だといえるでしょう。
<自粛(じしゅく)>
自分から進んで、行いや言動、態度をつつしむこと。
<自制(じせい)>
自分の感情や欲望を抑えること。
たとえば、自粛は「天候が荒れそうなため外出を自粛する」「今年は身内に不幸があったばかりのため、年賀はがきを出すのは自粛します」などと使います。
自制の使い方は、「彼の一方的な言い分に反論したくなったが、周りの雰囲気を壊さないようにと自制した」などです。
大見得を切るを正しく使おう!
大見得を切るが持つ意味は、使用するシーンが歌舞伎かそれ以外かで異なります。歌舞伎であれば「役者が特に際だった見得の所作をすること」を意味します。歌舞伎以外のシーンならば、「自信があると強調するために大げさな言動をとる」また、「できもしないことをできるように言う」などの意味です。
「大」を外し、「見得を切る」だけでも似た意味で使えます。また、「大見得」と表現する場合は、「大振りの見得のこと」を指します。
言い換えが可能な表現には、「顕示する(けんじする)」「誇示する(こじする)」などです。
ぜひこの機会に言葉の意味・読み方・使い方・言い換えできる表現などを確認して、正しく使えるようになりましょう。
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