「下衆(げす)」という言葉を聞いたことがある人は、多いでしょう。「下衆」という言葉は、品のない振る舞いや、浅ましい態度を指す際に使われることが多いです。しかし、もともとは別の意味を持っていました。時代とともに変化した背景を知ることで、言葉の持つニュアンスがより明確になるでしょう。
この記事では、「下衆」という言葉について深掘りしていきます。
「下衆」とは? 現代の使われ方と本来の意味
まずは「下衆」という言葉の意味と由来について確認していきましょう。
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「下衆」の意味は? 由来も解説
「下衆」は「げす」と読みます。辞書で意味を見てみましょう。
げ‐す【下▽種/下▽衆/下▽司】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名・形動]
1 心根の卑しいこと。下劣なこと。また、そのようなさまやその人。「―な根性は持つな」
2 身分の低い者。
「未学を軽んぜず―をも侮らず」〈露伴・五重塔〉
3 「げし(下司)」に同じ。
「下衆」は、もともと身分や素性の卑しい人を指していました。「下種」や「下司」、「下主」とも書きます。
しかし、時が経つにつれ、単に身分を示すものではなく、品性や行動に対する評価として使われるようになったようです。現在では、礼儀に欠けた言動や、卑しい振る舞いを指す言葉として広まっています。
「下衆の勘繰り」の意味と使われ方
「下衆の勘繰り」とは、品性の卑しい人は何かにつけて妙に気を回し、邪推するという意味を持ちます。つまらない邪推をする人に対して、「品性が下劣だ」と暗に言いたいときにも使われることがあるでしょう。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
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「下衆」の類語や言い換え表現
「下衆」は強い否定的な意味を持つため、使う場面によっては注意が必要です。時には別の表現を用いることで、伝えたいニュアンスをより適切に伝えられるかもしれません。同じような意味を持つ言葉の特徴を知り、適切に使い分けることが大切でしょう。
卑しい(いやしい)
「卑しい」は、品性が欠けていたり、欲深さが表に出ていたりする様子を指します。例えば、物を独り占めしようとする人に対して「卑しい考え方」と表現することで、その行動を指摘することができます。
品がない
「品がない」は、洗練されていない態度や言葉遣いを指す表現です。「下衆」と比べると、攻撃的なニュアンスが弱く、やや婉曲的な言い方といえるでしょう。例えば、「大声で人の悪口を言うのは品がない」と表現すれば、直接的な非難を避けつつ、相手の振る舞いを指摘することができるでしょう。
下劣(げれつ)
「下劣」は、品性や道徳的な観点から見て、非常に低俗であることを指します。「下衆」と同じように、人の振る舞いや考え方を否定的に評価する際に使われますが、「下劣」はより客観的な表現になることが多いかもしれません。
例えば、「人を騙して利益を得るのは下劣な行為だ」といった形で使われることがあり、道徳的に許されない行為を批判する場面で用いられるでしょう。
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コラム|「下衆ヤバ夫」とは? どこから生まれたの?
「下衆ヤバ夫」は、フジテレビのコント番組『リチャードホール』(2004年10月〜2005年9月放送)で、アンタッチャブルの山崎弘也さんが演じたキャラクター名のことです。
このキャラクターは、さまざまな会場に現れては下衆なスピーチや替え歌を披露するというものでした。
「下衆ヤバ夫」は、当時の放送をきっかけに一部で話題となり、『リチャードホール 永久保存版 下衆ヤバ夫コレクション くりぃむしちゅー×アンタッチャブル』というDVDまで発売されましたよ。気になる方はご覧になってみたら、いかがでしょうか?
最後に
「下衆」という言葉は、元々は身分を表す言葉でしたが、時代とともに意味が変化し、現在では否定的な意味で使われることが多くなっています。「下衆の勘繰り」のような表現は、使う場面によっては相手を不快にさせることもあるため、慎重に選ぶことが求められるかもしれません。
一方で、ネット文化の中では新しい形で広まることもあり、言葉の持つ印象は変化し続けているようです。言葉の意味を正しく理解し、適切な使い方を考えることが大切ですね。
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