誰かの機嫌を取るために、必要以上にお世辞を言ったり、同調する場面は意外と多いのかもしれません。人間関係を円滑にするための振る舞いの一つともいえますが、度が過ぎると周囲からの信頼を失うこともあるでしょう。「阿諛追従」という言葉は、こうした行動を指します。
「阿諛追従」が持つ意味や使われる背景について、考えていきましょう。
「阿諛追従」とは? 意味と由来
まずは、「阿諛追従」の意味と成り立ちについて確認していきましょう。
「阿諛追従」の読み方と意味、成り立ちは?
「阿諛追従」は、「あゆついしょう」と読みます。辞書で意味を確認しましょう。
あゆ‐ついしょう【×阿×諛追従】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名](スル)相手に気に入られようとして、大いに媚(こ)びへつらうこと。「上役に―する」
「阿諛追従」とは、目上の人に対して媚びへつらい、気に入られようとする態度を指します。
「阿諛追従」の「阿諛」は、相手に合わせてへつらうことを意味します。一方、「追従」も、相手の気にいるような言動をとり、こびへつらうことを指しますよ。同じ意味を持つ言葉を2つ重ねることで意味をより強調していると考えられます。
「阿諛追従」とおべっかの違いは?
「阿諛追従」と似た言葉に「おべっか」があります。違いはあるのでしょうか? 見ていきましょう。
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おべっかと阿諛追従の違い
「おべっか」の意味も辞書で確認しましょう。
おべっか
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
解説・用例
〔名〕
(1)ごきげんをとること。また、その時の巧みなことば。へつらい。おべんちゃら。追従(ついしょう)。軽薄(けいはく)。
(2)「おべっかもの(─者)」に同じ。
「おべっか」は、相手に気に入られるためにお世辞を言うことを指します。日常会話でも使われることが多いでしょう。
「阿諛追従(あゆついしょう)」は特に目上の人に媚びへつらい、従順な態度を取ることを意味します。「おべっか」よりも強い意味を持ち、特に政治や職場での人間関係において使われることが多いでしょう。
「阿諛追従」の対義語は?
反対の意味を持つ言葉を知ることで、「阿諛追従」が表す概念がより明確になるでしょう。
直言(ちょくげん)
「直言」とは、相手の立場に関係なく、率直に意見を述べることを指します。目上の人に対しても、遠慮せずに必要なことを伝える姿勢が含まれていますよ。周囲の評価を気にするのではなく、誠実な態度を大切にする考え方です。
諫言(かんげん)
「諫言」は、特に目上の人に対して、必要な忠告を行う行動を指します。相手のためを思って苦言を呈することが含まれているため、「阿諛追従」とは対照的な姿勢といえるでしょう。
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「阿諛追従」を英語で表現するには?
「阿諛追従」を英語で伝える場合、いくつかの表現が考えられます。ここでは2つ紹介しましょう。
flattery
「flattery」は、お世辞やおべっかを意味する言葉です。主に、相手を喜ばせるために使う表現だといえるでしょう。
sycophancy
「sycophancy」は、仕事や政治の場面で使われることが多く、「阿諛追従」の持つニュアンスに近い表現だといえるでしょう。以下に例文を紹介します。
例文:He is always engaging in sycophancy toward his boss.
(彼はいつも上司に阿諛追従している。)
「阿諛追従」の使い方と例文
「阿諛追従」という言葉は、主に権力や立場の強い人物に対して、必要以上に迎合する行為を指します。この言葉がどのような場面で使われるのか、具体的な例を見ていきましょう。
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「彼は阿諛追従することで昇進を狙っているが、周囲からの評価はあまりよくない」
上司に対して過剰にへつらい、自分の評価を高めようとする姿勢を表しています。しかし、そうした態度が周囲の信頼を失う原因にもなり得ることが伝わってきますね。
「権力者の周囲には阿諛追従する者が多かったが、それがかえって国を揺るがす要因となった」
歴史の中では、権力者に対する過度な迎合が、的確な判断を妨げることもありました。この例では、阿諛追従が結果的に組織や国全体に悪影響を及ぼす可能性を示唆しています。
最後に
「阿諛追従」は、目上の人に対して必要以上に迎合する態度を表す言葉です。人間関係を円滑にするための振る舞いと、主体性を失う迎合との違いを意識することが大切かもしれませんね。
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