「デューデリジェンス」と聞いて、どのようなイメージを持ちますか? 初めて耳にする方も多いかもしれませんが、投資やビジネスの世界では欠かせない重要なプロセスです。
特に最近では、不動産投資やM&Aだけでなく、「人権デューデリジェンス」という新たな視点も注目されています。この記事では、デューデリジェンスの基本から最新のトレンドまでをわかりやすく解説します。
デューデリジェンスとは?
あまり聞き慣れない言葉は、まずは辞書を引くに限ります。英語表記では「due diligence」です。直訳すると「相当の注意・配慮」とのことです。危険な場面やリスキーな局面を連想させる言葉ですね。さらに調べてみると、デューデリジェンスとは、「投資対象となる資産の価値や収益力、リスクなどを詳細に調査・分析すること」を指す言葉だということがわかりました。
特に、不動産投資やM&Aにおける、経営・財務・法務・環境など多岐にわたる視点から行われる、詳細な調査のことを指します。これは「欠かせないステップ!」ということになりますね。
歴史と起源を知って理解を深める
デューデリジェンスの概念は、投資の世界では長い歴史があるとのこと。由来を紐解くと、投資家がリスクを最小限に抑えるために行っていた詳細な調査が起源。現代では、法的な義務としても広く認識されており、国際的な企業活動においても標準的な手続きとなっています。
なぜデューデリジェンスが必要なの?
前出の説明でもおわかりのとおり、莫大な資金を投じるM&Aや大掛かりな市街地開発事業などでは「見込み違いであった…」とか「失敗でした」では済まされないわけです。予期せぬ問題の発生を未然に防ぐためにも、投資のリスクを最小限に抑え、投資対象の正確な価値を把握することが必要なのです。そのことで、投資家は安心して意思決定を行うことができるのです。
知っておきたい、人権デューデリジェンス
不動産投資やM&Aの分野にルーツを持つデューデリジェンスですが、異なる分野で使われはじめ注目されています。近年、国際的に企業の社会的責任が、厳しく問われるようになり「人権デューデリジェンス」が注目を集めています。その点を取り上げ考えていきましょう。
人権デューデリジェンスの基本とは?
人権デューデリジェンスとは、企業がビジネス上の全工程(原材料の調達から製造、販売、消費に至るまで)で人権侵害リスクについて調査し、予防・軽減策を講じることです。企業は、サプライチェーン全体にわたる人権リスクを把握し、予防するための取り組みをしなければならなくなってきています。
人権デューデリジェンスが注目される理由
経済のグローバル化にともない、人の交流・物流・金融・情報・文化などのボーダーレス化が急速に進んでいます。その結果、飛躍的に経済成長や技術革新は成し遂げているものの、人々の生活、各国間に大きな経済格差を生み出しました。こうした「格差社会」は、見方を変えれば富める者の生活は貧困者の犠牲によって成り立つ構造です。
この「格差社会」を打破することを目的として、2011年に国連において「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されました。これにより、「企業は人権尊重の責任を負う」ということが明確化されました。以後、しだいに国際的な基準や法規制の強化が浸透してゆき、人権デューデリジェンスの重要性も高まりをみせています。
具体的にどうやるの? 人権デューデリジェンスの手順
ここでは、企業がおこなっている人権デューデリジェンスのプロセスを、簡単に紹介します。
・取引先を含めた人権侵害リスクの調査・特定
・社内での責任部門の明確化と予防策の講じる
・第三者を交えた追跡調査とビジネスの点検・改善
・取り組みについての情報開示
こうした企業の取り組みについては、読者の皆さんも見聞きしたことはあるでしょう。
実際の事例から学ぶ、人権デューデリジェンス
近年、人権デューデリジェンスの高まりによって、企業へは厳しい目が注がれており、時にセンセーショナルな問題として取り上げられます。身近な具体例としては、日本の有名衣料メーカーの一部製品が、アメリカで輸入差し止めになっています。また、中国・新疆ウイグル自治区の人権問題に端を発した、中国製品の不買運動が起こったこともありました。これらは、企業がサプライチェーン全体で、人権リスクを管理する必要性を示唆しています。
不動産デューデリジェンスの重要性
もともとの語源の起こりとなった、不動産取引におけるデューデリジェンスを、簡単に触れておきます。ますは、物件の法的状況、環境リスク、物件の収益性などを詳細に調査します。可能な限り、購入後に発生するであろう問題やトラブルを予測して未然に防ぐことが必要です。
M&Aにおけるデューデリジェンスの役割
M&Aを成功させるためには、買収対象企業の財務状況、法的リスク、経営資源の実態を詳細に把握することがポイントとなります。事前のデューデリジェンスが、企業価値を最大化し、統合後のシナジー効果を高めることにつながります。
最後に
デューデリジェンスは、単なるビジネスの手法にとどまらず、私たちの社会の持続可能性や、公正さを守るための大切なステップです。この記事を通じて、その重要性や具体的な取り組みについて、理解を深めていただけたことでしょう。日常の意思決定やビジネスシーンで活用できる知識として、ぜひ心に留めておいてください。デューデリジェンスの意識が広がることで、より良い未来を築いていけるのではないでしょうか。
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