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「山椒は小粒でもぴりりと辛い」とは?
「山椒(さんしょう)は小粒(こつぶ)でもぴりりと辛(から)い」ということわざをご存じでしょうか。
本章では「山椒は小粒でもぴりりと辛い」について、言葉の意味や由来、似た表現との違いについて解説します。ぜひ参考にしてください。
ことわざの意味
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」とは、たとえ小さな山椒であっても刺激的な味わいであることに由来する表現です。
この言葉は、体が小さい人を山椒にたとえ、才能に溢れている・意志が強いことを刺激的な風味で表しています。意志の強い人は、いくら小さく見えても侮れないという意味です。見た目に反して、能力がすぐれている人を賞賛する意味も含まれています。
反対に、相手を見た目で判断すると痛い目を見るという教訓ともいえるでしょう。
山椒の実は小さくても非常に辛い。からだは小さくても、気性や才能が鋭くすぐれていて、侮れないことのたとえ
引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より
語句の由来
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」とは、山椒の実が辛いことに由来した言葉です。日本でも山椒は、古くから香辛料として親しまれてきました。
少量加えるだけで料理の風味にアクセントを添えるため、唐辛子の代用としてやうなぎの蒲焼きにも重宝されています。さまざま料理で活躍している山椒だからこそ、小さくとも有能な人のたとえとして用いられているのかもしれません。
「一寸の虫にも五分の魂」と違いはある?
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」のように、小さいものを侮らないという教訓を伝えることわざは、他にもあります。
広く知られているのは「一寸の虫にも五分の魂」でしょう。どれだけ小さな生き物でもそれぞれに誇りがあるため、馬鹿にしてはいけないという意味で用いられます。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」と同様に、小さなものを侮らないという戒めが込められた言葉です。しかし、両者は「侮ってはいけない理由」に違いがあるといえるでしょう。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」は、その人の能力は見た目ではわからないのだから侮ってはいけないという教え、「一寸の虫にも五分の魂」は、どのような相手にも誇りがあるのだから侮ってはいけないという教えがあるといえます。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」の対義語
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」の対義語は、「大男総身に知恵が回り兼ね」と「独活の大木」です。いずれの対義語も、身体が大きいにもかかわらず、能力が低いことを表しています。
必ずしも、身体が大きいからといって有能とは限りませんが、「見た目が有能そうに見える」ことのたとえのように捉えると、納得できるかもしれません。それぞれの対義語について、本章で解説します。
大男総身に知恵が回り兼ね
「大男総身に知恵が回り兼ね」とは、体が大きいものの、実際の動きが鈍い人を揶揄したことわざです。体が大きな人は、見た目で「運動ができる」「力持ち」といったイメージを抱かれがちかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
愚鈍な人を馬鹿にするニュアンスが含まれているため、無闇に使うのは避けた方がよいでしょう。
独活の大木
独活(ウド)とは、茎が木のように伸びる植物のことです。一見すると幹のように見えますが、実際には茎であるため非常に柔らかく、木材としては使えません。
このことから、体ばかりが大きく成長したものの、あまり役に立たないことを表現することわざとして用いられます。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」の類義語・言い換え表現
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」には「一寸の虫にも五分の魂」のほかにも、似た意味をもつ類義語や言い換え表現があります。ここでは例として「小敵と見て侮るな」と「小さくとも針は飲まれぬ」といった2つの類語をピックアップ。
いずれも、本体の大きさとは無関係に、油断していると痛い目を見るといった教訓を表す言葉です。似た意味をもつことわざとして、あわせて覚えるとよいでしょう。
小敵と見て侮るな
「小敵と見て侮るな」とは、たとえどんなに小さな敵であったとしても、決して侮ってはならないという意味で用いられます。
敵が小さいからと油断していると、思わぬところで大きな被害をこうむるかもしれません。
小さくとも針は飲まれぬ
「小さくとも針は飲まれぬ」とは、小さなものでも侮れないことを表した言葉です。針のように小さなものでも、飲み込んでしまえば大怪我をします。小さなものでも、時と場合によっては強力なアイテムになるのです。
「たかが1本の針くらい」と油断していると、針を飲んでしまったときのように、痛い目にあってしまうかもしれません。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」の使い方
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」を、日常で使うシーンは少ないかもしれません。また、小さなものを山椒でたとえることから、言葉を使う相手によっては失礼だと思われてしまうでしょう。
いざ使ってみようとして誤用したり失礼な使い方になってしまったりすることがないよう、本章で使い方を解説します。
会話例
日常会話のなかで「山椒は小粒でもぴりりと辛い」を用いるためには、以下の会話例を参考にしてください。
Aさん「いよいよ昇格だね、おめでとう!」
Bさん「部長、ありがとうございます。しかし、なぜ部長は、僕を推薦してくれんですか?」
Aさん「それは君の内面に、光るものがあったからだ。君は小柄で少し自信がなさそうに見えてしまうが、山椒は小粒でもぴりりと辛いというだろう? 他の人にはない能力があるのだよ」
例文
文中で「山椒は小粒でもぴりりと辛い」を使う際は、以下の例文を参考にしてください。
・A君は子どものころ、背が小さくて悩んでいたらしい。しかし、今では立派な医師となって、困っている人を助けている。山椒は小粒でもぴりりと辛いということわざのとおりの人だ
・抜きん出た感性をもつあのアーティストは一般的には小柄な人かもしれないが、多くの観客を熱狂させる姿は「山椒は小粒でもぴりりと辛い」といえる
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」を使ってみよう
小さな粒である山椒ですが、一度口に入れると痺れる辛さが広がります。山椒のように、人間も見た目は小さく弱そうに見えても、その人のスキルは見た目からはわからないものです。
見た目で人を侮っていると、山椒の痺れのように痛い目を見るかもしれません。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」を教訓に、人を見た目で判断しないように心がけましょう。
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