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「アセスメント」という言葉を耳にしたことはありますか? 「アセスメントって、何?」と思う方も多いかもしれませんね。実はこの言葉、さまざまな分野で活用されています。しかし、意味や方法は対象や目的によって異なるようで、少々複雑です…。とはいえ、環境のことから、健康管理、自動車のことまで私たちの生活に深く関わっているのも事実です。この記事では、さまざまな分野で使われるアセスメントについて、説明いたします。
日常生活や仕事で役立つ知識もありますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
「アセスメント」の意味
「アセスメント」の意味について、まずは辞書で確認しておきましょう。
アセスメント【assessment】
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
査定。事前影響評価。アセス。「環境―」→環境アセスメント
「アセスメント(assessment)」は、評価や査定という意味を持つことがわかりました。
この用語はさまざまな分野で活用され、対象や目的によって意味や方法が異なります。次の項目で、詳しく紹介しましょう。
さまざまな分野で使われる「アセスメント」
「アセスメント」は、対象や目的によって意味や方法が異なるとお伝えしました。ここでは、「環境アセスメント」、「ライフ・サイクル・アセスメント」「フィジカルアセスメント」、「自動車アセスメント」、「心理教育的アセスメント」を紹介します。
1:環境アセスメント
環境アセスメント(environmental assessment)とは、道路建設やダム事業など、大規模な開発プロジェクトが環境に与える影響を事前に評価し、その結果を公表する仕組みのことです。このプロセスには、地元住民の意見を取り入れるための説明会も含まれ、地域社会との調和を図りながら開発を進めることが求められます。
環境アセスメントは、1969年にアメリカで制定された国家環境政策法(NEPA)が最初の事例です。日本では1993年の環境基本法の制定を受けて、1997年に「環境影響評価法」(環境アセスメント法)が制定されました(1999年施行)。
環境アセスメントは、開発による環境影響を事前に評価し、地域社会の意見を反映させます。環境に配慮した開発を実現するための重要な手続きだといえるでしょう。
2:ライフ・サイクル・アセスメント
ライフ・サイクル・アセスメント(LCA: Life Cycle Assessment)とは、商品の環境への影響を資源の採取から廃棄に至るまでの各過程ごとに評価する方法です。根底には、「環境負荷が小さい生産方法や代替原料、代替製品を選択していこう!」という考え方があります。
<商品の資源の採取、原材料への加工、商品の生産、運搬、販売、消費、資源化、廃棄>までの全過程が評価対象ですから、環境負荷を総合的に把握し、より環境に優しい選択をするための重要な指針となります。
国際標準化機構(ISO)は、1997年にライフ・サイクル・アセスメントの規格を策定しました(ISO14040~)。
この規格に基づき、ライフ・サイクル・アセスメントは
1.目的および調査範囲の設定
2.ライフ・サイクル・インベントリ分析(資源エネルギーの投入量や廃棄物等の環境負荷物質の排出物量を計算し、明細書を作成)
3.ライフ・サイクル影響評価(インベントリ結果による環境負荷の評価)
4.ライフ・サイクル解釈(結果を評価し解釈)
という手順で行われます。
ライフ・サイクル・アセスメントは、製品の環境配慮設計や環境ラベルなどの「見える化」にも役立ち、環境負荷を減少させるための有効な方法だとわかりますね。
3:フィジカルアセスメント
フィジカルアセスメント(physical assessment)とは、患者の健康状態を正確に把握し、適切な医療・介護を提供するための基本的な技術のことです。これは、医師や看護師など医療・介護の専門職者にとって必要な技術になります。具体的には、視診(観察)、触診(手で触れる)、打診(身体をたたく)、聴診(聴診器を使う)の4つの方法で情報収集し、専門知識に基づいて分析します。
日本では、2009年の看護基礎教育のカリキュラム改正により、フィジカルアセスメントが看護教育に正式に含まれるようになりました。在宅医療が広まる現在、訪問看護師のフィジカルアセスメント能力は、これまで以上に求められているといえるでしょう。
4:自動車アセスメント
自動車アセスメント(JNCAP:Japan New Car Assessment Program)は、日本国内で販売される乗用車の安全性を評価し、公表する制度です。1995年度に運輸省(現国土交通省)が開始しました。
自動車アセスメントは、私たちが車を購入するときの判断材料になります。 一方、自動車メーカーには安全な車の開発を促す効果があるでしょう。
初期の評価項目にはブレーキ性能、前面衝突安全性能、側面衝突安全性能の3項目が含まれていました。その後、評価項目は増え、「自動車安全性能 2023」では「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」の評価に、歩行者との事故に対応した評価が新たに加わりました。
予防安全性能と衝突安全性能の総合得点で★の数が決まり(5段階評価)、★の数が多いほど総合的な安全性能が高いということです。こうした評価結果は、広く公表されています。このことから、自動車アセスメントは安全な車を選ぶための重要な指標になることがわかりますね。
5:心理教育的アセスメント
心理教育的アセスメント(psycho-educational assessment)とは、発達や教育における課題に取り組む子供を支援するための情報を収集し、分析するプロセスのことです。子どもが直面する問題や危機状況を理解し、適切な支援方針や計画を立てるための資料を提供します。このアセスメントでは生態学的アプローチに基づき、「子供(個人)」、「環境(家庭や学校)」、「子供と環境の相互作用」の3つの要素を総合的に評価します。
具体的には、子どもの発達状況や学校生活について評価し、子どもの強みや得意なことにも焦点を当てます。さらに、子どもを支える周囲の援助者や環境も評価し、多様な視点から支援計画を立てるのです。
心理教育的アセスメントを通じて、その子に応じた効果的な支援が可能になりますよ。
最後に
アセスメントは、私たちの生活の質を上げ、持続可能な社会の実現に貢献する重要な手法だということがわかりました。アセスメントの知識を深めれば、日常生活や仕事にも役立てられそうですね。難しく考えず、身近なところから始めてみるのも面白いかもしれません。
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参考/『現代心理学辞典』(有斐閣)
『日本大百科全書』(小学館)
国土交通省