「言うは易く行うは難し」とは?読み方は?
「言うは易く行うは難し」とは、「いうはやすくおこなうはかたし」と読み、言うのは簡単であるが実行は難しいという意味の言葉です。
「明日のテストで100点を取る」「ネガティブな言葉は使わない」など、いずれも言うのは簡単です。しかし、実現するのは簡単ではありません。言葉だけなら簡単でも行動するのは難しいと感じたときや、「難しくても頑張って行動しよう!」と自分を奮い立たせるときに、「言うは易く行うは難し」という表現を使います。
「言うは易く行うは難し」の由来は?
「言うは易く行うは難し」の由来は、古代中国の会議録「塩鉄論(えんてつろん)」にあります。なお、塩鉄論とは、塩や鉄などの専売制をめぐる議論をまとめた書物です。
塩鉄論では、「口が達者な人が徳があるわけではないのはなぜか」という問いの答えとして「これを言うは易くして、これを行うは難ければなり」と記載されています。つまり、素晴らしいことを言っても、言ったことをすべて行動しているわけではないため、弁説に優れている人が人間として優れているわけではありません。
塩鉄論では、専売制とは関係のない話題もしばしば紹介されています。儒教思想と法家思想の間に起こった論争がメインですが、当時の考え方や政治・経済を知る上でも参考になります。
ビジネスでも日常生活でも使える表現
「言うは易く行うは難し」は、ビジネスでも日常生活でも使える表現です。いくつか例文をご紹介します。
・目標を立てるのはよいが、あまり吹聴するのはよくないよ。言うは易く行うは難しだよ。
・「言うは易く行うは難し」と諦めてしまうのではもったいない。せっかく口に出したんだから、とにかく挑戦してみなくちゃ。
「言うは易く行うは難し」は、口ばかりで行動しない人をたしなめるときにも使います。また、頑張ってもできなかった人を慰めるときにも、使える表現です。
「言うは易く行うは難し」と関連する四字熟語
「言うは易く行うは難し」と同じように、言葉と行動を比較した表現はいくつかあります。たとえば、有言実行(ゆうげんじっこう)と不言実行(ふげんじっこう)も、言葉と行動を比較した表現です。
有言実行とは、するべきことを言葉で示し、そのとおりに行動することです。「夜7時以降は何も食べない」と宣言し、その言葉どおりに行動することは有言実行といえます。
一方、不言実行とは、言葉ではいわなくてもするべきことをすることです。たとえば、「毎日3時間は資格勉強をしよう」と決意をし、誰にもその決意を伝えないまま、自分で決めたとおりに行動することは不言実行です。
言ったことをすることも、言わないことをすることも、いずれも行動が伴っているため、素晴らしいことといえます。「言うは易く行うは難し」と行動する前から諦めてしまうのではなく、有言実行・不言実行の精神で物事に取り組むようにしましょう。
誤用に注意!間違えやすい表現
「言うは易く行うは難し」の前半だけを使って、「言うは易し」と表現することがあります。間違いではありませんが、「言葉は簡単だからどんどん発言しよう」といったニュアンスになることがあり、本来の「言うは易く行うは難し」とはかけ離れてしまいます。
思ったことをそのまま発言していると、「口だけで行動が伴わない人」と周囲に評価されてしまうかもしれません。場合によっては信用を失うことにもなりかねないため、行動できるか考えてから発言するようにしましょう。
また、「言うは易し行うは難し」と間違って覚えている方もいます。正しく「言うは易く行うは難し」と覚えておきましょう。
「言うは易く行うは難し」と類似する表現
「言うは易く行うは難し」のように、言葉にするのは簡単だが行動するのは難しいという意味で使われる表現はいくつかあります。たとえば、次の表現はいずれも類似するニュアンスのある言葉です。
・机上の空論
・口では大阪の城も建つ
・口自慢の仕事下手
それぞれの表現を例文をとおしてご紹介します。
机上の空論
机上の空論(きじょうのくうろん)とは、立派な考え方や理屈のあうことでも、現実の世界で通用しなければ意味がないという言葉です。「言うは易く行うは難し」のように行動にこだわるのではなく、実現可能性があるかにこだわった表現といえます。
・彼女の話はいずれも机上の空論で、現実味がない。
・机上の空論かどうかは、実際に試してみないとわからない。まずは実現できるか挑戦してみよう。
口では大坂の城も建つ
口では大坂の城も建つ(くちではおおさかのしろもたつ)とは、口先だけなら大きなことでも言えるという意味の言葉です。「城を建てる」「卒業論文で総長賞を獲得する」など、いずれも口で言うのは簡単です。しかし、実現するとなると、途方もない労力や努力が必要となります。
・彼はいつも大きなことを言うよね。口では大坂の城も建つわ。
・口では大坂の城も建つけれど、実際に行動するのは難しいよ。
なお、現在では大阪と表記しますが、江戸時代までは大坂(おおざか・おおさか)と表記されていました。そのため、江戸時代以前のことわざや文献では、大坂が使われていることがあります。
口自慢の仕事下手
口自慢の仕事下手(くちじまんのしごとべた)とは、話すのは得意で社交家だけれども、仕事はあまりできない人のことを指す言葉です。口達者の人はあまり信用できないといった意味でも使われます。
・話だけ聞いていると有能だけど、実際のところ、彼は口自慢の仕事下手だ。
・口自慢の仕事下手っていうし、あまり信用できないなあ。
有言実行・不言実行を目標にしよう
言葉も大切ですが、行動が伴わないことが多いと、周囲からも信頼される人間にはなれません。有言実行・不言実行を目標にして、言葉と行動が一致する人物を目指しましょう。
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