年収って、所得とは違う?
公的な手続きなどで書類を申請する際、よく聞かれる「年収」や「所得」。記入するだけでなく、年収や所得を証明する書類を添付するよう言われることもありますが、この2つは何が違うのかよく知らないという人もいるのではないでしょうか?
年収と所得は、いずれも自分や世帯の収入のことですが、金額や意味は異なります。何かの手続きや申請で必ずと言っていいほど聞かれることですので、違いや意味を知っておきましょう。
年収は、1年間の収入のこと
会社員の場合、年収は1年間(1月1日~12月31日)に会社から支払われた「総支給額」のことです。年収には、以下のものが含まれます。
・基本給
・住宅手当や資格手当などの各種手当
・残業代
・休日出勤手当
・賞与など
年収は、社会保険料などを差し引く前の金額のため、年収の金額が手元に入るわけではありません。
所得は、給与所得控除を引いた金額のこと
会社員は経費がかからないと思われがちですが、たとえばスーツなど、仕事のために用意するものがあります。しかし、原則会社員には必要経費は認められません。そのため、「給与所得控除」を設け、年収に応じた一定の金額を控除する仕組みになっています。
給与所得控除は、年収から差し引いて算出されるもの。年収による給与所得控除額を知りたい場合は、国税局のホームページで確認してください。
実際に受け取った金額は、手取り
年収から、税金や社会保険料を引いたあとの金額が「手取り」です。手取りは、実際に受け取ることができる額のこと。手取りの金額は、所得税の税率や扶養家族の有無などにより、変わります。
年収から正確な手取りの額を算出するのは簡単ではありませんが、一般的には、年収の約75~85%が手取り金額の目安とされています。
年収はどうやって確認する?
手続きの際、「年収を証明する書類を添付」や「年収を記入」のように指示されることがあります。年収はどのように確認すればいいのでしょうか?
会社員は、源泉徴収票で
年末もしくは翌年1月に、源泉徴収票が会社から発行されます。年収は、源泉徴収票の「支給金額」に該当しますので、これで確認することが可能。
もし源泉徴収票を紛失したり、複数枚必要になったりした場合は、会社の該当部署に依頼することで、再発行してもらうことができます。年収を証明する書類を添付しないといけない場合は、源泉徴収票を提出するといいでしょう。
給与明細でも確認できる
源泉徴収票以外だと、給与明細からも年収を算出することができます。給与明細にある「支給額合計」の項目に記載されている金額の12か月分に加え、賞与分を加算。社会人1年目で源泉徴収票が発行されていない、もしくは源泉徴収票が手元にないという場合は、この方法で算出するといいですね。
ただし、年収を証明する書類として提出することはできないことがほとんどですので、注意してください。
所得証明書は、市区町村で
市区町村に依頼し発行してもらえる「所得証明書」でも、年収を確認することができます。所得証明書には、収入金額(年収)も記載されていますので、正確な金額がわかるでしょう。
年収を証明する書類に所得証明書が該当するかどうかは、提出先によって異なります。事前に確認しておくといいですね。なお、所得証明書の発行には、定められた手数料がかかります。
所得を確認したい場合は?
所得を確認するための書類には何があるのかもチェックしていきましょう。
所得証明書(課税証明書)
所得を証明する書類としては、市区町村に依頼して発行してもらえる「所得証明書」があります。所得証明書には、各年の所得額が記載されていますので、所得を証明する添付書類としても認められていますよ。提出が必要な場合は、この書類を提出するといいですね。
所得証明書は、利用目的により必要になる情報が異なります。特に、所得を証明する年について指定がある場合は、注意してくださいね。
たとえば、2022年の証明書が必要な場合、発行は翌年の2023年1月1日に住んでいた市区町村が担います。2023年1月2日以降に転居し、他の市区町村へ転出した場合は、前の住所がある市区町村で請求しなければなりません。
所得証明書は、地域によって名称が違う
実は所得証明書は、市区町村によって名称が異なります。
*所得証明書(課税証明書)
*所得証明(課税・非課税証明書)
*所得(市・道民税)証明書
*市民税・県民税課税(非課税)証明書
*市民税・県民税証明書
*特別区民税・都民税課税(非課税)証明書 など
所得証明書が必要になり、市区町村のホームページを検索したけれど該当する書類がないという場合は、上記のような名称である可能性があります。
年収や所得を証明する書類、必要なタイミングは?
年収の記入や、年収を証明する書類が必要になるのは、どのようなタイミングでしょうか?
転職活動で聞かれる
転職活動をしていると、希望年収や現(前)職場の年収を聞かれることがあります。エントリーシートや履歴書に記入する以外に、面接で尋ねられることも多いでしょう。
聞かれるのは「年収」が多いのですが、これは会社によって天引きされる金額が変わるため。そのため、手元にいくらあれば安心か、今の年収をベースに考えておくといいですね。この時、手取り額を答えてしまうと、希望年収よりも金額が下がることになります。入社後に困らないためにも、事前に具体的な希望年収を考えておきましょう。
クレジットカードや各種ローンを申し込む時
クレジットカードや各種ローンの申込み時、年収や所得を証明する書類の提示を求められます。これは審査に必要だからですが、審査自体は、年収以外にも重視する項目があるため、年収や所得は目安項目の一つに過ぎません。
公的な制度を利用する時
子供を保育園や幼稚園に入れる時や、賃貸住宅を申し込む際も、年収や所得を証明する書類が必要になります。この場合は、添付を求められることがほとんどですので、あらかじめ用意しておくとスムーズです。また、配偶者の扶養に入る際も、所得証明書が必要になります。
提出先により、年収もしくは所得のどちらかを指定されますので、必要に応じて書類を用意するようにしてください。
最後に
個人の収入に関連する言葉である年収と所得ですが、意味や金額は異なります。混同する人も多いのですが、手続きや申請で必要になることが多いため、意味や違いを知っておくと便利です。また、手取りも意味や金額が異なりますので、間違えないように注意してください。
TOP画像/(c) Adobe Stock
益田瑛己子
ライター・キャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー。金融機関の営業職として長年勤務し、現在はライター(ブック・Web)として活動中。3人の子供が自立し、仕事と趣味を謳歌している。
ライター所属:京都メディアライン