「安かろう悪かろう」の意味と由来
まずは「安かろう悪かろう」の意味や由来から解説していきます。最近ではあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、この機会にぜひ覚えておきましょう。
意味
「安かろう悪かろう」は、値段が安いものは総じて品質も悪いということわざ。買い物をする際、値段は1つの基準になりますよね。価格が安いとつい惹かれてしまいますが、やはりその分品質は劣るでしょう。「ただ安ければ良いわけではない」ということを示唆してくれることわざです。
「悪かろう安かろう」と順番を変えて言うことはないので注意しましょう。
由来
古典文学を振り返ってみると、「安かろう悪かろう」という記述が最初に見られたのは『北条氏直時分諺留』でした。この書物は16世紀末から17世紀初め頃に書かれたとされており、この頃から「安かろう悪かろう」という言葉は存在していたのです。
その後、再び日本でこの言葉が注目されるきっかけとなったのは高度経済成長期でした。高度経済成長期とは、日本経済が成長し続けた1955年から1973年の19年間のことを指します。技術革新が起こり、海外とのモノのやり取りが増えていくにつれて、日本では品質より低価格を重視した、大量生産できる商品が販売されるようになりました。しかし、その後経済がどんどん発展して行くにつれて、消費者は値段より高品質を重視していくようになります。
その結果、品質より低価格を重視した商品は好まれなくなり、「安かろう悪かろう」という言葉が生まれたのです。
「安かろう悪かろう」の言い換え表現や対義語
「安かろう悪かろう」の意味や由来は理解していただけましたか? 次は言い換え表現と対義を、それぞれ1つずつ紹介していきます。
言い換え表現:「安物買いの銭失い(やすものかいのぜにうしない)」
あまりに安いものを買っているとすぐに傷んでしまうため、かえって損をするという意味です。安価で買ったもののすぐに使い物にならなくなってしまい、結局買い直すことになるという経験はありませんか? せっかく安い値段で買っても品質が悪いと意味が無く、むしろコストがかかるという忠告ですね。
元々は『北条氏直時分諺留』にある「やす物の銭うしない」が同義で使われており、それと共に16世紀後半以降使われるようになったのだとか。
何か商品を買うにしても、長持ちするかどうか視野に入れて買うことが大切ですね。
対義語:「高かろう良かろう」
「安かろう悪かろう」の反対で、高いものは品質が良いという意味です。こちらも「良かろう高かろう」と、順番を逆にして使うことはありません。高いものは全て品質が良いと断言できるわけではありませんが、高価であるということはそれほど良い材料で作られているだろうということわざです。「安かろう悪かろう」とは対義語ですが、結論的な意味は同じなのでセットで使われることも多いでしょう。
使い方を例文でチェック!
「安かろう悪かろう」は、日常生活においてあまり馴染みのない言葉でしょう。そのため、実際に使うとなるとイメージがつきにくいという方もいるかもしれません。ここでは「安かろう悪かろう」を使った例文を3つ紹介していきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
1:実際に着てみると思ったより生地がペラペラだった。まさに安かろう悪かろうである。
例えばネットショッピングで安価な服を買った時、届いてみたら生地が安っぽかったり、思っていたものと違うなんて経験はありませんか? 実際にお店へ行って買うケースに比べて、ネットで写真をみて買うのではやはり品質の良さが判断できないという難点があるでしょう。安いからといって、すぐ購入ボタンを押してしまうと後から後悔することになるかもしれませんね。
2:特に食品は安かろう悪かろうを心得て、選ぶべきである。
食べ物は私達の体をつくる源。やっぱり健康的な食事を心がけたいですよね。しかし、時間に余裕がないと、どうしても安価で手軽に摂取できるものを選びがちになってしまいます。もちろん安価な食べ物を否定するわけではありませんが、値段だけで判断するのではなく、産地や原材料などの品質を見ることも大切でしょう。
3:とっさに入ったお店だったが、安かろう悪かろうという接客で残念だった。
「安かろう悪かろう」は、元々商品に対して使われる言葉でした。しかし最近は、モノ以外のサービスや労働環境、価値観などにも使われることが増えてきています。大量生産の裏側では、低賃金の労働実態などが見られることもあるでしょう。それらに対して「安かろう悪かろう」と使うこともあるのです。
「安かろう悪かろう」の英語表現
最後に「安かろう悪かろう」の英語表現を3つ紹介していきます。意味は同じでも様々な言い回しがあるので、それぞれ確認しておきましょう。
1:cheapest is dearest(安いものは高い)
安価で購入したものは、すぐ使い物にならなくなってしまうこともあります。そうなると、買い直し等で結局はコストがかかるという意味の表現ですね。cheapは「安い」、dearは「親愛な、愛おしい」という意味の他に「高価な」という意味を持っています。
2:you get what you pay for(お金を支払った分だけ得られるものがある)
こちらは「安かろう悪かろう」だけでなく、「高かろう良かろう」も表現できるでしょう。つまり、「自身が出した金額に見合ったものが手に入る」ということを表しています。pay forで「お金を支払う」という意味なので、1フレーズで覚えてしまいましょう。
3:cheap is cheap(安いものは質が悪い)
cheapは「安い」の他にも「質が悪い」という意味で使われます。例えば「This is a cheap necklace」と言うと「このネックレスは質が悪い」と表現できますね。「cheap is cheap」は「安い」と「品が悪い」の両方の意味を含んだ表現で、「安いものは質が悪い」と訳すことができるでしょう。
最後に
この記事では「安かろう悪かろう」について解説しました。
値段が安いものを買うと、その時はなんだか得した気分になりませんか? しかし大事なことは、自身が求めているものを得られるかどうかです。安いものを買っても、使い物にならないのなら意味がありませんよね。値段と品質、どちらも視野に入れた上で購入の決断をしましょうね。
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