7つの胚盤胞の写真を見ながら愛しさがこみあげる【30代からの不妊治療】
妊活を始めて3年。現在34歳の私の体験から、妊娠を考えているカップルにとって少しでも役に立つような情報をレポート形式でお届けします。
前回は、不妊の原因を考えて不安になった話をお届けしました。今回は、不妊治療に対する考え方に悩んだ話。
受精卵の写真を見ながら想像ばかりが膨らむ…
病院のロビーでお会計を待っている間、私はずっと医師から渡された胚盤胞に育ってくれた受精卵の写真を見ていました。病院側の評価はともかく、私にとってはすべて愛おしい宝物です。
お別れになってしまった卵の写真もしっかり目に焼き付けて、今日の気持ちを一生忘れないようにしようと思いました。
夫「初期胚の時点で評価がよかったものでも、発育の段階でダメになってしまうのはちょっと意外だったね」
私「うん、特に廃棄って言われた時、すごくつらかった」
夫「医学的に厳しいということなんだから、受け止めるしかないよ」
そう頭ではわかっていてもなかなか気持ちの整理がつかず、ずっと写真に視線を落としたままの私に夫が明るく話しかけてきました。
夫「それにしても体外受精ってさ、こんな卵の時代から写真があるなんてすごいよね」
私「そっか。普通の妊娠なら、子宮のなかのエコー写真からはじまる感じだもんね」
自分の受精卵時代の写真とか、自然妊娠だったら見られないんだよなぁと思うと、すごく不思議な感じがしました。ただ同時に、これを将来生まれてくる子どもに見せるかどうか、ふと迷うかもなとも思ったのです。
私「あなたははさ、子どもに体外受精だったんだよって言う?」
夫「どういうこと?」
私「う~ん。うまく言えないけれど、体外受精で生まれてくるって親のエゴじゃないけどさ、本人がどう思うのかなって。私自身が子どもの立場になってみることができないから想像すらできなくて。本人がどう思うのかなっていろいろ考えてしまうことはあるの」
私が採卵をした前年の2019年に日本産科婦人科学会がまとめたデータによると、体外受精で生まれた子どもは過去最多の6万598人だったそう。
約14人に1人が体外受精で生まれたことになるというニュースが話題になっていました。およそ、クラスに2人の割合であるという報道も。増えているとはいえ、少数派であることには違いありません。
こういう状況を子ども側からしたらどんな風に受け止めるのかな? いじめられたりしないかな? 自分の幼少期と時代が変わっている分、いろんなことを考えては不安に思うこともありました。
でも夫はそんなことどこ吹く風といった様子。ひょうひょうとした口調で言いました。
夫「こんなに待ち望まれて生まれてくるんだから、良かったと思ってくれるよ」
私「すごい自信だね」
夫「どんな形であれ僕らの子どもとしてこの世に誕生してくれるなら、それ自体がもうその子の持っている才能だよ」
私「…そっか。私たちのところに生まれて来てくれる才能か」
不妊治療とか体外受精とか、そこにばかりフォーカスしてしまっていたけれど、私のもとに生まれてきてくれるということが大事で、それはその子の才能だと思ったら気持ちが軽くなった気がしました。
不妊治療に対してのイメージはいろんな考え方があるとは思うのですが、私はもう迷わないで突き進んでいこうとこの時強く思いました。
不妊治療中、少しツライ気持ちになった時、いつも心の支えだったのはこの前向きな夫の性格とフーナーテストの夜に夢でみた赤ちゃんのことです。
もうすぐ会える! きっと会える! 絶対に会える! 体外受精のステップに入ってからも気持ちを強く持ち続けることはとても大変でしたが、そんなときはあの日たった一度、夢の中でみた赤ちゃんに何度も助けられたのです。
くじけそうになると、この「会える!」という気持ちをおまじないのように口に出すようにしていました。
しかし、早々にメンタルの落ち込みに見舞われてしまうのですが、その話はまた次回。
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クロサワキコ
34歳・主婦ライター。妊活歴3年目。男性不妊の治療や人工授精に体外受精、ステップアップを重ねていくなかで感じた不妊治療のリアルな本音を発信しています。