目次Contents
「必要条件」と「十分条件」とは?
高校で習った記憶のある「必要条件」と「十分条件」。ですが、大人になって改めてこの2つの違いを聞かれたら… 説明できる人は少ないかもしれません。「必要条件」と「十分条件」は、実はマーケティング戦略を考えるときや、ロジカルシンキングにとても有効な考え方なのです。本記事で基礎から丁寧に解説していきますので、ぜひこの機会に復習しましょう。
「必要条件」と「十分条件」の定義
まずは定義から復習しましょう。
2つの条件PとQにおいて、「PならばQ」が成り立つ(真である)とき、
Qは、Pであるための「必要条件」である
Pは、Qであるための「十分条件」である
というように定義されます。
「すでについていけるか不安…」となった方へ、わかりやすく例を用いて解説しましょう。
イチゴと果物を例にとって考えてみましょう。まずは先ほどのPにイチゴを、Qに果物を当てはめてみます。
「イチゴ(P)ならば果物(Q)である」は、はたして成り立つでしょうか。
イチゴは果物ではありますが、「食べ物」とも言い換えることができます。ですが、イチゴが果物であることは、誰もが知っている事実であるため、「イチゴ(P)ならば果物(Q)である」は、成立しています。
つまり…
果物(Q)は、いちご(P)の「必要条件」である
いちご(P)は、果物(Q)の「十分条件」である
といえるのです。
では、逆の場合、「果物(P)ならばイチゴ(Q)である」は成り立つでしょうか。
果物にはイチゴのほかに、りんごやバナナ、ぶどう、みかんなど様々あります。ということは、「果物(P)ならばイチゴ(Q)である」は、必ずしもそうではないので、この前提は成立しません。
もうひとつ、品川区民と東京都民を例に考えます。「品川区民(P)ならば東京都民(Q)である」の場合はいかがでしょうか。
品川区は東京都の一部であるため、「品川区民(P)ならば東京都民(Q)である」は成立し、
東京都民(Q)は、品川区民(P)の「必要条件」
品川区民(P)は、東京都民(Q)の「十分条件」
となります。
先程と同様、その逆で考えてみると、「東京都民(P)ならば品川区民(Q)である」は、東京都には世田谷区民や多摩市民など存在しているので、この前提は成り立ちません。
上記のように、「必要条件」の方が範囲が広いもので、「十分条件」はその中で限定されたものだとイメージすると、なんとなく理解がしやすいのではないでしょうか。
「必要条件」と「十分条件」の違いと覚え方
なんとなく内容が理解できたという方へ、覚えるためのコツを紹介します。
言葉の意味で覚える
前提の「PならばQ」が成立しているとき、「十分条件」(=P)→「必要条件」(=Q)という関係性になります。「じゅうよう」という順番で覚えると思い出しやすいかもしれません。ただし、前提の真偽を間違えないようしっかりチェックしましょう。
PならばQ… Pが成り立つにはQが「必要」となる
PならばQ… Pが成り立つためにはQが成り立てば「十分」である
矢印の向きで覚える
「PならばQ」を矢印で表し、矢印の先は「必要」であると覚えましょう。「PならばQ」を「P→Q」と表します。そして、矢印の先にあるQは「必要条件」、その反対であれば「十分条件」と機械的に覚えてしまえば楽ちんです。
図で書いて広い方が「必要条件」
先の「品川区民ならば東京都民である」を例に、図にしてみましょう。東京都民の円の中に、品川区民の円が入ります。このとき、大きく広いほうの東京都民が「必要条件」になります。『広いの“ひ”は、「必要条件」の“ひ”』と覚えるのもおすすめです。
ビジネスシーンでも活用できる!
「必要条件」と「十分条件」の定義はビジネスシーンでも活用できることをご存じですか? 具体的な例を挙げて解説します。
あなたが経営者だとして、一つあたり1000円の商品を発売するにあたって、どこに生産をお願いするか検討中とします。
このとき、利益確保のためには、原価を300円以下に抑えなければならないという条件がある場合、「一つあたりの商品を300円以下で生産してくれる工場」が、発注先を選定するための「必要条件」といえます。
「十分条件」といえるかどうかですが、300円以下で生産できる工場があったとしても、納品された商品の質が粗悪だったり、納期が遅れたりなどがあれば、契約を解消する可能性も考えられます。
ですので、「一つあたりの商品を300円以下で生産してくれる工場」は、発注先を選ぶための「必要条件」とはいえますが、「十分条件」とはいえないということです。
「必要条件」と「十分条件」の英語表現
「必要条件」と「十分条件」の英語表現を紹介します。
「必要条件」の英語表現
「必要条件」は英語で、“necessary condition”。「~のための『必要条件』」と言いたい時は、後ろに“for”をつけて、“necessary condition for”と表現します。
A fruit is a necessary condition for an orange.
(果物はミカンの必要条件です)
What are necessary conditions for being popular?
(人気者になるための必要条件とはなんだろうか?)
「十分条件」の英語表現
「十分条件」は英語、“sufficient condition”と表現します。
An orange is a sufficient condition for a fruit.
(ミカンは果物の十分条件である)
It is difficult to find a sufficient condition for happiness.
(幸せでいるための十分条件を見つけるのは難しい)
「必要条件」「十分条件」の定義をしっかり覚えてビジネスシーンで活用を!
授業で習っていたときは、いったいこれがどうやって社会に役立つの? と疑問に思っていた人も少なくないと思いますが、「必要条件」と「十分条件」は物事を論理的に説明するのにとても有効的な定義です。ビジネスに活用するには少し頭を整理する必要があるかもしれませんが、このプロセスが論理的思考をもつためには非常に重要。覚え方のヒントもぜひ参考にしていただき、ビジネススキルも一緒にアップでしてみてください。
TOP画像・アイキャッチ/(c)Adobe Stock