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2022.05.31

「困難が人の役に立つ力をくれた」鍼灸師として人生を支える理由〈連載 ザ・ターニングポイント〉

選択の多い女性の人生に、決断は欠かせないもの。各界の第一線で活躍する先人たちは、どんなターニングポイントを迎えてきたのか。女性鍼灸師としてのべ7万人以上をみてきたやまざきあつこさんにお話をうかがいました。〈第一線の女性たちもアラサーで「選んで」きた The Turning Point~私が「決断」したとき~〉

鍼灸師 やまざきあつこさんインタビュー

体と心は切り離せないもの。ケガも自律神経失調症も、自分にとっての困難が人の役に立つ力をくれた

27歳までの5年間は、中学校の体育教員として働いていました。小学生のころからずっとバスケットボールをやってきてさまざまな先生に指導してもらう中、「自分も子供たちに教えられる人になりたいな」と抱いた夢。念願叶ったものの、着任したのはなんと校内暴力の嵐が吹き荒れる学校で。生徒が授業に出ないだけならまだしも、妨害や乱闘も日常茶飯事。窓ガラスがよく割られていましたね。自分の学生時代にそんな経験をしたことがなく、「学校でこんなことってあるんだ!」と衝撃の連続でした。

最初は生徒を怒ってばかりでしたが、彼らを見ているうちに、「本当はさびしくて構ってほしいんだな」とか「家庭で複雑な問題があるらしい」とか、それぞれの事情があるとわかってくるんです。言葉にできない思いの表現が暴力になってしまうんですね。学校に来るだけでも「偉い!」と認めてあげる必要があるんだなと。

ただ、そうやってまっすぐ仕事に向き合っているうちに、ストレスから過呼吸を起こしたり、不整脈になったり、自分の体の具合がおかしくなってきたんです。

どうやら根を詰めすぎて自律神経のバランスをくずしてしまい、なじみの鍼灸院に定期的に通うことにしました。スポーツ選手には鍼をメンテナンスに取り入れている人も多く、疲労回復やコンディション維持、ケガの治療や予防など多様な効果があります。

私自身、大学の選手時代に膝の前十字靭帯断裂、半月板損傷という大ケガをして、手術後に鍼灸マッサージ治療を受けていたことから、効果は体感していました。ただ、社会人になってストレス緩和にもなるんだと身をもって実感。血流を改善することで、疲れていた心身にエネルギーが少しずつ湧いてくる感覚がありました。

改めて鍼灸の力を感じていたあるとき、通っていた鍼灸院の先生に「ケガや自律神経失調症を経験しているお前だからこそできる治療があると思う。鍼灸師になってみないか?」と言われたんです。想像もしていなかったけれど、「人生にはそういうチャレンジもあるのか、人の役に立てるなら究めてみたい!」と思い立ち、教員を辞めることを決めました。

とはいえ、国家資格取得に少なくとも3年はかかる鍼灸師。専門学校の面接では、「食べていけるかわかりませんよ。公務員の安定を手放して大丈夫ですか?」と聞かれましたね。「わかっていますが、自分の目指す道を進みたいんです」と答えたことを覚えています。

学生に戻り、空き時間にスポーツクラブでトレーニング補助のアルバイトをしていたことも、転機のひとつです。たまたま日本代表のテニスコーチがいらして、女性のトレーナーを探していると。資格を取得して東京に鍼灸院を開院した後もご縁が続き、日本女子代表のオフィシャルトレーナーとして、沢松奈生子選手や杉山 愛選手などの海外遠征へ同行することになりました。

テニスという競技は試合時間や待ち時間も長く、国際大会ではときに深夜になることもあります。試合後に食事をとって夜中の2時くらいからマッサージや鍼で体をケアして、また翌日も練習をこなす… というハードな日々。世界の一流選手でも、時差があったりケガをしたり試合に負けたり、コンディションを一定に保つのは難しいものです。本当にコツコツと地道なトレーニングの積み重ねが、心身を支えているということを間近で学ばせていただきました。

何事も、ひとりで抱え込むのは無理がある。鍼灸で裏方として人生を支えたい

5年ほどスポーツトレーナーに従事した後、ここからは鍼灸師として女性特有の不調改善をサポートできたらという思いで湘南に開院し、今に至ります。30歳で鍼灸師の人生をスタートして、のべ7万人の方を施術してきました。多いときは1日16人くらい。当初は電話がかかってきたら断らず、「30分でもよければ…」とお昼休みもとらずにお受けしていましたが、今は週に2日は休むようにしています。

治療スタイルは、年を重ねていくほど刺激が少ないものに変化。治っていく過程では、患者さんが心地いいと感じている状態が大事なんだとわかるようになったんですね。

さまざまな女性のお悩みに接してきた中でも特に印象深いのは、メンタルの不調から「朝起きたくても動けません」「職場に行けない」「心療内科の薬を飲んでも効かない」と泣きながら苦しんでいた方が、仕事に復帰できたときのこと。心の問題は非常に難しいものですが、まずは体からアプローチしてみるのも一手。私の鍼灸院に来るのにもお友達の付き添いがないと電車に乗れなかった状態から、1年半ほどかけて本当に元気になられて。「生きててよかった」というお言葉をいただけた。私自身もこの仕事の醍醐味だなとうれしかったですね。

痛みや不調の原因がどこから来ているのか、ご本人は気づいていないことが多いものです。性格、思考、行動、物量、時間など、ストレスの要因は人それぞれ違って、結果どんな症状で現れるのかもさまざま。だからこそ教員時代に生徒を見ていたように、その方にあった施術や言葉の投げかけができるように心がけています。

今まさに頑張っているみなさんにお伝えしたいのは、「人間、なんでもひとりじゃ無理だから、プロでも身近な人でも頼ってみようよ!」ということ。自己責任なんて思わなくていい。特に鍼灸は、人を支える裏方ですからどんどん頼っていただきたいと思います。

30代後半くらいからホルモンのバランスでいろいろと変調があるのは仕方のないこと。不安がないように予測しておくことが大事だと考えています。たとえば「冷え」や「疲れ」。特にガードルをはいている方はご注意を。血流が阻害されてしまうだけでなく、頭から仙骨までつながる背骨の揺らぎを締め付けると呼吸が浅くなってしまう。酸素が体に行き渡らないので疲れが溜まりやすくなります。積み重なってさらなる不調を起こす前に、体を動かして体をゆるめるように意識していただきたいですね。

今後は、後進の女性鍼灸師の育成にもチャレンジしたいと思っています。現状は、残念ながら体力面や経営面での課題などで女性が少ない業界ですが、女性の患者さんが安心して自分の気持ちを確認できる場を担う人を育てたいですね。不思議なもので、施術者に対して話しづらいことや見せづらい部分があって、何かしらガードがかかっていると、体は治りにくいんです。もしやってみたいという方がいたら、ぜひ一緒に女性を支えていく喜びを感じてもらえたらと思っています。

2022年Oggi4月号「The Turning Point〜私が『決断』したとき」より
撮影/大社優子 取材協力/鳥居りんこ、竹下亜紀 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部

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やまざきあつこ(やまざき・あつこ)

1963年、神奈川県生まれ。藤沢市辻堂にある鍼灸院『鍼灸師 やまざきあつこ』院長。中学教員として5年間働いた後、鍼灸の道へ。開業以来28年間でのべ7万人の治療実績をもつ。1997年から2000年までテニスFedカップ日本代表チームトレーナー。数々のプロテニスプレーヤーのオフィシャルトレーナーとして海外遠征に同行。現在までさまざまなプロアスリートの治療に関わる。自律神経失調症の施術に定評があり、女性の駆け込み寺的存在。公式サイト


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