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2022.05.10

元・大津市長「何かを変えるには〝人と違う〟を恐れない」元・大津市長の決意〈連載 ザ・ターニングポイント〉

選択の多い女性の人生に、決断は欠かせないもの。各界の第一線で活躍する先人たちは、どんなターニングポイントを迎えてきたのか。弁護士として活躍後、女性市長として数々の改革を実現した越 直美さんにお話をうかがいました。〈第一線の女性たちもアラサーで「選んで」きた The Turning Point~私が「決断」したとき~〉

元・大津市長/弁護士/経営者 越 直美さんインタビュー

個性を隠して目立たないようにやり過ごしてきたけれど、何かを変えるには、「人と違う」を恐れないこと

司法試験を受けること4度目にして合格した後、企業法務を手がける現在の「西村あさひ法律事務所」(東京)で弁護士として働き始めたのが2002年、27歳のときです。平日の夜は日付が変わってから帰宅し、土日も仕事。激務でしたが、新聞の一面を飾るような大きな案件や海外案件に携われること、企業の再生をサポートできることにやりがいを感じていましたね。もうひとつの原動力が、5年ほど働くと挑戦できる留学。33歳のときに米国ハーバードのロースクールに留学し、私にとって大きなターニングポイントとなりました。

現地では英語でのコミュニケーションや授業に必死についていく毎日でしたが、特に影響を受けたのがオバマ元大統領の1期目の選挙です。彼の母校ということもあり、自分より若い20代の学生たちが、〝CHANGE〟とスローガンを掲げながら、世の中を変えようと行動する姿に心を打たれました。日本にいるときは目の前のことに追われていたけれど、私も広い視野をもってよりよく世界を変えるために、何かしたいなと思うようになったんです。

迷うのは、「自由」の証。真の情熱がどこにあるのか探る

ロースクール修了後は、NYの法律事務所へ。経営を担う女性のパートナー弁護士が多い一方で、一緒に働いていたアメリカ人の男性弁護士が、「1年育休を取るから、あとはよろしく!」と休暇に入ったのも衝撃でした。

調べてみると、当時の日本では働く女性の約50~60%がひとり目のお子さんをもった後に仕事を退職していると。主な原因は保育園がないからで、思い返せば育児中の弁護士の女性たちも、大変な努力をしながら仕事を続けていました。一方で出産を機に専業主婦になっていた地元の友人たちは、一度辞めてしまうと元の仕事には戻れず、仕事が見つかっても給料が下がるという悩みを抱えていて。

もちろん、みんなが仕事も子育ても両方やらないといけないわけではないけれど、女性が仕事か子育てかの二者択一を迫られていると気づきました。そして、私自身も知らず知らずのうちに結婚や出産を選んでこなかったんだなと初めて思ったんです。保育園を増やす権限があるのは自治体だから、まずは自分が好きな地元・大津市で市長になって、女性があきらめずに自由に選択できる社会をつくろうと強く思うようになりました。

でも、政治経験はなく選挙の戦い方もまったくわからない。せっかく苦労して弁護士になったのに落ちたらどうしようとか、やっぱり迷うんですよね。ほとほと迷い疲れたころに、ハーバード時代の友人が「迷うことは自由の証なんだよ」という言葉をかけてくれたんです。

世界には、自分の住む場所や職業を選択できない人がたくさんいる。自分の意思で選べるのは本当にラッキーなことで、自由なんだから好きなだけ迷えばいいんだと。それまで、迷うことはしんどいし時間のムダのように感じてしまっていたので、救われましたね。別の友人は、「弁護士はたくさんいるけれど、市長はひとり。自分にしかできないことをやるべき」と言ってくれました。

実力主義の法律事務所から、年功序列・終身雇用の市役所へ

友人たちに背中を押され、一大決心して帰国。知名度も実績もない私でしたが、市民の方々に選んでいただき、2012年、36歳で大津市長になることができました。職場は実力主義の法律事務所から、年功序列・終身雇用の市役所へ。

当初は協議中に机を叩かれたり、乱暴にドアを閉めて出て行かれたり… なんてこともありました。市長として直接仕事をする機会の多い管理職は、ほとんどが50代の男性。前市長も前々市長も職員より年上の男性でしたから、いきなり30代の女性が来ることに反発もあったのだと思います。

特に、人口が増えることを前提とした昭和的な予算の使い方を変える必要があったのですが、どうしても「今までのやり方を変えたくない」という議論に戻ってしまうんですね。それでも、私は選挙で自分の政策を市民の皆さんに示して当選しているわけで、1期4年間で達成しないといけない。共感してくださる人を巻き込んだり、若い職員に働きかけたり、根気強く対話を重ねることで関係性も変化。2期目には描いていたまちづくりを推進することができました。

就任して最初の数年は、いじめを苦に中学生が自殺をした事件の調査や教育委員会の改革にも力を注ぎました。大人たちの隠ぺい体質が子供を苦しめてはいけない。私自身、子供のころにいじめを受けた経験があります。それがきっかけで、20代までは個性を隠して目立たないようやり過ごすことを選んできました。そんな自分が、市長になり、これまでのやり方を変えることができたのは、「人と違っても、間違ってもいいから、自分の意見を言うことが大切だ」と教えてくれたアメリカでの3年があったからだと思っています。

わき目もふらず、まっすぐ前だけを見て走った市長としての2期8年間。保育園など54園(約3000人分)をつくり、5歳以下のお子さんを育てながら働く女性は1.7倍に。また、子育てしやすい環境を求めて大津に引っ越してくる若いご夫婦が増え、人口も増加に転じました。

市民に約束したことは達成できたと思うのですが、女性が自由に選択できる社会を築くのはむしろスタート。次は、会社の中で最終的に意思決定する取締役に女性を増やす取り組みをしていきたいと思っています。コーポレートガバナンス・コードに定められているように、これからの時代は企業の役員や管理職に女性を含めた多様性の確保が必要であり、投資家からも求められています。前例や同質性にとらわれる限り、イノベーションは起こせない。市長として大きな組織に関わる中で、その本当の意味がわかりました。

実は市長を退任してから、AIを活用したリーガルテックで起業を考え、いろんな人に話を聞きに行った時期も。そのときは「知識も技術もないでしょ」と言われて、それもそうだなとすぐあきらめたんです(笑)。でも、同じように「若いし経験もないから無理」と否定された市長を目指したときは「いや、そんな自分だからこそ市民目線でしがらみのない政治ができるはずだ」と思えた。

何かを始めるときって応援してくれる人ばかりではないけれど、大事なのは、反対意見に対してどう思うか。否定されたときこそ、自分の中にある真の情熱に気づけるので、夢は積極的に周りに話すようにしています。これからもまた迷い転びながら、「自分にしかできないこと」を探していきたいです。

2022年Oggi1月号「The Turning Point〜私が『決断』したとき」より
撮影/石田祥平 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部

越 直美(こし・なおみ)

1975年、滋賀県大津市出身。日本・ニューヨーク州・カリフォルニア州弁護士。北海道大学大学院法学研究科修了後、西村あさひ法律事務所、NYのDebevoise & Plimpton法律事務所、コロンビア大学ビジネススクール客員研究員を経て、2012年から2020年まで大津市長。待機児童ゼロ、M字カーブの解消、人口増加を達成。2020年より三浦法律事務所パートナー弁護士。M&A、スタートアップ、スマートシティ、官民連携支援を行う。2021年、企業の女性役員を育成・支援するOnBoard株式会社を設立。同社代表取締役CEOを務めながら、ブイキューブ、ソフトバンクの社外取締役を兼務。近著に『公民連携まちづくりの実践 公共資産の活用とスマートシティ』(学芸出版社)


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