ダンサー・振付師/NOSUKEさんインタビュー 後編
オーディション企画『timelesz project -AUDITION-』(通称タイプロ)のトレーナーとしてオファーを受けたNOSUKEさん。厳しい世界で生きることを目指す候補生たちに、〝業界を擬人化した鬼〟としてその場に存在しようという決意のもと走り続けた10か月、そしてこれから目指すもうひとつの夢とは…。

NOSUKEさんインタビュー 前編はこちら
『timelesz project -AUDITION-』トレーナー「〝業界を擬人化した鬼〟としてその場に存在しよう」〈ダンサー・振付師・NOSUKEさん〉
〝たった3日で人は変われる〟そう教えてくれた候補生たち。壮絶な熱量に触れて、自身の言動も見直す機会に
迎えた3次審査の3日間。だれひとり手を抜かない壮絶な熱量の中で、たった3日で人はこんなに変わるのかと、何度も驚かされました。ダンス経験の有無や年齢にかかわらず、学ぶことが山ほどあって。その成長と努力に胸を打たれ、彼らに教えるからには自分の発言や行動も見直そうと思わされる。そんな濃密な時間でした。
審査のたびみんなのことが好きになって、愛情をかけて育てた候補生たちを前に「入れさせない。でも、だれも落ちてほしくない。報われてほしい」と、感情はぐちゃぐちゃで矛盾だらけ。観ている方の応援する思いが募る分、ときにSNSでは厳しい声が上がることも。痛みを抱えながらも、「幸せそうなメンバーを見て、幸せになる人はもっと増えるはずだ」という思いで一丸となって走り続けた10か月は、僕にとっても人生の大きな転機となりました。
振付は、届いて初めて完成する物語。ファンの方々の愛情を、絶対的に信じる
振付をつくるときはまず、担当するアーティストの歴史や人となりを学びます。たとえばtimeleszなら、これまでどうブランディングしてきたのか、どんな言葉を届けてきたのか。ライブ映像やSNSはもちろん、ファンの方にだけ見せる表情も知りたくて、会員限定のブログにも入会して目を通します。積み重ねてきた関係性や道をたどりながら、今だからこそ似合う表現を探していく。

その上で、絶大な信頼を置いているのが〝ファンの方々の強さと愛情〟です。本当に目が肥えていて、こちらが振付にちりばめたヒントやストーリーにもすぐ気づいてくれる。幼少期から親の影響で絵本や小説、舞台、ディズニーなどの文化に親しんできたこともあって、一曲をひとつの物語として構成するのが好きなんですね。だから「届いた!」と思える瞬間は心からうれしいし、僕にとっての振付は、受け取ってもらえて初めて完成するもの。メッセージをやりとりしているような感覚です。世に放たれるときは毎回めちゃくちゃ緊張しますが、「皆さんを信じてます!」という気持ちで送り出しています。
何に悩んでいるかをちゃんと伝えることで、同じ視座で物事を考えてくれるようになる
壁やピンチに直面した場面で、大事にしているのは人に話して頼ること。ひとりで無理に強くなろうとしていた時期もありましたが、長くは続かないと痛感。後輩たちに対しても自分がどう思っているか、何に悩んでいるかをちゃんと伝えることで、アイディアをもらえるし、同じ視座で物事を考えてくれるようになると感じています。
一方で、相手が成長しようと努力していることはしっかり見て、言葉にして伝えたい。それは僕自身が褒められて伸びるタイプだから(笑)。年下の子が増えてくるとなかなか褒めてもらえなくなるのですが、タイプロが終わった後、(佐藤)勝利がくれた長文のメッセージは、本当に沁みました。「これだけの短期間で、これだけの楽曲数を、このクオリティで仕上げていただいたことは当たり前じゃない」と感謝を伝えてくれて、涙が出るくらいうれしかった。そんなふうに「どこかで見てくれてる人がいる」と信じられると、最後のひと手間まで丁寧に向き合えます。

僕の主軸になっているのは、「神は細部に宿る」という言葉。仕事の大小にかかわらず、地道に種をまいていれば、いつか何かしら花を咲かせてくれると思っています。… と言うとすごく楽天的に聞こえるかもしれませんが、実はネガティブ(笑)。不安で後ろ向きになる日もあります。だからこそ、もし今挫けそうな方がいたら、「僕もまだ道半ばですが、どうでしょう、一緒にがんばってみませんか?」という気持ちでお伝えしたいなと。
行きき詰まったときは、趣味のカメラや美術館巡りがいいリフレッシュになっています。ふと思い立ってかつての通学路を歩いて変化に目を向けてみることもありますね。仕事から離れて自由なものに触れて戻ってくると、これでいいんだよなとフラットになれる。自己満足でも、いつか写真展を開けたらいいなとひそかに考えています。
そしてもうひとつの夢は、ディズニーの世界のような多幸感あふれる場をつくること。その願いの原点は、ディズニーのあるエリアの制作展を見たときの感動です。ヘルメットをかぶった裏方スタッフの方々が、すごく楽しそうに隅々までこだわるモノづくりをしていた。僕らがつくるステージも、根源はきっと同じ。お客さんや出演者はもちろん、振付や美術、技術… 裏で支える人が「やってよかったね」と笑顔になれる空間って最高だなと。そんな場所を、関わるみんなで目指していきたいと思っています。
唯一無二の表現をチームで生み、エンタメを支える『Team”S”pecial』

NOSUKEさんが所属する『Team“S”pecial』は、日本・韓国・台湾をはじめとしたアジア圏で、振付、ライブ演出、イベント監修などを手がけるクリエイター集団。プロフェッショナルダンサーを中心に構成され、個性を最大限に引き出す演出力と、チームで紡ぐ唯一無二の振付は、アーティストやファンからの信頼も厚い。最新情報は公式HP(https://team-special.com)をチェック!
2025年Oggi7月号「The Turning Point〜私が『決断』したとき~」より
撮影/石田祥平 ヘア&メイク/スガタクマ 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部
NOSUKE(のすけ)
『Team“S”pecial』所属。高校時代からダンスを始め、大会出場などストリートでの活動を経て、プロダンサーに。ライブツアーへの出演や国際的セレモニーへの参加など、多彩なキャリアをもつ。演出振付アーティストとして、BTS、timelesz、Mrs.GREEN APPLE、AKB48など数多くのアーティストの作品を手がける。日本や韓国でアーティストを目指す練習生の育成にも尽力。2024年に行われ、Netflixでの配信も話題となった『timelesz project -AUDITION-』では、ダンストレーナーとして参加。オーディション課題曲の振付を担当し、厳しくも愛情深い指導で注目される。公式Instagram:@nosuke_r1219、@nosuke_r1219photo