受精卵の凍結相談。思わぬ失敗に医師も看護師も大慌て…【30代からの不妊治療】
妊活を始めて3年。現在34歳の私の体験から、妊娠を考えているカップルにとって少しでも役に立つような情報をレポート形式でお届けします。
前回は、受精結果の話をお届けしました。今回は、病院へ受精卵の凍結相談をしに行ったお話。
ずっと気になっていた40代レベルのAMHの値
ついに迎えた採卵施術で、私は9個の採卵に成功。私の場合、採卵完了までの期間は、D(デイ)3に自己注射を開始してから11日間でした。
採卵した9個の卵子が、ふりかけ方式の体外受精で見事全部受精。培養師からの電話で受精結果を受けたあとの週末は、体も心も久しぶりにすごく軽くなった気がしました。自分の回復力の高さにびっくり。
妊活をはじめたばかりのころ、基礎検査でAMHが低めと言われた私。最初に通っていたクリニックの先生には、卵巣年齢40代レベルというAMHの低さを理由にステップアップをせかされたりしましたが、転院した総合病院の医師には気にしなくていいと言われ、正直「どっちなの? 妊娠できないということは、やっぱりAMHが低いからでは?」と、わからないながらに疑問を持ったりしていました。
今回の採卵では、卵巣の刺激の投薬をはじめとした治療がバッチリ私にあっていたから、いい結果に繋がったのだと思います。しかし、もしうまく採卵ができなかったら… AMHが上がることはないし、ステップアップに時間をかけてしまったことを少し後悔していたかもしれません。
妻の仕事を応援する一方で、隠していた夫の本音
9個の卵子が全部受精したといっても、ここからまだ超えていかなければならないハードルがたくさんありました。そうとわかってはいても、浮かれずにはいられないくらい、2人ともフワフワした気持ちで週末を過ごしていました。
夫「9人も子どもがいたらラグビーチームが作れるなぁ」
私「…え?! まだ全部戻せるかどうかなんてわからないよ」
夫「そうだけどさ、うまくいけば9人も子どもが誕生するでしょ。そしたら毎日公園連れて行ってみんなでいろんなスポーツして遊べるなと思って」
そういえば、いざとなったら養子をとろうとまで言っていた夫のことを私は思い出しました。私はわが子を授かれるかどうかの0か1かでずっと悩んでいましたが、夫は子どもがいっぱい欲しかったんだ… という本音が、この時の会話からふと垣間見えました。
だったら、もっと早い段階から妊活をするべきだった。私は仕事が好きだったし、家庭と仕事の両立もうまくできていると胸を張っていた手前、夫はたぶん、子どもの数に関する本当の気持ちを、私の意をくんで、直接話しにくかったのかなと…。ふと明るい会話のなかで、申し訳なさを感じたのです。
結婚してからもうすぐ10年が過ぎようとしていても、なかなか相手を100%理解するって難しいですね。
凍結相談って、何を相談するんだろう??
採卵から3日目。この日は凍結相談ということで通院がありましたが、当日の朝、夫が急な仕事が入ってしまったと言ってきました。
夫「ごめん、打合せ終わったらすぐ病院へ向かって合流するよ」
私「今日は大丈夫。相談だけだし、私ひとりでいってくるよ。もう体調もすごくいいから」
夫「本当に大丈夫? 何かあれば電話してね。すぐ出られるようにしておくから。そもそも今日の凍結相談って、何を相談するんだっけ?」
私「何だろうね? 前に、(体外受精の採卵~移植までの)見積もりをもらった時に“胚凍結費用(1個約1万円)”とか書いてあったから、受精卵9個で9万円ですよっていう費用の部分かな」
夫「そんなの全力ですべて凍結するに決まっているよね。大事な受精卵だもん。あとは今後のスケジュールとかかな。移植の日程もまだわからないんだよね」
私「うん、1周期スキップするっていってたから、移植の日程とかは次の生理のあととかに聞いてみる感じなのかな…」
私も夫も採卵で燃え尽きて、大事な大事な凍結相談そのものの重大さをほぼ理解しないまま、私は通院してしまいました。
生命の神秘! 受精卵の写真に胸がときめく
この日も病院で長い待ち時間を経て、診察室へ。採卵を担当してくださったK先生と看護師のKさんがにこやかに迎え入れてくれました。
医師「クロサワさん、全部受精したんですね。すごい、ご主人の精子優秀! こちらが受精卵の写真です」
これが私の受精卵の写真です。もらった紙の右上に書いてあるDay3というのは、採卵から3日目の受精卵という意味だそう。
あぁ神々しい。生命の神秘。あの日、緊張と恐怖の中、採卵した卵が、精子と出会ってこんな風に成長したんだ。受精卵はここからさらに分裂を繰り返しながら、さまざまな細胞に分かれ、子宮に着床することで生き続け、臓器をつくり、体をつくり、赤ちゃんへと成長していくのです。
私が写真を両手に持っているだけで、わが子を抱いているかのようなあたたかい気持ちになりました。じっと写真を見つめ、胸をときめかせていると…。
医師「それで、ご主人はどちら?」
私「あ、仕事あるらしくって、私だけ来ました」
医師「えぇぇ~!! なんで今日来ないのよ!!」
看護師「来てないの? ご主人、今日、凍結相談だよ。今から来れない?」
私「…?! あ、ちょっと時間かかっちゃうかも…。なんかまずい感じですか?」
いつもにこやかで冷静なK先生が、ややパニック気味に早口で説明を続けました。
医師「どれを凍結するか、ご夫婦で写真見て決めるんですよ!! 今日来ないなんてありえない!」
私「あ、凍結は全部しようとは決めてきたんですが…」
医師「凍結はみんなするんです。問題はこのまま凍結するものと、培養して胚盤胞にするものをご夫婦で選んでもらって、というところを一緒に相談したかったの」
やばい! よくわからないけれど、やばい!
そしてK先生はとても残念そうに「クロサワさんのご主人は毎回付き添いしていたから、まさか今日来ないとは思わなかった。あぁ…」と、肩を落としました。
すると、看護師のKさんが「ご主人と連絡とれる? 写真を送って、電話して説明しましょう」と言ってくださいました。
速攻、診察室から夫へ画像を送付。すぐに電話…。出て…! こうして思わぬ形で、急きょ、リモート凍結相談をすることになったのです。そのときの詳しいお話はまた次回。
まさか体外受精においてクライマックスともいえる大事な凍結相談の場面で、私たち夫婦はとんだ大失敗をしてしまいました… とほほ。
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クロサワキコ
34歳・主婦ライター。妊活歴3年目。男性不妊の治療や人工授精に体外受精、ステップアップを重ねていくなかで感じた不妊治療のリアルな本音を発信しています。