手汗と足汗の原因ってなに?
手汗や足汗で困っている方はいますか? 例えば本が濡れるほど手汗が出るなど、日常生活に支障を来すほど手汗が出る人もいるようです。
今日は「手汗」について少し書いてみようと思います。
内科学的には「手汗」といわれると甲状腺機能亢進症という病気が頭に浮かびますが、これは甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる病気でいわゆる、「バセドウ病」という病気です。この場合は、まず、ちゃんと診断をつけて、治療することで上手くコントロールすることが可能な場合が多いです。
手汗の原因は自律神経が関係している
一方、こうした、原因となる病気がないにもかかわらず、「手汗」で困っている人は意外に多いんです。手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)(あるいは足なら足底多汗症)といって若い人に多く、大抵いつも手が汗で濡れている。だけど不思議なことに眠っている時には汗が出ていない。原因ははっきりとわかっていないのですが、いわゆる、「自律神経のバランスが崩れていることが原因」という説が有力です。
今までにも何度か書いてきていますが、自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあります。交感神経は「戦闘モード」のときに活躍する神経。副交感神経は「栄養と子孫繁栄モード」のときに活躍する神経。この両者は常にバランスを取りながら作用しているんです。
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手掌多汗症とまではいわなくとも、皆さんも、「手に汗を握る」ことはありませんか? どんなときに「手に汗を握り」ますか?
応援するスポーツ選手や家族の出場する試合を食い入るように観る時、試験や面接の緊張状態の時、などなど。一般的には、「戦闘モード」のときに普通でも手に汗をかきますよね。そう、手に汗が出るのは、(そもそも汗が出ること自体も)交感神経の優勢なモードなのです。
手掌多汗症の特徴に書きましたが、「若い人に多い」というのもまだまだ、年齢的に自律神経のバランスをとるのが上手にいかない、緊張しやすいタイプで交感神経がとかく反応しやすい、何らかの原因で一時的に自律神経のバランスが崩れている、などの原因があるのかもしれません。
また、「眠っている時には発汗していない」という特徴も、眠るという典型的な「栄養と子孫繁栄モード」の時にはこの症状は出ないのは交感神経の働きを抑える副交感神経のバランスが優位な状況では汗が出ないことを表しています。
手汗の治療法や和らげる方法は?
手掌多汗症の治療は、脇の下にある交感神経の中継点を焼いちゃうという手術もありますが、一般には交感神経と副交感神経のバランスが崩れることは良くありますので、症状の重症度に応じて対応するのが良いと思います。
もっといえば、手に汗が出るのは普通のことでもあるので、緊張状態を少し和らげる工夫などもいいかもしれません。寝る? なんか食べる? 深呼吸してみる? 息をこらえてみる? 眼を閉じる? 他に、副交感神経の優位になるモード思いついたら試してみてはどうでしょうか。
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国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ