女性のAGA(女性の男性型脱毛症)の原因って?
脱毛といえばいわゆる「禿」をイメージしますので、中年期以降の男性が主役ですね。Oggiの読者層にはあまり受けないテーマかも知れません。しかしながら、調べてみると女性も結構、「脱毛」には興味があるようです。
脱毛には2つあって、ひとつめは、美容目的で綺麗を目指す積極的脱毛。ふたつめは、悲しいかな自然に抜けていく「残念な脱毛」があります。
今日は少し「女性の脱毛」について書いてみましょう。とりわけ、ふたつめの、「残念な脱毛」についてお話ししましょう。
◆男性だけではない、AGAは女性もなります
「AGA」は女性でも聞き覚えのある言葉でしょうし、電車の広告でもAGA治療をうたう広告をよく見かけます。
AGA:Androgenetic Alopeciaの略で「男性型脱毛症」のことです。そうです、言い方を変えれば、「大多数のおじさんの禿頭」を医学的に表現するとAGAということになります。しかし、このAGA、意外にも女性にも無関係ではないのをご存じですか。
まず、「アンドロゲン」というと男性ホルモンの総称ですから、「Androgenetic」というと「男性型」となってしまうのですが、この男性ホルモンは女性でも分泌されているのです。テストステロンという男性ホルモンも女性でも分泌されていますし、逆に女性ホルモンも男性でも分泌されているのです。
男性らしさや女性らしさは、結局のところこうしたホルモンの量や働きの強さによって表現されてくるのですが、両方のホルモンのバランスが男性らしさや女性らしさにつながるのです。ですので、女性でも、何らかの原因で男性ホルモンが優位に働くような状況になると「男性型」の表現がでてくるということです。その一例が、「女性のAGA(女性の男性型脱毛症)」ということになります。
◆脱毛、薄毛を気になり始めたらAGAの可能性を考えてみて
薄毛、脱毛、禿頭などに関してはひと言で語り尽くせない、深い世界がありますが、女性で脱毛、薄毛などが気になるというひとは、一度AGAの可能性も考えてみてください。
さらには、男性ホルモンと女性ホルモン(これらを、性ホルモンといいます)のみならず、甲状腺ホルモンや性ホルモン以外のステロイドホルモンの分泌の異常によっても、薄毛や脱毛につながることがあります。やる気が出ない、元気ない、太ってきた、寒がり、便秘、肌荒れ、などなどと同時に薄毛や脱毛などもあれば、内科でホルモンバランス診てもらうのも、ひとつかもしれません。
「女性のAGA」を知らない人は多いかも知れませんが、甲状腺機能の低下が、時には薄毛につながることはもっと知られていないかもしれません。さらに言えば、「甲状腺機能低下している、あるいはその予備軍の女性がたくさんいる」こともあまり知られていませんよね。
ところで、新型コロナウイルスの感染者の後遺症として「脱毛」があげられていますが、そもそもなぜ、新型コロナウイルス感染のあとに脱毛が起こるのかの機序は個人的にはすごく興味があります。その理由がわかれば、意外な形で「夢の毛生え薬」や逆に「脱毛美容クリーム」などの開発につながるかも知れません。期待しましょう。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ