「がん」の発見が遅れる理由ってなに? 定期検診のすすめ
新型コロナウイルス感染拡大によって、間接的に健康に影響を及ぼすという話をしました。
▶︎【医師監修】がん発見の遅れも!? 新型コロナ感染での間接的健康被害は…
特に、4月、5月、6月あたりは、「病院控え」が目立っていたというデータが出てきているようです。「がん診療」の現場でも、「がん検診」の受診率が4月から6月は下がり、来年、あるいは再来年くらいにがん検診受診率の低下の影響が出てくる可能性もあります。
今日は私の専門分野である「がん」について、書こうと思います。
◆「がん」がみつかる大きさと細胞の成長速度
がん患者さんは「去年の検診ではなかったのに! どうして?」ということをよく言われます。本当にその通りです。なぜこんな事がおこるのでしょうか?
今の医学の最先端の医療機器を駆使して見つけることのできる「がん」の大きさは、おおよそ5mmくらいが限界です。しかも、体のどこにあるかの当てもなく探すとなると5mmのがんを探すのも大変なことです。
一方で「がん」の大きさが1cmを超えるくらいの大きさになってくると、最先端の医療機器を駆使すれば、随分と簡単に「がん」をみつけることができるのです。
問題は、この5mmまでの「がん」と、5mmを超えたあたり(1cmくらい)の「がん」とでは、がんの成長のスピードが全然違うということなのです。5mmくらいまでは何年もかけてゆっくりゆっくり大きくなってきた「がん」も、1cm前後くらの大きさにさしかかるくらいからその成長のスピードが一気に速くなるのです。
実は、あるところまではゆっくり育ち、ある時点で急速に成長が速くなるという特徴は、「がん」だけの特徴ではなく、どのような細胞でも、生き物でもそうなのです。生き物全てに共通した特徴のひとつなのです。
これでおわかりですか? 例えば、3年間毎年検診で「がん」はありませんと言われていたのに、4年目で「2cmのがんがあります」と言われるようなこともあるわけは、3年目まではまだ「見つけることができる大きさにまでなっていなかった」ということなのです。
1cm前後にさしかかった大きさの「がん」は成長のスピードが速くなるということを理解しておくことは随分と大切なことなのです。
この話を読むと、最初に述べた、新型コロナウイルス感染拡大の影響での「病院控え(1年間のがんの定期検診をお休みすること)」の重大さを理解できると思います。
ちょうど、このところ、厚生労働省がテレビの宣伝で「コロナ禍でも定期的ながん検診を受けましょう」と呼びかけているのは、来年あるいは再来年のがん患者さんの増加を危惧しての対策だと思います。
◆女性のがんを予防するためには?
では、Oggi読者のアラサー世代の女性が知っておくべき「がん」の知識を少し紹介しましょう。
1. 若い女性でも「人ごとではないがん」を知る… 乳がん、子宮頚がんなど
2. 乳がん、子宮頚がんは自己検診や定期検診で早期発見が可能
3. 乳がんは、月経後の乳房の張りの少ない時期に自己検診でしこりがないかチェック
4. 子宮頚がんの検査をしよう
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新型コロナウイルスの感染拡大はまだ続きそうですが、健康を維持するためには定期検診を含めて継続的に健康管理を意識することが大切だと思います。
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国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ